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湾岸タワマン30階を購入も「夏の高層階は地獄です」5年間かけて分かった“大誤算”【1級建築士は見た】

  • 2025.8.10
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※ChatGPTにて作成(イメージ)

「エアコンをつけっぱなしにしても、室内がなかなか冷えず、夜になっても暑さが残ったままです」

そう語るのは、東京都湾岸エリアにあるタワーマンションの30階に暮らすBさん(40代・共働き家庭)。2020年に入居して以来、5回目の夏を迎えた今年、「夏の高層階は地獄です」と苦笑いを浮かべながら話してくれた。

Bさんの住戸は、南向き・角部屋・ワイドサッシという理想的な条件が揃った人気プラン。眺望も良く、訪れた友人からは「ホテルのよう」と評される自慢の住まいだった。だが、この開放感あふれる空間が、近年の異常とも言える猛暑下では“仇”となってしまったという。

「サッシの内側で、熱気が渦巻くような感覚です」

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出典元:photoAC(画像はイメージです)

実際にBさん宅を訪れた際、その室内環境に驚かされた。日中は遮熱カーテンを閉め、エアコンを稼働させているにも関わらず、窓際では体感温度が30度近い。鉄筋コンクリートの躯体に蓄積された熱が、日が暮れてもじわじわと放出され、室温を下げにくくしていた。

「建物に蓄積された熱が逃げない感じです。日が落ちても、部屋が一向に涼しくならない」とBさんは続ける。

高層マンションが密集する地域では、都市全体が熱を蓄えやすく、夜間でも気温が下がりにくい傾向がある。アスファルトや建物が日中に吸収した熱を放出し続けるため、住宅そのものが“熱源”のようになってしまうこともあるのだ。これは都市部特有の「ヒートアイランド現象」と呼ばれる現象の一部で、タワーマンションが集中するエリアでは特に顕著だと感じている。

「高気密・高断熱=夏も快適」とは限らない

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出典元:photoAC(画像はイメージです)

高気密・高断熱の住宅性能は、一般に「冬に暖かく、夏に涼しい」と言われる。しかし実際には、適切な日射遮蔽や通風の工夫がなければ、夏には逆効果になることがある。

Bさん宅では、断熱材や複層ガラスなどの高性能建材が採用されているものの、一度侵入した熱が室内にこもり、逃げにくくなるという問題が生じていた。これは、気密性・断熱性が高いがゆえに、建物が「魔法瓶」のような構造となり、冷やすのにも時間がかかるというパターンである。

「南向きの大きな窓に惹かれて購入を決めました。でも、夏はほとんどカーテンを開けられず、外の景色を楽しむ余裕もありません」

高層階の“特等席”に住んでいながら、景観よりも暑さとの戦いに追われる―そんな日常がBさんの口から語られた。

設計時に見落とされがちな“夏の住み心地”

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出典元:photoAC(画像はイメージです)

住宅の設計段階で重視される「日照確保」は、たいてい冬を基準に考えられている。たとえば「冬至の日でも日が差し込むように」という考え方は、確かに冬場の快適性を高める。しかし、真夏のように太陽高度が高い時期の直射日光や、隣接建物からの反射光の影響までは、十分に検討されていないことが多い。

特に湾岸エリアでは、ガラス張りの外観を持つタワーマンションが林立しており、隣の建物の外壁や窓面が“巨大な反射板”となって熱を返してくる場合もある。そうした熱が南面の大開口に集中すれば、室内温度は一気に上昇してしまう。

設計図面や性能表示では見えない「暑さのルート」は、こうした環境要因や日常の使い方によって生まれる。設計段階では、「日照をどう取り入れるか」だけでなく、「どこまで遮るか」「どう逃がすか」までをセットで考える必要がある。

モデルルームではわからない“猛暑のリアル”

Bさんは最後に、こんな言葉を残してくれた。

「マンションを選ぶとき、“夏にどう暮らせるか”なんて気にもしていません。でも、夏の猛暑は毎年来る。この現実をもっと早く意識していればよかった」

タワーマンションの高層階は、セキュリティや遮音性、眺望の良さといった面で非常に優れた住環境を提供してくれる。一方で、猛暑という“新しい常識”の前では、それらのメリットが思わぬ負担となる場面もある。

設計図に書かれているのは「空間のかたち」であって、「暮らしの質」そのものではない。とくに夏の体感温度や、夜間の寝苦しさといった“身体に響く違和感”は、数字にも図面にも現れにくい。住宅を購入・検討する際には、モデルルームや間取り図の見た目にとどまらず、「気象との付き合い方」にも意識を向けることが大切だ。


yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。



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