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「あまりにも過激すぎる」「信じられない」“攻めた脚本”に物議を醸した17年前の名ドラマ…「なかなか出会えない衝撃作」の正体

  • 2025.8.15

ドラマや映画のなかには、世の中の常識や価値観に疑問を投げかける作品があります。今回は、そんな“社会のタブーや偏見に挑んだ異作”を5本セレクトしました。本記事ではその第2弾として、ドラマ『ラスト・フレンズ』(フジテレビ系)をご紹介します。DVやLGBT、性依存、不倫、毒親など、当時の地上波ではほとんど描かれなかった重いテーマに挑み、偏見に苦しむ人々の“痛み”と“存在”に寄り添った物語とは――。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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ドラマ『ラスト・フレンズ』制作発表に出席する長澤まさみ(C)SANKEI
  • 作品名(放送局):ドラマ『ラスト・フレンズ』(フジテレビ系)
  • 放送期間:2008年4月10日 - 2008年6月19日
  • 出演: 長澤まさみ(藍田美知留 役)

恋人・宗佑(錦戸亮)からの暴力に耐えきれなくなった美知留(長澤まさみ)は、同級生の瑠可(上野樹里)を頼り、彼女が暮らすシェアハウスへ身を寄せます。そこに、瑠可にひそやかな想いを抱くヘアメイク志望のタケル(瑛太※現在:永山瑛太)も加わり、日々は少しずつ賑やかさを増していきました。笑顔を見せながらも、人には言えない悩みを胸にしまい込む三人。本音と建前の狭間でもがきながら、互いとの関わりの中で少しずつ前へ進んでいきます――。

「ただの青春ドラマじゃない」タブーに切り込んだ異例の意欲作

『ラスト・フレンズ』は、DVLGBT性依存不倫毒親社内いじめといった、当時の地上波ドラマでは異例ともいえるテーマに挑んだ青春ヒューマンドラマです。

脚本は『ラブジェネレーション』『神様、もう少しだけ』『大奥』などを手がけた浅野妙子さん。複雑な人間関係や心の葛藤をリアルに描き、放送当時は大きな話題を呼びました。

登場人物は、深い悩みを抱えながら懸命に生きる若者たちです。美容師アシスタントの藍田美知留(長澤まさみ)は、恋人・宗佑から受けるDVに苦しみながらも、ついに逃げ出す決意を固めます。モトクロス選手を目指す岸本瑠可(上野樹里)は、美知留に友情以上の想いを寄せ、「性同一性障害ではないか」と自らの心に葛藤を抱える日々。

過去のトラウマからセックス恐怖症を抱えるヘアメイク志望の水島タケル(瑛太)は、血のつながらない姉から受けた性的暴力の記憶に今も縛られています。自由奔放で本音を隠さない客室乗務員の滝川エリ(水川あさみ)は、セックス依存症という秘密を胸に秘めていました。

そして、知的で穏やかに見える一方で、裏では恋人を支配し暴力をふるうDV加害者の及川宗佑(錦戸亮)。それぞれが隠してきた秘密や心の傷が複雑に絡み合いながら、物語は進んでいきます。

“好青年”の殻を破って挑んだ「嫌われる男」

性同一性障害、セックス依存、セックス恐怖症――。さまざまな悩みや葛藤を抱えた登場人物たちのなかで、ひときわ強烈な印象を残したのが、DV加害者・及川宗佑を演じた錦戸亮さんでした。

知的で穏やかな外見とは裏腹に、恋人を執拗に支配し、次第にストーカーへと変貌。友人にまで暴力をふるい、最後は自ら命を絶つという衝撃的な役どころでした。まさに“嫌われ役”の極致ともいえる人物ですが、その狂気の奥にある孤独や脆さまでを繊細に表現した演技には、多くの称賛が集まりました。

当時、関ジャニ∞(現在:SUPER EIGHT)やNEWSのメンバーとして活躍していた錦戸亮さんにとって、DV男という役柄は、それまでの“好青年”のイメージを覆す大胆な挑戦でした。暴力シーンの撮影では、気持ちが沈んだとも語っています。

役作りにあたっては、DVに関する書籍などを読み込んだという錦戸さん。身体的な暴力だけでなく、言葉の暴力や束縛といった精神的な支配もDVに含まれることを知り、大きな衝撃を受けたそうです。

宗佑という人物を完全に理解することはできなかったものの、“誰の中にも、ほんの少しはあるかもしれない危うさ”に向き合いながら、複雑な感情を全身で演じきりました。

その努力が実を結び、錦戸亮さんは『ラスト・フレンズ』での演技によって第12回日刊スポーツ・ドラマグランプリ助演男優賞を受賞。ストーカー、DV、自殺といったショッキングな題材を真正面から演じきった姿は、アイドルという枠を超え、俳優としての覚悟と可能性を強く印象づけました。

選考では、『神の雫』で田辺誠一さんが演じた役をおよそ1000票差で上回り、錦戸亮さんが堂々のトップに輝きました。とくに注目されたのは女性ファンからの支持で、男性票の10倍以上にあたる票を獲得。10代、20代、30代のすべてで1位を記録し、世代を超えて共感と評価を集めました。

SNSでも、「錦戸亮が怖すぎてしばらく直視できなかった」といった声に代表されるように、宗佑の狂気をリアルに体現した演技に驚きが広がりました。一方で、「嫌な奴だけどかっこいい」「演技が凄かった」と称賛する声も。また「演じ分けが凄すぎる」といった意見からは、俳優としての実力が高く評価されたことがうかがえます。

ここまで詰め込む!? DV、性依存、いじめ…“昼ドラ超え”の衝撃作

『ラスト・フレンズ』が放送された2008年当時、地上波ドラマでこれほど複雑かつ重たいテーマを扱う作品は稀でした。

SNSでも、「DV、LGBT、性依存、不倫、毒親、社内いじめ全部入ってるのえぐい」「あまりにも過激すぎる」「信じられない」「なかなか出会えない衝撃作」といった驚きの声が上がっています。

また、「当時LGBT関連ドラマがほぼなかったから、存在を肯定されたようで嬉しかった」という言葉には、本作が果たした役割の大きさがにじみます。

リアルタイムで観ていた視聴者からは「昼ドラ顔負けのドラマ」と語られ、「どうして再放送が無いのだろう…」といった再放送を望む声も少なくありません。

こうした反響が示すように、『ラスト・フレンズ』は、当時タブー視されがちだった問題に真正面から挑んだ異色作。偏見に覆われた社会の中で、苦しみながらも必死に生きる人々の“痛み”と“存在”に寄り添った名作です。


※記事は執筆時点の情報です