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【ついに完結】今期の“推しドラマ”としてもSNSで話題に!NHK夜ドラが視聴者に評価された“理由”とは?

  • 2025.3.14
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『バニラな毎日』第8週(C)NHK

夜ドラ『バニラな毎日』が最終週を迎える。主人公・白井葵(蓮佛美沙子)をはじめ、不完全で無様なところもある登場人物たちが、自分を否定せず自分らしく生きていく過程をやさしく描き出した作品だった。不器用さを抱える白井たちが少しずつ前進していく姿に、背中を押された視聴者も多いのでは。SNSで「推しドラマ」と話題になったのも納得の、心にそっと寄り添うドラマだ。

不完全を肯定する勇気

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『バニラな毎日』第8週(C)NHK

『バニラな毎日』が多くの視聴者の心を掴んだ一つ目の理由は、登場人物がそれぞれの「完璧ではない部分」に向き合い、それを受け入れて前に進む姿を丁寧に描いていることだろう。

主人公の白井(蓮佛)は、不運な事故で右手に麻痺を抱えてしまう。彼女が利き手ではなく左手でお菓子を作ると決めた背景には、完璧を求めすぎず、自分のできる最大限を追求する美しさが満ちていた。また、秋山静(木戸大聖)が曲作りのスランプを抱えつつステージに立ち、震える身体で歌い切る姿にも同様の強さが宿っていたように見えた。無様な姿を隠さずさらけ出し、必死に前を向く彼らの生き方は、視聴者の心を強く揺さぶる。

本作が訴えるもう一つの重要なテーマは「人に頼ることを恐れない」ことだ。

白井は、ともにお菓子教室をやってきた盟友とも言える存在・佐渡谷(永作博美)のウェディングパーティ開催に向け、かつてのお菓子教室の生徒たちと協力してクロカンブッシュを作り上げる。まだ万全ではない右手を抱えながら「パティシエ失格」と自虐的に笑う白井に、生徒に一人である結杏(和合由依)は「なんで助けを求めちゃいけないんですか?」と真っ直ぐに問いかけた。自分の弱さを認め、周囲に素直に助けを求める勇気が描かれることで、孤独や生きづらさを抱える現代人に温かなメッセージを送っている。

新しい家族観が私たちを解放する

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『バニラな毎日』第8週(C)NHK

さらに『バニラな毎日』は、伝統的な家族観や結婚観にとらわれない自由な愛の形まで提示してみせた。

佐渡谷はフランス人の恋人・ヴィクトー(マッシモ・ビオンディ)と結婚することを決めたが「一緒には暮らさない」という選択をする。彼女が語る「結婚は一緒に住むためじゃなく、相手の幸せを願うこと」という言葉は、家族や愛の形は自由であり、多様であることを自然に肯定している。これまでの常識や社会的価値観にとらわれず、自分らしい生き方を選択することの尊さが、視聴者の心を柔らかく刺激した。

ドラマタイトルにもなった「バニラ」は、単なるスイーツの象徴にとどまらない。白井がつくった「冷たさを感じにくい」特別なバニラアイスは、傷ついた心を癒やすような優しさや思いやりのメタファーにも思える。完璧ではない現実を受け止め、じっくりゆっくり自分自身を見つめ直す時間を示唆するものだったのではないか。心が疲れているとき、温かく癒やしてくれる「バニラアイス」のように、このドラマも視聴者の心を穏やかに包みこむ。

『バニラな毎日』は「推しドラマ」として熱く語られ、SNSでも大きな反響を呼んだ。その理由は、この物語が伝えるメッセージが、視聴者の心に長く響き続けるからに違いない。完璧じゃなくてもいい、無様でもいい、誰かに頼ってもいい。そんな温かく前向きなメッセージは、ドラマが終わった後も視聴者の心に残り続ける。「推しドラマ」として、この先もずっと私たちの背中をそっと押し続けてくれるだろう。

『バニラな毎日』は、自分らしさを取り戻したい人にぴったりな物語だ。見終えた後「このままの自分でもいいんだ」と、きっと少し自分にやさしくなれるだろう。

NHK 夜ドラ『バニラな毎日』毎週月曜~木曜よる10時45分放送
NHKプラスで見逃し配信中



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_