1. トップ
  2. 「救世主に見える」「久しぶり」カセットテープに残された“彼女の唯一の声”がSNSで話題に…『おむすび』

「救世主に見える」「久しぶり」カセットテープに残された“彼女の唯一の声”がSNSで話題に…『おむすび』

  • 2025.1.31

連続テレビ小説『おむすび』第17週「Restart」では、駅前に新しいショッピングモールができたことにより、客足の余波を受ける商店街の面々について描かれる。それぞれの得意分野で、目玉となるような商品を作り、客を呼び込もうと画策するが……。その過程で登場するカセットテープやSNS、オンラインショップといったモチーフに、90年代の記憶が呼び覚まされる。

ショッピングモールの台頭、予感されるシャッター商店街

『おむすび』第17週(C)NHK

百貨店やスーパー、商店街とは形態の異なる、いわゆる大型ショッピングモールが建設され始めたのは、1980〜90年代のこと。アメリカのショッピングモールの影響を受けたモール型商業施設は、目的や老若男女問わず利用できる店が一箇所に集まっている利便性から、みるみる展開していった。

ショッピングモールや大型商業施設の台頭により、客足の影響をモロに受けたのが商店街である。より安く便利な施設が近くにあれば、そちらに人の流れが偏るのも無理はない。いわゆるシャッター商店街が増え始めたのも90年代後半以降で、2000年に施行された「大規模小売店舗立地法」による飛び火もあり、商店街にとって苦しい状況が続いた。

『おむすび』で描かれているのも、当時、商店街を切り盛りしていた店主たちの叫びである。目玉となるような商品を作り、それが話題になれば元の商店街に戻るはず、と願いを込める彼らだが、結果は芳しくない。

実際には、天神橋筋商店街や上野アメ横商店街、戸越銀座商店街など、その土地独自の色を押し出して観光地化している商店街もある。しかし、なかなかすべての商店街がその波に乗るのは難しい。わかりやすく時代の荒波を受ける商店街の実情を『おむすび』は描き出している。

カセットテープ、オンラインショップ、SNSも

『おむすび』第17週(C)NHK

ショッピングモールの台頭やシャッター商店街など、90年代を思い出させる要素に溢れた『おむすび』。作中で登場したカセットテープと、それに吹き込まれた“とある人の声”に、SNS上で言及が続いている。

カセットテープやビデオテープの存在を知らない、若い世代も増えてきていることだろう。実際に使ったことはおろか、目にしたこともない若者にとって、それらは映像や人の話から想像する昭和レトロな遺物になりつつある。

『おむすび』に登場したカセットテープには、主人公の結(橋本環奈)やその姉・歩(仲里依紗)と親交の深かった真紀(大島美優)の声が録音されていた。阪神・淡路大震災で命を落とした彼女の、残された唯一の声だ。

真紀の父・孝雄(緒形直人)は、少しずつ彼女の声を忘れ始めていること、月命日すら忘れて仕事をしていたことを、静かに悔やんでいた。同じ思いだった歩は、自室から見つけたカセットテープを孝雄に渡す。SNS上では「持ってきた歩が救世主に見える」「久しぶりに聞く娘さんの声……」と、過去の記憶に触れるエピソードに言及する声が多い。

そのほか、借金を背負い閉店ギリギリまで追い込まれたチャンミカ(松井玲奈)の営む古着屋「ガーリーズ」が、全国にいるギャル達や、彼女たちのSNSの力によって息を吹き返した。「オンラインショップは今後、日本でも当たり前になっていく」といったセリフもあり、昭和から平成、令和への時代の変遷を感じられる。

NHK 連続テレビ小説『おむすび』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHKプラスで見逃し配信中

※記事は執筆時点の情報です



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_