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朝ドラの“印象的だったワンシーン”→実は“当時の呼ばれ方”まで含めて元ネタが実在! 視聴者の心を動かす細部のリアリティ

  • 2025.7.16
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『あんぱん』第15週(C)NHK

朝ドラ『あんぱん』第15週「いざ!東京」では、主人公・のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)をめぐる物語が大きく動き出した。高知新報での仕事を通じてふたりの関係性が少しずつ変わり、ついに東京編へと突入する。

「困ったときの柳井」漫画家としてスタートする布石?

嵩は高知新報の社会部入社試験であまりにも緊張して失敗してしまったものの、のぶの強い後押しもあり、見事社会部に配属。最初は挿絵の穴埋め係のような扱いだったが、月刊くじら編集部でも同じく「困ったときのメガネ君」状態になってしまう。

とくに印象的だったのは、入稿一時間前に原稿が飛んでしまい、編集長・東海林(津田健次郎)が嵩を呼び出すシーンだった。机に座らされ「50分で漫画を描け」と指示された嵩は、最初は戸惑いながらも、のぶの言葉をきっかけに猛烈な勢いで描き上げてみせる。

実はこの流れは、実際にやなせたかしさんが「困ったときのやなせさん」と呼ばれ、舞台美術やラジオドラマ脚本など、本業である漫画以外の仕事もこなしていたことが元ネタとしてある。

20代の青春をほぼ戦争の時代に過ごしたやなせは、終戦からしばらくして34歳で漫画家として独立しましたが、4コマ漫画などの短編を得意としていたやなせの作風は当時の流行から外れていました。仕事が激減する中、やなせはどんな仕事でも引き受け“困ったときのやなせさん”と呼ばれるようになります。 引用元:NHK「先人たちの底力 知恵泉(ちえいず)」2025年3月18日公開

のぶ、東京へ行きたくなる理由とは?

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『あんぱん』第15週(C)NHK

これまで何度も、主に嵩に対して「東京なんて」と言っていたのぶだが、この15週目では東京に行きたい気持ちを見せるようになっていた。嵩に対してあれだけ罵倒していたのぶが、なぜ急に? 気持ちが変わりすぎでは?と思わなくもないが、よく考えれば幼少期ののぶは「銀座へ行きたい」と夢見ていた少女だった。

地方で生まれ育ち、戦争を経て、いまは新聞社で働く立場。そのなかで、自分の世界を広げたい気持ちが再燃したのではないだろうか。合わせて、嵩の働きぶりを間近で見たこともあり、自分ももっと広い世界で力を試したいと、そう思うのは自然な流れなのかもしれない。

それぞれの恋模様と別れ

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『あんぱん』第15週(C)NHK

のぶたちを見守る周囲の人々の恋模様も切なく描かれた週だった。とくにメイコ(原菜乃華)が健太郎(高橋文哉)に「この人となら、不幸になっても良いと思える人はいるか?」と問いかけるシーンが後味を残す。そして、健太郎が高知から離れてしまったことを知ったメイコの表情に対して、SNSでも「悲しそうな顔つらい…」という声が出ている。

健太郎は、戦争での経験も踏まえ、命あるいまを幸せに生きるという考えを持っており、おそらくその思いを胸に高知を離れる決意をする。しばらく登場はない予感がするが、それもまた一つの区切りと言えるのではないだろうか。

一方で、のぶと嵩の関係性も微妙に変化。嵩は相変わらず「僕みたいな人がのぶちゃんを好きになってはいけない」と卑屈な姿勢でいるが、のぶと仕事をする彼の姿には、どこか特別な空気も漂う。

今週の小ネタとしてもう一つ。嵩や東海林たちが東京へ向かい、屋台のおでんを食べて全員倒れてしまうエピソードは、やなせたかしさん自身が体験した出来事だ。こうした細かい部分にもリアリティが詰まっているように思える。

また、SNSでも話題になったのが、アンパンマンの声優・戸田恵子さんが代議士・薪鉄子役で登場したこと。こうした遊び心ある演出も『あんぱん』ならではだ。

第15週「いざ!東京」は、物語が地方から東京へと舞台を移す前の大きな転機だった。働く意味、恋心、家族の形。そのすべてが少しずつ変わりながらも、のぶと嵩、そして周囲の人々は「誰かのために生きること」を選んでいく。次週以降、東京編ではどんな新たなドラマが待っているのだろうか。


NHK 連続テレビ小説『あんぱん』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHKプラスで見逃し配信中

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_