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39年前、青春の一曲が“夏の定番”になった時代 灼熱の記憶を彩った“印象的なイントロ”の名曲とは?

  • 2025.5.3
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(C)SANKEI

1986年、日本の音楽シーンに“夏が来る音”が生まれた。

「39年前の春、どんな曲がラジカセから流れていたか覚えてる?」

昭和から平成へと向かう時代、テレビでは『男女7人夏物語』がブームを起こし、カラオケボックスが街に広がり始めていた頃。バブルの気配が色濃くなり、“楽しさ”や“開放感”が求められていた音楽の中で、あるバンドが鮮やかに季節を塗り替える。

TUBE「シーズン・イン・ザ・サン」ーー1986年4月21日リリース。

この曲の登場により、“TUBE=夏”というイメージが確立し、以降のJ-POPにおける「季節ソング」の概念を根づかせた一曲となった。

イントロが鳴った瞬間、海と太陽が見えてくる

『シーズン・イン・ザ・サン』は、TUBEにとって3枚目のシングル。ギターのキラキラしたカッティングとシンセサイザーの爽やかなリフ、そして前田亘輝のまっすぐなハイトーンボイスが、まるで真夏の海辺に一気に連れて行ってくれるような感覚を生んだ。

歌詞には、恋、海、砂浜、そして“青春”そのものが詰め込まれている。この曲が持つメッセージには、どこか甘酸っぱくて刹那的な情景が広がり、聴く者の記憶と重なるような力があった。

この一曲をきっかけに、TUBEは“夏を歌うバンド”として全国区へと駆け上がる。

なぜ『シーズン・イン・ザ・サン』は夏の定番になったのか?

最大の理由は、その“圧倒的な明快さ”にある。暑い季節をさらに盛り上げる音と、すぐに口ずさめるメロディ、そして気取らずストレートな歌詞。夏の恋、友情、はじけるエネルギー、すべてがこの曲には詰まっていた。

また、当時の音楽番組やFMラジオでもヘビーローテーションされ、ビーチやプール、ドライブのBGMとして自然に定着。特別に“夏をテーマにした曲”というより、“夏そのものを象徴する曲”として認知されていった。

この成功がのちの「サマーソング文化」につながり、サザンオールスターズ、ケツメイシ、湘南乃風など、夏をテーマにした楽曲が次々と生まれる流れをつくったとも言える。

季節と音楽を結びつけた先駆け的存在

『シーズン・イン・ザ・サン』は、日本の音楽において“季節を象徴するポップソング”というジャンルを確立した楽曲のひとつ。TUBEはこの一曲のヒット以降、毎年夏にリリースとライブを重ね、“今年の夏はTUBEで始まる”という文化すら築き上げていく。

さらに、真っ黒に日焼けした前田亘輝のビジュアル、爽やかなサウンド、開放感のあるメッセージは、音楽にとどまらず、当時の若者文化全体に影響を与えた。

夏=楽しいもの、青春=一度きり。そんな価値観が共有された時代の象徴として、この曲は機能していた。

39年経っても、あのイントロで季節が変わる

今もなお、6月後半から8月にかけてのプレイリストには、必ずこの曲が入っているという人も多いだろう。

『シーズン・イン・ザ・サン』は、単なる懐メロではなく、“夏のはじまりを知らせる鐘の音”のような存在。海に行かなくても、恋をしていなくても、この曲が流れた瞬間に、心の中に“あの夏”が蘇ってくる。

それが、たとえ何十年前の思い出だったとしても。それが、TUBEがくれた“終わらない夏”の魔法だ。


※この記事は執筆時点の情報です。