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「許せない」女を連れ込んだことより隠れてラーメンに激怒?46年前の大人気作品Netflix“リメイク版”が話題に…!

  • 2025.1.29

Netflixで配信中の『阿修羅のごとく』。1979年にNHKで制作・放送され、2003年には映画、2004年には舞台化もされている息の長い人気作。姉妹4人が父親の不貞に気づき、母親を気遣って七転八倒する様を描いている。1979年に放送された当初は時代に則していたが、2025年現在、宮沢りえ・ 尾野真千子・ 蒼井優・広瀬すずを4姉妹役に据えたリメイク版では“昭和ノスタルジーの回顧録”といった様相を呈している。

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Netflixシリーズ『阿修羅のごとく』独占配信中

女は男のために、ラーメンを我慢する

1979年、物語は、三女の滝子(蒼井優)がほかの姉妹を電話で召集するところから始まる。「何の用なのか?」と聞いても滝子は明かさない。長女の綱子(宮沢りえ)、次女の巻子(尾野真千子)、末っ子の咲子(広瀬すず)は揃って「結婚の報告では」と勘繰るが、そんな「のんきな話」ではなかった。

父・恒太郎(國村隼)が、母・ふじ(松坂慶子)とは別の女性と歩いているところを目撃してしまった、という滝子。そして、なんと子どももいる。滝子は自腹で興信所の調査員・勝又静雄(松田龍平)に依頼し、事実の裏をとっていた。

父のために長く尽くしてきた母が、裏切られている。4姉妹にとって、それがどれほど痛烈か。この『阿修羅のごとく』は、ある日露見した父の不貞をきっかけに、4姉妹それぞれの恋事情があれよあれよと紐解かれていく喜劇(あるいは悲劇)である。

男は簡単に女を裏切るが、女にはそれができない。俗説ではあるが、それを裏付けるようなエピソードが展開される。

パッとしないボクサー・陣内英光(藤原季節)と付き合っている末っ子の咲子。彼がチャンピオンになれるよう、献身的に支えている咲子の構図からして、なんとも昭和ノスタルジーだ。減量中の彼に付き合い、咲子もまともに飲み食いしない日々を送るが、英光は隠れてラーメンを食べており、しかも女まで連れ込んでいた。

職場で貧血になって倒れてしまった咲子を裏切る行為だ、と巻子は激怒する。しかし咲子は、女を連れ込んでいたこと自体は許し、隠れてラーメンを食べていたことに対しては「許せない」とハッキリ告げた。女は尽くす。尽くしてしまう。たとえ男から「独りよがりだ」と言われても。相手の見えないところでこっそり食事をすればいいだけだと、頭ではわかっていても。

姉妹たちが繰り出す愛憎劇の着地点は

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Netflixシリーズ『阿修羅のごとく』独占配信中

なかなか芽が出ない陣内を信じ、献身的に支え続ける咲子。その努力が結実したのか、陣内はチャンピオンの座を獲得して見違えるほどの有名人になる。彼ら夫婦には子どもも生まれ、収入も住む場所も着る服も持つ鞄も、すべてがアップデートされた。

時を同じくして、三女の滝子も結婚する。父親の不倫の件で知り合った勝又と式を挙げた。それだけなら、ただ華々しい祝いの席だ。しかし『阿修羅のごとく』の名に恥じない愛憎が渦巻く

滝子は、咲子が陣内を連れて式の場に訪れるのを嫌がった。歴然とした収入格差が露呈するのを、とりわけ勝又がそれを引け目に感じるのを案じたのだ。巻子の夫・鷹男(本木雅弘)から「そんな気を遣われていたと後から知ったら嫌だろう」などと諭され、いったんは咲子たちが式に来ることを了承した滝子。しかし、式では想定した通りの悶着が起きてしまう。

巻子も巻子で、鷹男の不倫に心を悩ませ続けている。はっきりと本人に問いただすことも、不倫相手の赤木啓子(瀧内公美)に直談判することもできないまま、過ぎていく時間。不倫といえば、綱子も長らく桝川貞治(内野聖陽)と愛人関係にあり、切りたくとも切れない。姉妹4人がそれぞれの軋轢を抱え、不安定にぐらついている。

彼女たちの思惑は、怨念は、どこへ着地するのか。それとも、終着点を見つけられないまま宙に浮き続けるのか。最後を見届けるそのときまで、視聴者もろとも物語に翻弄され続ける。



Netflixシリーズ『阿修羅のごとく』独占配信中

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_