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40年前、時代を駆け抜けた“強くて可愛いヒロイン” 女の子の“憧れと共感”が詰まったアイドルの“登場”

  • 2025.5.4
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(C)SANKEI

1985年、“アイドル=お人形”という時代に、風穴を開ける存在が現れた。

「40年前のテレビに映っていた女の子、名前を覚えてる?」

中森明菜、早見優、松本伊代、小泉今日子ーー“花の82年組”が全盛だった1980年代前半、アイドルとは“可愛さ”と“完成されたキャラクター”が求められる存在だった。そんな中、どこか親しみやすく、飾らない笑顔で、“自分の言葉”で歌い、話す新しいタイプのアイドルが登場する。

浅香唯ーー1985年6月21日、「夏少女」でレコードデビュー。

その後、“スケバン刑事”という強烈な役柄を経て、彼女は一躍、時代のヒロインとなった。

素顔のまま、でも芯がある。“等身大”アイドルの始まり

浅香唯の存在が特別だったのは、アイドルでありながら、“近所にいそうな可愛い子”の雰囲気を持っていたこと。

華奢な体、素朴な笑顔、でも芯の通った強さと、控えめながら凛とした姿勢。1986年から主演したドラマ『スケバン刑事III 少女忍法帖伝奇』で演じた“風間唯”は、まさにそのキャラクターがぴったりはまった。

十手型ヨーヨーを武器に悪を倒す姿は、それまでの“守られる女の子”とはまったく違う。「自分で戦うヒロイン」は、当時の女子中高生たちに圧倒的な支持を受け、浅香唯は“女子のヒーロー”として絶大な人気を誇るようになる。

なぜ浅香唯は時代を象徴する存在になったのか?

ひとつには、“アイドルの等身大化”という大きな流れの中で、彼女の存在がぴったりとフィットしていたことがある。

松田聖子や中森明菜のような“完成されたスター”ではなく、ちょっとだけ抜けていて、でも頑張っている“身近な女の子”。そのリアリティが、思春期の女の子たちにとっての「共感」となり、男子にとっては「守ってあげたい」と思わせる絶妙な距離感になっていた。

さらに、歌手としても「C-Girl」「Believe Again」「セシル」などのヒット曲を連発。夏の風景や青春のときめきを感じさせる爽やかな楽曲が、80年代後半の空気感と見事にマッチしていた。

“強くて優しい”は、浅香唯が教えてくれた

浅香唯の活躍は、テレビドラマ、音楽、バラエティ、CMと多岐にわたった。どこに出ても「浅香唯らしさ」を失わなかったのは、彼女の根底にあった“自分で選び、自分で進む”という強さだった。

“かわいいだけじゃない”、“カッコつけないカッコよさ”

そんなアイドル像は、のちに続く“親しみ系ヒロイン”たちの原型となっていく。また、1990年代以降は活動の幅を舞台やエッセイに広げ、自分の言葉で思いを発信する“自立した女性タレント”としての道を歩んでいった。

40年経った今でも、“あの夏の笑顔”は色褪せない

今、浅香唯の曲を聴くと、そこには“懐かしい”以上の何かがある。それは、恋や友情にまっすぐだった頃の気持ち、少しだけ強がっていた自分、誰かに憧れていた記憶。彼女が纏っていた空気は、あの時代の“心の温度”そのものだ。

バブルもトレンディも知らない世代が、今あらためて浅香唯に触れることで、“本当に大切なもの”に気づくかもしれない。

飾らず、でも芯がある。浅香唯は、そんな“日本らしいヒロイン像”の原点なのかもしれない。


※この記事は執筆時点の情報です。