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SNS社会に疲れた人の“処方箋”になるか?中島健人主演の“異色”なドラマ『しょせん他人事ですから』

  • 2025.3.14
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(C)SANKEI

日々大量に流れてくるSNS上の情報やトラブルに心がすり減り、疲れてしまっている人も多いだろう。そんな現代人に向け、なんとも新しい視点を与えてくれるのがドラマ『しょせん他人事ですから 〜とある弁護士の本音の仕事〜』だった。中島健人主演、相棒となるパラリーガルを白石聖が演じている。彼が演じる一見“超無責任な弁護士”・保田理から得られるメッセージは、示唆に富みまくっていた。

他人事でいいんです。「ゆるい距離感」が現代を救う

本作の主人公であり弁護士の保田理(中島健人)は、依頼人の立場を(かなり独自の価値観・スタンスにおいて)守りながらも「しょせんは他人事」というスタンスを崩さない異色の弁護士だ。

どんなネットトラブルで依頼人が心を病ませていようが「しょせんは、他人事ですから!」と彼の態度は崩れない。一見すると冷たく突き放しているように見えるが、実際には依頼者と程よい距離を保ちながら、冷静かつ淡々と問題を処理している。そんな保田を演じる中島健人のチャーミングで飄々とした魅力も、このドラマの見どころとなっている。

現代人はSNSを通じ、日常的に数多くの「他人事」をまるで自分のことのように捉えてしまっている。その結果、いたずらに心を消耗させているのだ。そんな視聴者に向け、このドラマは「適度に他人と距離を取る」ことの大切さを、さまざまなエピソードを通して提案する

保田の姿勢は冷たいのではない。プロとして必要な「感情に流されない、ほどよい距離感」だ。彼のゆるさと誠実さの絶妙なバランスは、ネット疲れした私たちに一服の清涼剤のように響く。

軽い気持ちの誹謗中傷、しかしその代償は重い

このドラマのもう一つの魅力は、SNS社会が生んだ問題を丁寧に掘り下げていること。

第5話「デジタルタトゥー削除編」では、過去の失敗がネット上で永遠に残り続ける「デジタルタトゥー」の問題がリアルに描かれる。黒川(浅利陽介)という登場人物は、過去の事件の情報が消えることなくネット上で拡散され、いつまでも見知らぬ誰かからの攻撃に苦しみ続ける。

また、第6話の「中学生配信荒らし編」では、悪意や恨みなどではなく「軽いノリ」で他者を傷つけてしまう、ネット特有の現実を突きつける。主人公・保田自身も最終話で誹謗中傷のターゲットとなってしまい「軽い気持ちでも、人を傷つけたらその代償を払う」と淡々と語っている。

このドラマが問いかけているのは「SNS上での距離感の難しさ」だ。誰かを傷つけるのは、悪意や恨みの感情とは限らない。むしろストレス発散や軽い気持ちが原因であることも多く、誰もが加害者にも被害者にもなり得るのだ。

『しょせん他人事ですから〜とある弁護士の本音の仕事〜』は、SNSという現代の複雑な人間関係をどう生きるかについて、明確な視点を提示している。それは、冷たく無責任に振る舞うのではなく「しょせん他人事」というスタンスを通して、適度な距離感と心の余裕を保つことの大切さだ。

SNS時代を生きる私たちだからこそ、このドラマが伝える「適度な他人事感覚」が心地よく響くのかもしれない。SNSに疲れたときこそ、ぜひこのドラマに触れてほしい。



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_