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20年前、日本中の心が踊った“人生の応援歌” 33歳の男性歌手のイメージをガラリと変えた“自己肯定の名曲”

  • 2025.6.15

「20年前、どんな音楽があなたの心を踊らせていたか覚えてる?」

2005年といえば、音楽シーンでは修二と彰『青春アミーゴ』、ORANGE RANGE『*〜アスタリスク〜』などがチャートを席巻。映画では『ハウルの動く城』(公開は2004年)、『電車男』、『NANA』などが興行収入上位に。ケータイはガラケー全盛で音楽の楽しみ方はCDとテレビ番組が主流だった。

そんな中、シンガーソングライター・平井堅(当時33歳)が、これまでのイメージを大きく覆す一曲でシーンを明るく染め上げた。

2005年10月26日発売の『POP STAR』(作詞:平井堅、作曲:平井堅)

圧倒的な歌唱力はすでに既知であったが、この曲のユーモアあふれるMVで、“かっこいい”と“おもしろい”の境界線を軽やかに飛び越えたこの楽曲。2025年6月現在、平井堅のYouTubeチャンネルで総再生回数3450万回を数えるこの曲の衝撃と魅力を振り返ろう。

「シリアス」な歌手が見せた、笑顔と余裕の変身劇

『POP STAR』は『楽園』『瞳をとじて』『why』など、バラードの印象が強かった平井堅が放ったまさに“新境地”のポップチューンといえる。

“聴かせる男”と思われていた平井が、この曲ではポップなメロディと明るいサウンドにのせて、昔懐かしい音楽番組風のセットで自ら7役ものキャラクターを演じ、歌い踊るMVで話題をさらった。

この斬新なアプローチは平井堅のイメージをガラリと変え、平井の音楽の楽しみ方の新たな可能性をファンに示してくれた。

なぜ『POP STAR』は多くの人を虜にしたのか?

伊東美咲主演の月9ドラマ『危険なアネキ』(フジテレビ系)の主題歌にもなるなど、テレビでも頻繁に放送され年代・性別を問わず幅広い層に親しまれる存在となった。

加えて、楽曲自体の完成度も非常に高く、軽快で明るいフレーズの中に「君だけのヒーロー」や「君をもっと夢中にさせてあげるからね」と繰り返されており、大衆的なヒーローというより“眼の前にいる大切な人のために輝きたい”という前向きで優しいメッセージが伝わってくるようである。

音楽シーンに「エンタメ性」と「自己肯定感」を持ち込んだ意義

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(C)SANKEI 

『POP STAR』は、平井堅にとっても日本の音楽シーンにとっても、一種の転機となる楽曲だった。

2000年代前半は“失恋”、“切なさ”“リアルな感情”を歌うバラードソングが代名詞だった中で、ユーモアとポジティブさを全面に出したこの曲は異彩を放ち、音楽の幅の広さを感じさせた。

また「自分らしく輝いても大丈夫」「誰かのヒーローになればいい」というメッセージは、現在のSNS時代に通じる“自己肯定感”にもつながる部分かもしれない。

まさに日本中が衝撃を受けた平井堅による“七変化の応援歌”であり時代を照らした“自己肯定の名曲”だったのだ。

20年経った今も、「自分でいること」の背中を押してくれる

『POP STAR』は、ただの“明るい曲”では終わらない。

その姿勢は、20年経った現在の若者世代にも新たな意味で響いてくることだろう。また、あの日MVを見て元気をもらった人たちも、今ではいろいろな立場や悩みを抱えているかもしれない。でもきっとこの曲を聞けば、また「『POP STAR』みたいに日常の中では誰もが誰かの“スター”になれる可能性を持っている」と思えてくることだろう。

『POP STAR』——。それは、“自分らしく生きる”ことを肯定してくれる、人生の応援歌。


※この記事は執筆時点の情報です。