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31年前、日本中が涙した“春を呼ぶ旋律” 卒業式や入学式での定番ソングになった“国民的名曲”

  • 2025.6.20

「31年前、冬の記憶にそっと希望を灯したメロディを覚えてる?」

1994年にリリースされた松任谷由実の『春よ、来い』は、時代や世代を超えて歌い継がれる、日本の春の定番曲だ。同名のNHK連続テレビ小説の主題歌として制作されたこの曲は、ドラマと共に社会現象を巻き起こし、多くの人々の記憶に深く刻まれた。バブル崩壊(1991年)から3年後で閉塞感が日本中を覆っていた頃、人々の心にそっと寄り添い、春の訪れを待ち望む静かな希望を託したこの曲は、ユーミンの音楽の中でもひときわ強い存在感を放っている。

優しく繰り返されるサビのフレーズは、儚くも力強い。厳しい冬の寒さがまだ色濃く残る日々に、わずかな光を探し続けるような気持ちを、誰もがこの曲に重ねた。透明感のあるピアノの音色と、日本の四季の移ろいを繊細に表現したかのような旋律。そのすべてが、言葉にならない希望や郷愁の思いを代弁してくれているようだった。聴くたびに、心の奥底に温かい光が灯るような、そんな特別な力を持つ楽曲だ。この“春を呼ぶ旋律”には多くの人々が涙した。

ユーミンだからこそ描けた“個人の記憶と季節の交差”

『春よ、来い』は単なる“季節ソング”にとどまらない。それは、聴く人それぞれが思い出す“誰か”や“どこか”に繋がる、記憶の扉を開くような楽曲だ。歌詞に出てくるのは、具体的な固有名詞ではない、名前もない誰かとの思い出や、漠然とした情景。けれど、その不確かさや抽象性が普遍性を生んでいる。リスナーは、自分の経験や感情を自由に重ね合わせることができるのだ。

ユーミンは昔から、聴き手の心象風景に語りかけるような音楽を紡いできたが、『春よ、来い』ではその力がとりわけ強く感じられる。まるで、心の奥深くに埋もれた大切な記憶を、そっと撫でていくような優しさがある。過去の喜びや悲しみを肯定し、未来へと導く温かな力がこの曲に宿っている。

卒業式や入学式での定番ソングになった“国民的名曲”

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(C)SANKEI

発表から30年以上が経った今も、『春よ、来い』は卒業式や入学式、CM、ドラマなどで多く使われ、世代を超えて愛され続けている。その理由は、この曲が単なる流行のメロディではなく、“祈り”や“願い”といった人間の普遍的な感情を音楽に落とし込んでいるからだろう。

この曲は、無理に明るく背中を押すわけでもなく、感情を露骨にあらわにするわけでもない。ただ静かに、でも確かな眼差しで未来を見つめる──その控えめながらも揺るぎない姿勢が、今もなお多くの人の心に深く響き続けている。春という季節が持つ「別れと出会い、そして新たな始まり」という多面的な感情を、これほどまでに優しく、そして力強く表現した楽曲は他に類を見ない。だからこそ、人生の節目を迎えるたびに、人々はこの曲に救いや希望を見出すのだ。

“ユーミンの音楽”が持つ、時間を超える魔法

『春よ、来い』は、松任谷由実の持つ“時代と共鳴する力”を改めて実感させてくれる名曲だ。目まぐるしく移り変わる流行や価値観のなかでも、この曲は変わることなくそこに存在し、あのイントロを耳にしただけで胸が締めつけられる──そんな曲は、日本の音楽史を見渡してもそう多くはないだろう。

春の足音を待ちわびながら初めて聴いたあの日の感動は、いつまでも色あせることなく私たちの記憶に深く根付いている。時間を超え、世代を超えて受け継がれる『春よ、来い』は、これからもずっと、日本人の心に寄り添い、希望の象徴として私たちの春の入り口で待っていてくれるだろう。


※この記事は執筆時点の情報です。