『おむすび』第15週「これがうちの生きる道」では、2011年3月11日に発生した東日本大震災が描かれた。1995年の阪神淡路大震災を経験している主人公・結(橋本環奈)にとって、それは当時の記憶や経験を思い起こさせるきっかけになった。かつて栄養学校で同期だったカスミンこと湯上佳純(平祐奈)は、合同救護チームの一員として現地を訪れていた。結は彼女から、被災地の様子を聞くことになる。
おむすびとけんちん汁を通して描かれる成長
被災地では、必要な物資がどこに保管されているかもわからず、とくに身体の自由が効かない高齢者や、生まれたばかりの赤ちゃんを抱える夫婦が困っていた、と佳純は語る。緊急事態においても、最低限、栄養のある食事を摂れるようにと考えるのが、栄養士である佳純の仕事だ。それでも、現場では「飯のことは後」と蔑ろにされる始末。
そこで佳純が思い至ったのが、栄養学校時代に結から聞いた、阪神淡路大震災での経験だった。配給されたおむすびが冷たかったこと。「冷たいからチンして」と言ったら、用意してくれたおばさんが悲しそうにしていたこと。きっと、こんな状況でもあたたかいおむすびを食べてもらいたい、と願っていただろうこと。
佳純は、なんとか東北の被災地であたたかい食事を提供しようと、過去にやった炊き出しの経験をいかした。あの、あたたかいわかめおむすびと、ツナサバけんちん汁。悲しい記憶の象徴のようだった冷たいおむすびが、あたたかいわかめおむすびと、ツナサバけんちん汁となって、東北にいる被災者に供されたのだ。
二つの震災を繋ぐような心あたたまる演出に、SNS上でも「冷たいおむすびがあったかいおむすびになった」「佳純の成長が描かれてる」「震災を知らない世代にも伝わってくれたら」と反響が強い。
鬼ギャル“アキピー”ついに登場
結は子どもを出産する過程で大きく体調を崩し、それをきっかけに管理栄養士の西条小百合(藤原紀香)と出会う。健康のためには、とにかく栄養のある食事をしなければ、と「食べる」ことに重きを置いていた結。しかし、食べる準備をするために、ちゃんと食べられる身体にするために、「食べない」という選択肢もあることを、結は小百合から学んだ。
佳純から東北の被災地での現状を知ったことで、結は自ずと「自分に何ができるのか」と考えを巡らせることになる。彼女が選び取った答え、そして生きる道は、小百合と同じく管理栄養士になって、美味しいご飯を食べられる幸せを広く伝えていくことだった。
第16週「笑え、ギャルズ」では、結を始め、ギャルであることにアイデンティティを持っている歩(仲里依紗)やルーリーこと真島瑠梨(みりちゃむ)らが、自分たちだからこそできることを模索し、手探りながらに実行していく様が描かれていく。
SNSでも話題になっているキャスティングとして、岩手出身の鬼ギャル・アキピーもついに登場。なんと演じるのは渡辺直美。彼女の存在そのものが、朝にハッピーを運んできてくれるに違いない。
NHK 連続テレビ小説『おむすび』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHKプラスで見逃し配信中
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ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_