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医師「最善を尽くします」手術は成功したが…患者の家族に伝えた“その一言”が思わぬ方向に

  • 2025.7.19
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画像:photoAC(※画像はイメージです)

皆さん、こんにちは!現役看護師でありwebライターとしても活動しているsaoriです。

そんな風に言ったつもりはなくても、相手には違う意味で伝わってしまう——。誰しもそんな経験があるのではないでしょうか。人によっては、自分に都合のいいように解釈してしまうこともあります。

今回は、そんな「言い方」をめぐって大騒動となったエピソードを紹介します。

緊急手術での「最善を尽くします」発言

ある夜勤の日のことです。緊急手術が必要な患者さんが搬送されてきました。患者さんは高齢男性のAさん。家族仲が良く、搬送時には心配した4~5人のご家族が付き添いで来院されていました。

手術の際は、予定手術でも緊急手術でも、必ず主治医がご家族に説明を行います。その際、主治医はご家族に「今すぐ手術が必要な状態です。最善を尽くします」と説明しました。家族仲が良く、「まだまだ生きてほしい」という強い気持ちから、ご家族は手術を了承され、Aさんはそのまま手術室へと向かわれました。

手術は成功したが…「絶対助けるって言ったじゃないか」

手術自体は医師の計画通りに無事終了しましたが、術後の容体が安定せず、意識がない状態が続きました。術後の面会で、意識が戻らない状態を不満に思ったご家族から「先生と話がしたい」という希望があったため、主治医との面談をセッティングしました。

その面談で、ご家族から思いもよらぬ言葉を投げかけられました。「絶対助けるって言ったじゃないか!なんで目を覚まさないんだ」

どうやら手術説明での「最善を尽くします」という発言を、ご家族は「絶対助ける」という意味で受け取っていたようです。主治医が「最善を尽くしますとは説明しましたが…」と話したものの、ご家族からは「最善を尽くすって助けるってことだろう!?責任を取ってくれ!」と責める言葉が止まりませんでした。

同席していた看護師長が「ひとまず落ち着いて話し合いましょう」と間に入り、主治医の上司も加わったことで、なんとかご家族に理解していただけました。しかし、主治医に対する不信感は拭えないようでした。

結局、Aさんの状態は回復せず、意識がない状態が続いたため、慢性期病院へと転院されました。転院の日まで、ご家族は「主治医に裏切られた」と話され、主治医もすっかり落ち込んでしまいました。その時に働いていた部署のスタッフみんなで、主治医を励まし、元気づけてあげていました。

医者の「最善を尽くします」=「絶対治します」ではない

自分はAと言ったつもりでも、受け取った側はBと理解するかもしれません。

今回のお話では主治医の「最善を尽くします」という発言を受け手が「絶対に治します」という解釈で誤って捉えてしまったことが原因でしたが、受け手が正しく認識しているかどうか確認することはとても大事です。

特に患者側のご家族となると、大切な人の命が関わってくるため自分の良いように解釈してしまう場面があります。

そうした認識の違いが生じないよう、言葉を発した時には、相手にどのように伝わっているかを確認することが大切だと痛感した出来事でした。


ライター:saori
2011年に看護師免許を取得し、急性期病院と施設内訪問看護を経験。現在は子どもに関わる仕事に従事中。看護師×webライターとして活動中。「言葉」で人を救いたい!と心に響く発信を意識している。3人の子どもを育てながら働くパワフルママ。