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是非が問われる震災描写…視聴者から好感を得た演出とは?2年ぶり2回目の2025年新春“スペシャルドラマ”

  • 2025.1.7

2019年、2020年にわたって2シーズンのドラマシリーズが放送され、2022年には第一回目のスペシャルドラマも制作された『監察医 朝顔』。2025年1月3日には第二回目の新春スペシャルドラマが放送され、現在の朝顔(上野樹里)たちがどんな暮らしをしているかが描かれた。SNS上では、大きくなった子どもたちと、出世した桑原真也(風間俊介)の様子に対して言及が多く見られた。

風間俊介、やばい人認定?

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(C)SANKEI

『監察医 朝顔』は、上野樹里演じる法医学者の主人公・万木朝顔(後に桑原朝顔)が、亡くなったご遺体に向き合い、その人が間違いなく生きた証や、その証によって紡ぎ出される事実に丁寧に目をむけるヒューマンストーリー。朝顔が遺体の解剖を始める際、一人ひとりの身体に手を触れながら「教えてください」と口にする、恒例のシーンが印象的だ。

1月3日に放送された新春スペシャルでは、朝顔の子どもたちである桑原つぐみ(永瀬ゆずな)と桑原里美(中村千歳)の成長した姿が。朝顔の夫である真也も出世しており、確実に流れていた時間に対して、SNS上では「子どもたちがおっきくなってて、感動」「桑原くん、出世してる!」などの声が挙がっている。

2年ぶりのスペシャルドラマなのも相まって、この作品を愛するファンの熱量も高まっていることが察せられた。出演者にとっても、その思いは同等かそれ以上だった様子。真也を演じた風間俊介も、ドラマの放送に合わせてSNSを更新している。つぐみを演じた永瀬ゆずなのInstagramにコメントしたところ、コメントが受け付けられず、それを受けて「ヤバい人だと思われた可能性あり。笑」とユーモアまじりに投稿している

今回のスペシャルドラマでは、不審な死を遂げた複数の遺体が見つかったことをきっかけに、ある一人の少女を襲った凄惨すぎる事件の真相が紐解かれる。法医学者である朝顔と、野毛山署に勤める刑事である真也が協力し合い、謎を解き明かしていく様子に目を惹かれる構成に。

命を落とした少女が持っていたとされる、とある所有物が解決のカギとなった展開は、これまで誠実に作品づくりに対峙してきた『監察医 朝顔』だからこそ表現できるリアルさで、違和感なくまとまっていた。

『監察医 朝顔』が愛される理由

過去に2シーズンのドラマが放送され、くわえて2つのスペシャルドラマが制作された『監察医 朝顔』。ここまで本作が視聴者に求められる理由は、第1シーズン制作当時から、覚悟と勇気を持って東日本大震災を描いた真摯さが、どの回にも反映されているからではないか。

実際に起きた事件や震災を、映画やドラマなどの映像作品で取り扱う行為については、是非が問われる。ただ時代の流れに合わせ、センセーショナルな見せ方をすることで「数字=売上」に繋げようとする品のない動きが、背景に薄く透ける瞬間もあるからだろう。

しかし『監察医 朝顔』には、そういった狡さがない。2025新春スペシャルドラマ内でも、二度ほど地震の描写があったが、過度に激しくドラマチックに演出しない、淡々とした描写が多くの好感を得た。揺れを感じ取るや否や、二人の子どもたちに「外に出て!」と即座に促し、揺れが収まるのを待つ朝顔の描き方などは、震災時にこそ冷静さが問われることを暗に示しているようにも見える。

今回のスペシャルドラマにおいて、朝顔は父・万木平(時任三郎)との別れを経験した。今後、さらに『監察医 朝顔』シリーズが続くかどうか定かではないが、桑原家の暮らしに、物語上の明確なピリオドが打たれたのは間違いない。ドラマとしては描かれずとも、彼らの生活は私たちの生きる世界と地続きなのだと思わせてくれる力が、この作品にはある。



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_