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マンガ原作の“決めゼリフ”を言ってもサマになる… 芸歴19年目の実力派女優、新ドラマで見せた圧巻の表現力

  • 2025.5.7
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(C)SANKEI

松本若菜が主演を務めるフジテレビ水曜22時ドラマ『Dr.アシュラ』。こしのりょう原作の同名コミックを原作とした作品だ。松本若菜は通称“アシュラ(阿修羅)”と呼ばれる救命救急医・杏野朱羅を演じている。

赤字だから救急科を廃止?病院改革と戦う救命医

『Dr.アシュラ』の舞台は、帝釈総合病院。初期研修医の薬師寺保(佐野晶哉)は救急科に配属されたその日に、アシュラと呼ばれる救命医・杏野朱羅に出会う。

帝釈総合病院の救急科は、医療ミスを起こさないために、心肺停止状態などの緊急度の高い患者は受け入れないという方針で運営されていた。しかし、そんなことは朱羅にとっては関係ない。どんな状態の患者であっても受け入れ、朱羅は鮮やかに手術を進めていく。それは、脳外科や心臓外科などの専門的な技術を要する手術であってもだ。

帝釈総合病院では、新病院の設立に向けての動きがあった。赤字を無くして新設を進めるためには、人件費がかかり、医療行為の診療点数が低めの救急科は目の上のたんこぶ。病院の上層部は、朱羅が失敗して患者を死なせれば、不祥事として救命科を廃止できると躍起になっている。そして、そのなかには朱羅と共に「日本の救命を変えよう」と決意した、朱羅の師匠・多聞真(渡部篤郎)もいた。

そんな帝釈総合病院だが、第2話では朱羅に影響されて、院長の不動勝治(佐野史郎)や外科部長の金剛又吉(鈴木浩介)の言いなりだった救急科部長の大黒修二(田辺誠一)の心が動く場面も。朱羅の活躍と共に、病院の上層部がどのように影響を受けて変わっていくのかも見どころになるだろう。

主演作が続く松本若菜。どんな役柄もナチュラルに演じる芝居の凄み

2025年で芸歴19年目を迎える松本だが、世間的に注目されたのは、『やんごとなき一族』での深山美保子役だろう。主人公・深山佐都(土屋太鳳)をいびる義理の姉として、昼ドラのような底意地の悪さを、憎めないくらいの塩梅でコミカルに演じてみせた。美保子が佐都に対して見せる表情や演技は、松本劇場とも呼ばれ間違いなく本作の魅力の一つだった。

それ以降、2022年の『復讐の未亡人』、2024年の『西園寺さんは家事をしない』『わたしの宝物』と、主演作が続く。特に、2クール連続主演となった『西園寺さんは家事をしない』と『わたしの宝物』では、全く異なる姿を見せてくれた。

明るく前向きに現状に向き合う西園寺一妃と自身が行ってしまった托卵の罪悪感に苛まれる神崎美羽。表情も所作も声色も何もかも違う役柄だが、松本が演じると不思議なナチュラルさがある。作り物に見えず、その人がその場で反応しているような生々しい表現力があるのだ。

その自然な芝居は『Dr.アシュラ』でも存分に生かされている。『Dr.アシュラ』は漫画原作のため、漫画的な決めゼリフが存在する。手術を修羅場と称する朱羅は、たびたび「修羅場で迷いは命取りになる」と口にする。正直、自然とは言えないこのセリフを、松本は時に噛み締めるように、時に緊迫感を持ちながら、その場面に適したトーンで発している。作り物に見えてしまう漫画的な決めゼリフを、ドラマにあったトーンに調整することに成功しているのだ。

痛快な救命劇をはじめ、目覚ましい活躍をする松本から目が離せない。


ライター:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。X(旧Twitter):@k_ar0202