「引越し費用13万円が2倍超」「業者の9割が…」夢のタワマン暮らし目前、男性を襲った"落とし穴"

「引越し費用13万円が30万円と言われ…」

年収1000万円超でお酒の買取会社を経営するAさん（28）がアパートから憧れのタワーマンション20階へ引っ越す際に直面した、思わぬ"業界の常識"とは。

10件の業者に問い合わせて9割がお見送りになった、タワーマンション引越しの知られざる実態を追った。

「タワマン引越し費用13万円が30万円と言われ…」

アパートから関東のタワーマンション20階への引っ越しを計画していたAさん。複数の業者に見積もりを依頼した際、当初は「だいたい13万円ぐらいの相場」と言われていた。しかし、引っ越し先がタワーマンションだと伝えた途端、状況は一変した。

「実はタワーマンションなんですって話をしたら、結局、タワーマンションは共用部分がすごく多いじゃないですか。それを傷つけたりすると、すごい金額になっちゃうから、めちゃくちゃ厳重にやらないといけないって言われました」

業者側の説明によると、タワーマンションの豪華な共用部分を傷つけるリスクが高いため、通常よりも慎重な作業が必要だという。その結果、見積もりは一気に30万円に跳ね上がった。約2.3倍の価格変更に、Aさんも「全く違いますよね」と驚きを隠せなかった。

大手業者に問い合わせても、「うちではタワーマンションの引っ越しは対応していません」と断られたり、「タワーマンションなら少し割増料金がかかります」と提示されることが続出。タワーマンションの引っ越しには、一般的な引っ越しとは異なる特別な「制限」が存在していることが明らかになった。

Aさんが実際に体験した業者選びの困難さは想像以上だった。10件の業者に問い合わせたうち、なんと9割が料金変更または対応不可と回答したのだ。

「10件ぐらい問い合わせしたんですが、そのうち9割が料金が変わるとか、対応できないって言われました」

タワーマンションの引っ越しを敬遠する業界の実態が浮き彫りになった。多くの業者が「リスクが高い」「特別な対応が必要」として、通常の引っ越しよりも高額な料金設定をしているのが現実だ。

最終的にAさんが見つけた1社は、料金を変更しない珍しい業者だった。「めちゃくちゃ雑ではあったんですけども、僕からしたら安く済んだので良かった」と振り返るAさん。しかし、このような業者を見つけること自体が「すごく特殊」な状況だったことからも、業界全体でのタワーマンション引っ越しの特殊性がうかがえる。

13万円から30万円への大幅な値上げ。その理由が作業の複雑さだけにあるのか、Aさんは業界の価格設定について率直な見解を示している。

「正直、タワマンを購入できるような人にとって、引っ越し代30万円というのは決して払えない額ではないと思うんです。だから、そういった背景を見越して、特別価格を設定している可能性はあると思いますね」

単純に階層の高さによる運搬時間の増加という物理的要因よりも、「タワマン住民＝富裕層」という先入観が、価格に影響を与えている可能性は否定できない。

実際、Aさんは「荷物が少なかったっていうのもあるかもしれませんが、なんかそんな気にはならなかった」と語っており、物理的な作業負荷が大幅に増加したわけではないことを示唆している。それでも価格が2倍以上に跳ね上がるという現実は、業界全体の価格設定の曖昧さを物語っている。

憧れのタワーマンション生活の陰に潜む、引越し業界の知られざる実態。13万円から30万円への価格変更は氷山の一角であり、業界全体でタワーマンション引越しが「特別扱い」されている現実が浮き彫りになった。

10件中9件の業者が料金変更や対応不可を告知する状況は、消費者にとって大きな負担となっている。タワーマンションへの引っ越しを検討している人は、事前に複数の業者への確認と、予算増加を覚悟しておく必要がありそうだ。

Aさんの体験は、タワーマンション引越しの特殊性と、消費者が知らない業界の実態を明らかにした貴重な証言と言えるだろう。