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保護者「ランドセル代6万円を弁償しろ」「出るとこ出る」 小学校教諭が語る、“理不尽クレーム”が入ったよくある理由

  • 2025.7.19
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画像:PhotoAC(※画像はイメージです)

子どもの嘘をきっかけに、保護者から理不尽な要求を突きつけられた経験はありませんか。
現役教師が語る、ある忘れられない出来事です。

1年生の担任をしていた頃、突然の保護者からの電話で「ランドセル代6万円を弁償しろ」と言われた日のこと。子どもの証言だけを信じて激怒する父親、そして翌日に判明した意外な真実とは。

今回は、子どもの純粋な嘘と保護者の一方的な怒りに翻弄された、ある教師の体験を紹介します。

子どもの嘘が招いた誤解

これは、小学校1年生の担任をしていた投稿者Aさん(仮名)が経験した、ある保護者対応のエピソードです。

ある日の放課後、職員室に1本の電話がかかってきました。
相手はクラスの児童・C子さんの保護者。電話に出るや否や、いきなりこう言われたといいます。

「うちの子のランドセルを弁償しろ!」

突然の言葉に驚きながらも、「どういうことですか?」と事情を尋ねると、返ってきたのは次のような内容でした。

「C子のランドセルにマーカーで落書きがされていた。誰がやったか聞いたら、隣の子(D君)にやられたと言っている。先生にはすぐ相談したのに無視されたそうだ。信頼していた先生に無視されて、どれだけ傷ついたか。教師失格だ!ランドセル代6万円、弁償しろ!」

あまりにも一方的な言い分に戸惑いながらも、Aさんは冷静にこう返しました。

「申し訳ありませんが、その件については知りませんでした。明日、子どもたちに詳しく聞いてみますので、少々お待ちいただけますか?」

しかし、その対応にも父親の怒りは収まらず、

「謝っても無駄だ、俺は出るとこ出るからな!」

と怒鳴られ、電話は切られてしまいました。

翌日、AさんはC子さんとD君に話を聞くことに。まずD君に尋ねると、

「え? そうなんだ。僕は知らなかったけど…」

と、全く心当たりがない様子。そしてC子さんに改めて話を聞くと、涙ぐみながらこう打ち明けてくれました。

「図工で使ったマーカー、きれいだったから…使ってみたくなって書いちゃった。パパに怒られると思って、D君がやったって言っちゃった」

C子さんの勇気ある告白に、Aさんはこう伝えました。

「正直に話してくれてありがとう。これからはパパにも正直に言えるかな?」

「うん、がんばる」

小さな声でそう答えるC子さんの姿に、Aさんは心の中で静かにエールを送ったといいます。

その後、再度C子さんの父親に連絡。すると、

「ああ、娘から聞いたよ。わかった、もういい」

という素っ気ない一言とともに、電話はあっさりと切られました。

子どもが自分を守るために嘘をついてしまうのは、決して珍しいことではありません。むしろ、それをどう受け止め、どう導くかが大人の役目なのかもしれません。

「私を“教師失格”と責め立て、結果がわかっても謝罪もなく電話を切られる…。少し寂しい気持ちになりました」

そう語るAさんの胸の内には、悔しさと同時に、C子さんが自分の力で“正直になる勇気”を持てたことへの静かな喜びも残ったでしょう。

子どもの嘘と向き合う大人の姿勢

子どもの嘘に振り回されるのは、教育現場ではよくある出来事かもしれません。しかし、大人同士のやり取りでは、事実確認を怠らず、冷静に対応することが大切です。

この体験からは、子どもの言葉だけを鵜呑みにせず、まず状況を整理する重要性が見えてきます。そして何より、間違いが判明した時の誠実な対応が、お互いの信頼関係を左右するということを改めて感じさせられます。

教師も保護者も、子どもを守りたい気持ちは同じはず。だからこそ、感情的になる前に一度立ち止まり、事実を確認する姿勢を忘れずにいたいものです。


《取材協力》
現役小学校教諭・Aさん(30代・関東在住)
2010年より教職に就き、現在は5年生を担任。得意科目は体育。教職のやりがいは「子どもの『わかった!できた!』の瞬間」