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香川照之、監督1名不在の中作り上げた“新主演ドラマ”の制作秘話を語る「アイデアがどんどん湧いてくる」

  • 2025.4.6
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(撮影/松川李香)

 

4月6日(日)午後10時より放送・配信されるWOWOW「連続ドラマW 災」の監督を務めるのは、監督集団『5月』の関友太郎監督と平瀬謙太朗監督。5月は、これまで映画『宮松と山下』(2022)などを手掛け、新しい視点と独自の映像表現で話題を集めてきた監督ユニットだ。本作では、5月の独特なアプローチが存分に発揮されている。監督たちの演出方法や現場での取り組みは、香川照之にどのような影響を与えたのか。ここでは、香川が語った5月の監督たちとの関係、現場でのやり取り、演出へのこだわりを紐解いていく。

3人体制から2人体制へ――佐藤監督の不在と新たな挑戦

5月はもともと 3人体制(佐藤雅彦監督・関監督・平瀬監督)で作品作りをしてきた。しかし今回の『災』では佐藤監督が不在となり、2人体制での制作となった。

香川は、その変化をこう語る。

「佐藤監督がいないことで、まるでぽっかりと穴が開いたような感覚でしたね。ただ、そのぶん関さんと平瀬さんがしっかりと進めていたので、新しい形が生まれていたと思います」

また、5月の監督たちの役割を 「飛行機」に例えた香川は、

・佐藤監督=飛行機本体(全体を支える存在)
・関監督=パイロット(作品を操縦する)
・平瀬監督=後輩パイロット(後ろから共に支える)

と表現。3人体制ではより複雑な意見のぶつかり合いがあり、今回の2人体制ではより明確な方向性が生まれたという。

「面白いものを作りたい」――監督たちの熱意を感じる瞬間

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(撮影/松川李香)

映画やドラマでは通常、監督は一人であることが多い。しかし『災』では2人の監督が同時に現場に立ち、作品を作り上げていった。このスタイルについて、香川はこう語る。

「基本的に2人はいつも一緒にいて、同じシーンを見て、同時に意見を出す。意見が大きく食い違うことはほとんどなかったですね」

通常の作品では、監督の指示が絶対であり、撮影現場では俳優がそのビジョンに合わせる。しかし5月の場合は、監督同士が意見を交わしながら作り上げるため、より柔軟なアプローチが可能となる。このユニークな制作方法が、5月作品の魅力を生み出しているのだ。

前作『宮松と山下』の制作時、5月の監督たちは 「驚きと新しさのある作品を作りたい」 という想いを語っていた。今回の『災』においても、その精神は変わらない。香川は、監督たちの熱意について、こう語る。

「監督たちにとって、新しいものや驚きは脚本の段階でほぼ完成しているんです。撮影に入ると、それをどう形にするかに集中していました」

つまり 5月の監督たちは、すでに緻密な構成を考えたうえで撮影に臨んでいる。だからこそ、現場ではキャストやスタッフと共に細部を詰め、リアルな作品へと昇華していく ことができるのだ。香川自身も 「良い脚本ほど、アイデアがどんどん湧いてくる」 とし、監督たちの作る世界観に共鳴していたことが伺える。

香川照之が語る、5月の魅力とは?

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(撮影/松川李香)

5月の監督たちは、筋金入りの映画オタクでもある。撮影現場では「この映画のあのカットを試してみよう」「あえてそれを外してみよう」といった会話が常に飛び交っていたという。香川は「足を引きずる演技」のシーンについて 「とある映画のカットを思い出しながら撮影した」 と語り、映画的な視点が現場の空気を作っていたことを明かしている。

5月の作品に2度出演し、その独特な制作スタイルを体験した香川は、彼らの魅力についてこう語る。

「もう慣れてしまいましたが(笑)、やっぱり監督が複数いるっていうのは単純に面白いですよね」

関監督と平瀬監督の “2人の視点が融合することで生まれるユニークな表現” は、他の作品にはない5月ならではの魅力だ。今回は2人体制だったが、香川は 「3人揃ったらもっと面白いものができる」 とも話し、5月が今後さらなる挑戦を続けることへの期待を覗かせた。



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_