そこで今回は、自身も離婚経験があり、離婚カウンセラーとして活躍する著者・新川てるえさんのロングセラーをマンガ化した『[マンガ]子連れ離婚を考えたときに読む本』著/新川てるえ 漫画/ふじいまさこ(日東書院本社)を紹介します。
作家、家庭問題カウンセラー、NPO法人M-STEP理事長。1997年シングルマザーのための情報サイト「母子家庭共和国」を開設。3度の結婚、離婚、再婚の経験を活かし、離婚カウンセラーとして活躍。2014年シングルマザーとステップファミリーを支援するNPO法人M-STEPを設立。『子連れ離婚を考えたときに読む本』(日本実業出版社)など著書多数。メディア出演多数。
まだ離婚についてうっすら考えているだけの人も、決意が固まりつつある人も、幸せになるために結婚をしたはず。だから新川先生は「離婚をした方が幸せになれる」と思えたときに最終的な決断をしてほしいと言います。
では、幸せになる離婚をするためには、どんなことをすれば良いのか? 使える制度や備えについて本書はマンガでわかりやすく解説しています。
■私さえ我慢すれは丸く収まる…それでいいの?
マンガの主人公は40代で専業主婦のかなこ。子どもが二人いますが、夫は家事や育児に非協力的で、違和感を覚える日々を過ごしています。
亭主関白な夫の態度に結婚を後悔し「離婚」の二文字が頭をよぎる主人公。夫婦間で家事育児や仕事に対する考えのすれ違いなど、同じように悩む人も少なくないのではないでしょうか。
かなこは「自分さえ我慢すれば良い」と「離婚したい」との間で気持ちが揺れ動きます。そんな主人公を支えるのが、地元の同級生で離婚歴がある友人たちと、離婚カウンセラーの新川先生です。
ひと口に「離婚」と言っても、それぞれのカップルごとに原因や事情はさまざま。ひとりで悩むのではなく、相談先を探すことから離婚の準備は始まります。状況によっては複数箇所に連絡をした方が良いこともあるそう。
・相談できる先はいろいろある!
本書では、相談先のチェック表や手続きを進めるためのフローチャートなどが用意されていて、自身の状況を冷静に判断しながら読み進めることができます。
【もし離婚の文字が頭をよぎったら?】
□無料で離婚の法律相談をしたい
→法テラス、家庭裁判所の家事相談、行政の無料法律相談
□多くの離婚情報を知りたい
→男女共同参画センター、インターネット(SNS)
□家庭内暴力(DV)の情報を知りたい
→配偶者暴力相談、支援センター
□ひとり親家庭支援について知りたい
→行政窓口、インターネット(SNS) など
出典:『[マンガ]子連れ離婚を考えたときに読む本』
こうして相談先がいくつもあることが分かると少し冷静になれそうですね。
■「もう離婚!」と感情的になった時には?
地元の友人たちと再会し、さらに離婚への思いを強める主人公。さらに、夫とケンカになった勢いで突っ走りそうになりますが、両親がもめている姿を見て傷つくのは、「子ども」です。
新川先生は、まだ離婚を迷っている人には「今は決めるタイミングではない」と伝えているそう。そして、何よりも子連れ離婚には「準備と順番」が大事だと繰り返します。
配偶者とのケンカやすれ違いで「離婚だ!」と感情的になってしまうのは、不安に思う気持ちが大きいから。まずは、子連れ離婚をするときに大事な取り決めについて知っておきましょう。
例えば、親権や養育費、そして子どもの面会に関すること。これらは夫婦だけの問題ではなく、子ども自身の権利に複雑にからみあってくることです。
さらにマンガに登場する主人公の友人たちにはそれぞれ、性格の不一致、配偶者の浮気、家庭内暴力(DV)などで離婚歴があります。結婚と違って、離婚をするためにたどる道筋はカップルごとに違うため、自分たちに合った方法を探すことから始まるのです。
【離婚の方法と流れ】
・夫婦で協議して合意がある。
→離婚届を出すだけの「協議離婚」が成立。
・夫婦で合意ができない。
→裁判所に「調停」を申し立てる。
・「調停」でも合意ができない。
→離婚したい側が「訴訟」を起こす。
出典:『[マンガ]子連れ離婚を考えたときに読む本』
・裁判で離婚が認められる5つの理由
訴訟によって、裁判で離婚を認められるのは、主に下記の5つの理由です。
1. 配偶者が不貞行為(浮気)をした場合
2. 配偶者に悪意を持って遺棄された場合
(暴力から逃れるためなどは除く)
3. 配偶者の生死が3年以上不明の場合
4. 配偶者が強度の精神病で、回復の見込みがない場合
5. その他、重大な理由
(家庭内暴力、ギャンブルや宗教へののめり込み、借金など)
出典:『[マンガ]子連れ離婚を考えたときに読む本』
まずは自分と配偶者に、どのタイプの離婚が当てはまるのかを知っておくだけでも大丈夫。本書にはもっと詳しい条件や、離婚を判断するための考え方について触れられています。
■協議離婚より裁判がおすすめ!? そのメリットとは?
さまざまな離婚パターンを学んだ主人公は、「準備さえしておけば紙切れ一枚で離婚できる」と安心します。しかし、その考えは友人たちから「甘すぎる」と一刀両断されてしまい…。
なぜなら、一方が「離婚したくない」と考えている限り、協議離婚はできないから。もし裁判になってしまったらと考えると、少し気が重くなってしまいますね。しかし新川先生は「協議離婚よりも調停離婚の方がおすすめ」と驚きの提案をします。それは、いくつかのメリットがあるからです。
【調停離婚のメリット】
・「調停調書」が作られる。
(養育費など金銭の不払いに法的手段が取れる)
・裁判所からアドバイスをもらえる。
・調停委員らが間に入って話し合える。
出典:『[マンガ]子連れ離婚を考えたときに読む本』
普段の生活で「弁護士」や「裁判」というと、縁遠い世界の話のように聞こえますし、依頼することや費用面に尻込みしてしまう人もいるかもしれません。
しかし弁護士に依頼する流れやおおまかな費用感を知っておけば、「よくわからないから怖い」という感情は薄れるのではないでしょうか。これこそが、本書で新川先生が伝える「準備の大切さ」です。
もちろん本書では協議離婚をする場合について「公正証書を必ず作る」など重要なポイントをカバーしています。
■親権や養育費の話し合いはいつするの?
主人公は、友人から「離婚できるけどしない」と「離婚できないからしない」は違うと励まされ、生活費を確保するためにも働くことに…。
夫の顔色を伺うのをやめ、仕事に一生懸命向き合っていくなかで、次第に「自分も捨てたもんじゃない」と前向きな気持ちを取り戻していきます。
・別居を切り出す前に知っておきたいこととは?
しかし夫の態度は変わりません。金銭面で不安が残り、別居を切り出すのをためらう主人公…そんなときに思い出してほしいのが、配偶者と「婚姻費用の分担」ができることです。
これは民法で定められた「同居・別居に関わらず、夫婦には助け合う義務」。だから、もしも話し合いで婚姻費用(生活費)の折り合いがつかないときは、それを求める調停もできます。
・別居を強引に進めすぎると…?
ただ離婚前の別居を強引に進めると、「いざ離婚」となったときに不利になってしまうことも。「結婚生活維持のための冷却期間」であることをきちんと夫婦間で話し合い、メールや録音などで記録を残しておく方がいいと新川先生。
ほかにも、専業主婦であっても財産分与はできること、持ち家のローンについて、慰謝料(和解金)が生じる場合についてなど「離婚」に関わるお金のことが、本書でひと通り身につきます。
マンガのストーリーでは、主人公が働き始めてからも夫の態度は変わらず、家事や育児には協力しないのに「俺と同じくらいかせいでみろ」と言います。この先、主人公はどんな未来を選ぶのでしょうか?
\ ご紹介した書籍 /
『[マンガ]子連れ離婚を考えたときに読む本』著/新川てるえ 漫画/ふじいまさこ(日東書院本社)1,540円(税込)
17刷のロングセラーが待望の漫画化! 親権、養育費、面会交流、子どもへの伝え方など盛りだくさんの内容をよりわかりやすく、情報をアップデートして、今どきのお悩みにも対応。3組に1組が離婚する時代、離婚家庭がより幸せになるための全ての情報がこの1冊にまとまっています。
(いずみかな)