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13年前から続くシリーズに“新しい風”を吹き込む「引力すごすぎる」“別の時間”を核として作り上げる若手俳優

  • 2025.6.2

フジテレビ系の月9ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』が静かに、しかし確かな熱をもって放送を続けている。小泉今日子と中井貴一という名コンビの再共演に心を躍らせるファンも多いだろうが、ここにきて物語をさりげなく揺らしはじめた“新しい風”がある。それが、西垣匠演じる謎めいた青年・木村優斗だ。

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(C)SANKEI

抑制を美徳とする演技のリアリティ

優斗は、言葉少なで、どこか影を感じさせる青年。早朝の鎌倉の海辺で、白本彩奈演じるえりなと出会う。えりなは海ゴミアートのクリエイターで、アーティスティックで大人びた一面を持つ女性。対して優斗は、静けさのなかに揺れる感情を密やかに抱えながら、彼女を遠くから見つめる。最初は積極的に声をかけるでもなく、ただ距離を置いて見守るような佇まいだった。

視線の交差から始まるふたりの物語は、大人たちが織りなす賑やかでコミカルな会話劇の裏で、別の時間が流れているかのようだ。この“静かなドラマ”の核を担うのが、西垣匠という俳優の演技力である。

西垣匠という俳優の魅力は、大げさな芝居や感情の爆発に頼らず「抑える」ことで「伝える」演技にある。喜びも悲しみも、決して声高に叫ぶことなく、目の動き、まばたき、呼吸のリズムといったごくわずかな身体の反応で見せる。

だからこそ、彼の演技には「嘘」がない。視聴者は「この人はいま、本当にそう感じている」と信じられる。言葉では表せない複雑な感情を、セリフの“外”で演じることができる稀有な存在だ。

たとえば連ドラ『みなと商事コインランドリー』では、草川拓弥演じる湊晃に対し、ストレートに恋心をぶつける香月慎太郎役を演じきった。率直な台詞はもちろん、二人の関係性や愛情の進捗度をはかる“間”がものをいうドラマにおいて、感情の溜めや、一瞬の目線のズレが、登場人物の不安や希望を確かに表現していた。

『続・続・最後から二番目の恋』においてもその演技の真価は遺憾なく発揮されている。優斗という青年が何を考えているのか、なぜえりなに興味を持ち、つかず離れずの距離を保っているのか。その全貌はまだ語られていない。

しかし、視聴者は彼の些細な仕草や表情から、心に何かしらの痛みや孤独を抱えていることを察してしまう。それこそが、西垣匠の俳優としての強さである。

古都・鎌倉に差し込む新しい光

『続・続・最後から二番目の恋』は、岡田惠和の脚本によるオリジナルストーリーであり、2012年の第1作から続く、大人たちの恋と人生を描いた名作シリーズである。中井貴一演じる和平と小泉今日子演じる千明の、軽妙な会話の心地よさはもちろん、今作でもベテラン俳優たちによる味わい深い掛け合いが物語を牽引している。

そんな“大人の世界”のなかに、若いふたり――えりなと優斗――の静かなドラマが挿し込まれたのは、決して偶然ではないはずだ。

えりなは、若くして自分の道を決めたように見えて、どこかクールな諦めのようなものを纏っている。一方の優斗は、そのえりなとは正反対に、どこか戸惑いながら自分の“居場所”を探しているようにも見える。

このふたりの関係性は、もしかしたら千明と和平の若き日を思い起こさせるものかもしれないし、大人たちが忘れかけていた“未来に恋する感情”を思い出させる導線にもなっていくのかもしれない。

そしてこの導線の先頭に立つのが、西垣匠という存在なのだ。

“好青年”を超えてゆける役者へ

いまでこそ“好青年”というイメージが定着している西垣匠だが、筆者はそこに甘んじる俳優ではないと確信している。むしろ彼の演技の深みは、苦悩や裏切りといった「陰」を含んだ役柄でこそ輝くものなのではないか。

連ドラ『マルス -ゼロの革命-』や『顔に泥を塗る』での彼は、それまでの爽やかなイメージを良い意味で裏切るような陰りある演技を披露した。そこでは、ただ優しいだけではない、何かを抱えながら生きる若者のリアルがあった。これは、物語の中核を担う俳優への布石でもある。SNS上でも「ドラマを観るたびに雰囲気が違って魅力的」「世界観にぐっと引き込んで離さない演技力」「引力すごすぎる」と、俳優・西垣匠を賞賛する声が絶えない。

『続・続・最後から二番目の恋』での優斗という役も、まさにその流れにあるキャラクターだ。彼は何者なのか? なぜ海岸に現れるのか? その背景が明かされたとき、西垣はまた一つ、新たな顔を見せてくれるに違いない。

役に溶け込み、セリフよりも仕草で語り、どこか孤独を纏ったまなざしで物語に深みを加える西垣匠。彼の静かな存在感が、あの優しい鎌倉の風景に、静かに波紋を広げていくのが楽しみでならない。



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_