夜ドラ『バニラな毎日』は、店を潰してしまったパティシエ・白井(蓮佛美沙子)と、風変わりで破天荒な料理研究家・佐渡谷(永作博美)が始めたお菓子教室を舞台に展開していくストーリー。第2週では、初心者であるにも関わらず「オペラを作りたい」と主張するバンドのボーカル・秋山静(木戸大聖)が登場する。
伴ちゃん再び?金髪姿にリピ沼続出
『バニラな毎日』に登場した金髪姿の木戸大聖を見て、『ゆりあ先生の赤い糸』(2023/テレ朝系列)で彼が演じた伴優弥を彷彿とさせた視聴者も多いはず。
振り返れば、Netflix『First Love 初恋』で佐藤健の学生時代を演じたことから、格段に認知度が高まった木戸。伴ちゃん旋風を巻き起こして更なるファンを増やし、またもや別次元の魅力を展開させている。
『バニラな毎日』で彼が演じるのは、バンドのボーカル・秋山静。過去にヒット曲を出すも、最近はアルバム発表もしておらず露出が減っている、と本人が口にしている。恋愛体質の彼は、恋と失恋を交互に繰り返し、その高鳴りや苦悩を曲に反映させてきた。
失恋は甚大なストレスを伴うもので、解消のために甘いものを大量に摂取するのを止められず「自分で丁寧に作ったものなら、大事に食べるのでは」と過食を緩やかにストップさせる助言に従い、白井たちのお菓子教室にやってきたのだ。
いわゆるベビーフェイスで、可愛らしい笑顔と、時折り覗かせるアンニュイな視線や表情とのギャップから、多くのファンを沼落ちさせてきた木戸。
『ゆりあ先生の赤い糸』では、主演・菅野美穂との濃いシーンも多数あり、金髪というビジュアルの強さも相まってSNSも盛り上がりを見せていた。当時と同じ熱風が、『バニラな毎日』でも吹き荒れる気がしてならない。
『バニラな毎日』原作との相違点は?
賀十つばさによる原作小説『バニラな毎日』『バニラなバカンス』を映像化した本作。少しずつだが、原作とドラマの間で相違点がみられる。
白井のパティスリーが閉店した理由として、原作では「駅前に人気店ができたから」と明言されている。くわえて、白井が「居抜きでお店を借りてくれる人を探している」のは、ドラマでは「お店をなくしたくない、情に駆られているから」と受け取れる表現にしているが、原作では「現状復帰のための工事費がかかるから、それを避けるため」とされている。
第一週でタルトタタンをつくった順子(土居志央梨)が、過度に怒って暴言を口にし、帰ってしまったシーンも原作にはない。原作では、順子のエピソードのあとに、結杏という中学生とイートン・メス(メレンゲ、生クリーム、フルーツを使ったイギリスの伝統的なデザート)をつくるエピソードがあるが、ドラマでは先に静のエピソードが描かれている。
ちなみに、静はロックバンドのボーカル設定だが、原作ではビジュアル系バンドのボーカルだ。このように少しずつ原作との違いはあるものの、それぞれの“生徒”の思いを汲んだお菓子を、一つひとつ丁寧に製作する過程は圧巻だ。深夜に見るのは危険だが、白井を含めた登場人物それぞれが心を立て直していく様を、静かに見守りたいドラマである。
NHK 夜ドラ『バニラな毎日』毎週月曜~木曜よる10時45分放送
NHKプラスで見逃し配信中
※記事は執筆時点の情報です
ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_