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“リアルすぎる”当時の状況を描いた朝ドラにSNSでも共感の声「苦しさが蘇る」「思い出した」

  • 2025.3.14
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『おむすび』第23週(C)NHK

第23週「離れとってもつながっとうけん」では、病院で管理栄養士として働く結(橋本環奈)の視点から、コロナ禍をリアルに描き出した。失われた日常、医療従事者への偏見など当時の状況を鮮明に再現している。これまでも「食」を通して人の心と心をつなげ、元気にしてきた結は、このつらい状況にどう向き合っていくのか。『おむすび』に込められたメッセージは、シンプルだからこそ強い。

リアルすぎる病院の現場

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『おむすび』第23週(C)NHK

主人公・結(橋本環奈)の感染対策は、徹底していた。家のなかでもマスクを外さず、ラップ越しに慎重におむすびを握る。最終的には、病院で働く自分が、娘の花(宮崎莉里沙)や、胃がんの手術を終えたばかりの父・聖人(北村有起哉)に万が一にも感染させないよう、大阪の自宅に一人で避難するほどだった。

これらの細やかな描写は、コロナ禍の最前線で働く人々の切実さや緊張感を鮮明に伝え、視聴者に深い感情移入を促す。医師や看護師だけではない、「命を支えるもう一つの現場」が丁寧に描かれたことで、あらためて医療従事者全員への感謝と敬意を強く感じさせる。

『おむすび』が描くのは、当たり前だった日常が突然失われたことで浮き彫りになる、人間の繊細な感情や葛藤でもあった。看護師として働く母親が、小さな子どもたちのために仕事を休職しなければならない状況が描かれる。「こんな大変なときにすみません」と周囲に謝る場面は、あまりにリアルで切ない。

孤独な一人暮らしを選ぶ結。その苦しい選択と寂しさに、多くの視聴者が当時感じた、自らの思いと経験と重ね合わせることだろう。SNS上でも「当時を思い出してつらい」「今こそ描くべき物語」と作品を後押しする言葉が連なる。

なかったことにしない。偏見と差別を描く意義

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『おむすび』第23週(C)NHK

本編では、結の娘・花が同級生から「お前の母ちゃん、病院で働いてるからコロナまみれだろ」と心ない言葉を向けられたとする、衝撃をともなうシーンもあった。

社会はまるで、世のなかが混乱に混乱を重ねていた過去の出来事を、まるごと忘れたかのように前に進もうとしている。しかし『おむすび』はあえて、当時の差別や偏見を生々しく描くことから逃げない。SNS上でも「あのときの苦しさが蘇る」「忘れかけていた記憶を思い出した」と共感の声が多数寄せられていた。あえて目を背けずに描くことで「過去を忘れてはいけない」という強いメッセージを私たちに伝えているようでもある。

ドラマのタイトルでもある『おむすび』は、この作品にとって、人と人を「結ぶ」象徴。どんなに離れていても、人間の絆や希望は決して途切れない、そんなシンプルだが深いメッセージを表現している。結が翔也(佐野勇斗)から差し入れてもらった、父の聖人手作りのチャーハンを涙ながらに食べるシーンは、観る者の心に優しく沁み込むはずだ。

『おむすび』は、ただつらかった日々を懐かしむだけのドラマではない。「あの苦難を忘れないこと」が、明日への希望に繋がるというメッセージが根底にある。辛く悲しい記憶を見つめ直し、そこから学び取ることで、私たちはきっと一歩前に踏み出せる。そんな勇気と前向きさを与えてくれる。『おむすび』が伝えたいのは、過去を胸に刻んでこそ、未来への希望が見えてくるという、強く優しいメッセージなのだ。

NHK 連続テレビ小説『おむすび』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHKプラスで見逃し配信中



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_