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11年前、松本潤と石原さとみの“絶妙な化学反応”で中毒性を生んだ“月9ドラマ” 今だに絶えない共感の声

  • 2025.5.27

2014年に月9枠で放送されたドラマ『失恋ショコラティエ』は、放送から10年近く経った現在も、根強い人気を誇る作品だ。視聴者の間では“失ショコ”あるいは“ショコ潤”という愛称で親しまれ、SNS上でも「一途な恋にキュンキュンする」と語られることも多い。主人公・爽太を演じたのは松本潤。一途すぎる片想いに身を焦がす男という、きわめて“こじらせ”たキャラクターを、これ以上ない説得力で演じてみせた。彼が放つ、まっすぐで、どこか不器用な優しさ。チョコレートのように甘く、ときにほろ苦く、そしてとびきり官能的な眼差しに、誰もが惹き込まれた。

「ショコラティエ」と「恋する男」を両立

パリ帰りの若きショコラティエ、小動爽太。本場の老舗で修行を積み、帰国後は自身の店「ショコラ・ヴィ」を立ち上げる。端正な顔立ちに白いコックコート、繊細な指先でチョコレートをつくるその姿は、まさに“二次元から飛び出してきた王子様”そのものだった。

それだけならただの「少女漫画的キャラ」で終わるところだが、松本潤が演じることで、爽太は“恋に焦がれるリアルな男”としての深みを帯びる。好きな人のためなら、自分を偽ることすら厭わない。恋に夢中になるあまり、誰かを傷つけてしまうかもしれない。それでも手放せない感情を、松本は全身で表現していた。

人懐っこい笑顔、拗ねたような口調、唐突な甘え。幼く見える瞬間もある一方で、時折見せる鋭い眼差し、策士としての一面、そして男としての色気。そのギャップに、多くの視聴者が翻弄された。

小悪魔サエコと、こじらせ男子爽太の絶妙な化学反応

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(C)SANKEI

石原さとみ演じるサエコは、誰もが認める“恋の魔性”。可愛らしく、甘え上手で、ときに計算高い。既婚者でありながら爽太を翻弄し、決して「NO」とは言わないが「YES」とも言わない。視聴者からは「どうしてそんな女に!」という声も聞こえそうだが、なぜか憎めない。

それは、サエコが発する言葉が、どれも妙に真理を突いているからだろう。「人に愛される努力をする人が好かれる」「信じたからじゃない、信じる相手を間違えた」。サエコの名言たちは、毒のようでいて、妙に沁みる。

爽太とサエコの関係は、言ってしまえば“負け戦”だ。しかし、その切なさ、やるせなさに、恋愛の本質が詰まっている。大人だからこそ、好きになっちゃいけない相手を好きになってしまう。冷静ではいられない。それでも、恋に落ちてしまう。そんな“こじらせた恋”の描写が、この作品の中毒性を生んでいる。

“痛みすら愛おしい”恋愛ドラマ

『失恋ショコラティエ』の魅力は、恋の楽しさや甘さだけではない。むしろ、報われない想い、すれ違い、自己嫌悪といった、恋愛の“痛み”こそが丁寧に描かれている点にある。

コミカルな妄想シーンと、リアルな現実のギャップ。甘く美しいチョコレートの演出と、切ない恋の物語。この振れ幅がたまらない。誰もが一度は経験した“片想い”という名の迷路に、視聴者自身が投影されていく。

そして、松本潤の存在感がやはり際立つ。もともと華があり、画面に映るだけで目が引き寄せられてしまう俳優だが、本作ではとりわけその表情の繊細さが光る。ふとした沈黙の間に宿る感情、追い詰められたときの焦り、すべてが爽太そのものだった。

彼の“計算ではなく、本能から出てくる演技”が、甘美で、残酷で、切ない恋の世界を現実のものにしてくれた。どこまでも一途にサエコを想い続ける様子には、SNS上でも「一途な恋にキュンキュンする」と共感の声が絶えない。

『失恋ショコラティエ』は、まるで“恋の記憶”そのものだ。観るたびに、「こんなふうに誰かを好きになったことがあった」「痛くてどうしようもなかった」と思い出させられる。チョコレートのように甘く、そしてほろ苦い恋の味。10年経っても、やっぱり忘れられない。


ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_