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【必見の映画3選】いま“時代劇”が熱い…!自主映画とは思えない“高クオリティ作品”や“豪華キャスト勢揃いの話題作”

  • 2025.1.18

朝ドラ『カムカムエヴリバディ』の劇中でも時代劇の衰退について取り上げていたが、昨今「時代劇は特に興味がないため、ほとんど見ない」という若者などの時代劇離れが多くなり、時代劇が減少してしまっている。そんな中、時代劇を盛り上げようという監督たちが立ち上がり、2024年は草彅剛主演の『碁盤斬り』や、山田孝之・仲野太賀W主演の『十一人の賊軍』(両作とも白石和彌監督作)といった映画が話題を呼んだ。そして、2025年も大注目の時代劇映画が公開される。今回は、現在公開中の超話題作も含め、3本の必見の時代劇を紹介しよう。

『雪の花 ―ともに在りて―』

松坂桃李、芳根京子、役所広司が共演する、多くの命を奪う疫病に立ち向かった、実在の町医者の姿を描く傑作時代劇。監督は、巨匠・黒澤明の助監督を務め、自身の監督デビュー作『雨あがる』以来、一貫して人間の美しい在り方を描いてきた小泉堯史。

江戸時代末期。死に至る病として恐れられていた疱瘡(天然痘)が猛威を振るい、多くの人命を奪っていた。福井藩の町医者で漢方医の笠原良策(松坂桃李)は、どうにかして人々を救う方法はないかと頭を悩ませる。明るい妻の千穂(芳根京子)から励まし続けられた良策は、京都の蘭方医・日野鼎哉(役所広司)の教えを請うことにし、鼎哉の塾で疱瘡の治療法を探し求める。ある日、異国では種痘(予防接種)という方法があると知った良策。だが、その方法を実現させるためには「種痘の苗」を海外から取り寄せなければならず、幕府の許可も必要となる。極めて困難な道だが、良策は絶対に諦めないと奮闘。やがて彼の志は、藩、そして幕府をも巻き込んでいく。

何度も大きな壁にぶつかりながらも、人々を救いたい一心で邁進する主人公を演じる松坂の姿が感動を誘う。夫を支える千穂の逞しさを体現する芳根の“凛々しさ”も微笑ましい。松坂と芳根は、2019年の時代劇映画『居眠り磐音』でも共演したが、その時は悲しい運命に翻弄される2人を演じていたので、今回は仲睦まじい夫婦に扮していてうれしい。良策が師と仰ぐ鼎哉を演じる役所は、松坂とは映画『孤狼の血』やドラマ『VIVANT』などで度々共演しており、今回の共演でも相性の良さが感じられる。

厳しい豪雪の山中のシーンや、スカッとする殺陣の場面もあり、小泉監督の丁寧な時代劇描写に目も心も奪われる。監督は笠原良策という人物に惹かれて会ってみたくなり、映画化したそうだが、現場で松坂が演じる良策に毎日会えて楽しい撮影だったと語っている。本当に松坂にぴったりのキャラクターで、彼の好演は非常に素晴らしい。

『雪の花 ―ともに在りて―』2025年1月24日(金)公開
出演:松坂桃李、芳根京子、役所広司 ほか
原作:吉村 昭「雪の花」(新潮文庫刊)
監督:小泉堯史 脚本:齋藤雄仁 小泉堯史
配給:松竹
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/yukinohana
(C)2025映画「雪の花」製作委員会

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(C)2025映画「雪の花」製作委員会

『室町無頼』

大泉洋、長尾謙杜、松本若菜、堤真一共演の、新時代のアクション・エンタテインメント時代劇。監督を務めるのは、『22年目の告白―私が殺人犯です―』『あんのこと』といった、濃密な人間ドラマをエンタメへと昇華させてきた入江悠。

1461年、応仁の乱前夜の室町時代。大飢饉と疫病で京の賀茂川ベリには8万を超える死体が積まれていた。だが、富める者はより一層富み、格差社会が深刻化。そんな中、己の腕と才覚だけで混沌の世を泳ぐ自由人の蓮田兵衛(大泉洋)は、凄まじい武術の才能を秘めた若者・才蔵(長尾謙杜)と出会う。天涯孤独で餓死寸前を生き延びるも絶望の中にいた才蔵は、兵衛に拾われ、訓練を積み兵法者としての道を歩み始める。兵衛は才蔵のほか、さまざまな無頼(アウトロー)たちを集め、巨大な権力に向けて空前絶後の都市暴動を仕掛ける。

大泉は、『水曜どうでしょう』に出演していた大学生のころから見てきたが、実在した人物で、日本史上初めて武士階級として一揆を起こした本作の兵衛役は、彼が演じてきた中で歴代ナンバーワンと言っても過言ではないカッコいいキャラクターだ。志もアクションも、そして女性への態度もスマート。そんな兵衛の想い人である高級遊女の芳王子を演じる松本も、美しくて凛々しい役柄に扮している。かつて芳王子と恋仲で、兵衛とは志を同じくした悪友だったが、道を違えることとなった骨皮道賢を演じるのは堤。大泉と堤の殺陣のシーンにもしびれる。そして、アクション量が最も多く、素晴らしい身体能力を披露している長尾は、時代劇の才能が開花している印象で、今後の活躍も楽しみだ。

憧れだったという京都撮影所に飛び込み、伝統ある撮影所の職人たちと共に、爽快感を味わえる斬新な時代劇を作り上げた入江監督。老若男女問わず、たっぷりと楽しめる時代劇になっている。

『室町無頼』2025年1月17日(金)公開 / IMAX 1月10日(金)先行公開
出演:大泉洋、長尾謙杜、松本若菜、堤真一 ほか
原作:垣根涼介「室町無頼」(新潮文庫刊)
監督:入江悠 脚本:入江悠
配給:東映
公式サイト:https://www.muromachi-outsiders.jp/
(C)2016 垣根涼介/新潮社 (C)2025「室町無頼」製作委員会

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(C)2025「室町無頼」製作委員会

『侍タイムスリッパー』

2024年8月に単館上映からスタートし、面白さが口コミで広がり、9月初めには全国62館に拡大。そして、12月時点で350館以上の映画館での上映という快挙となり、現在も公開中の超話題の異色の時代劇。主演は、『鎌倉殿の13人』を含む4本の大河ドラマや、『鬼平犯科帳 本所・桜屋敷』などに出演する山口馬木也。共演は、朝ドラ『おしん』でデビューし、『功名が辻』など5本の大河ドラマなどに出演する冨家ノリマサ。監督の安田淳一が脚本・撮影・編集なども務め、ヒロインを演じる沙倉ゆうのは助監督・制作・小道具など、スタッフとしても活躍している。

時は幕末、京の夜。会津藩士の高坂新左衛門(山口馬木也)は、長州藩士を討とうとして刃を交えた刹那、落雷が轟き、現代の時代劇撮影所にタイムスリップしてしまう。守ろうとした江戸幕府がとうの昔に滅んだと知り愕然とする新左衛門だったが、住職夫婦に助けられ、寺に居候することに。心優しい若手助監督の山本優子(沙倉ゆうの)が新左衛門を気遣う中、彼は少しずつ元気を取り戻していき、やがて「我が身を立てられるのはこれのみ」と刀を握り締め、新左衛門は磨き上げた剣の腕だけを頼りに“斬られ役”として生きていこうと、撮影所の門を叩く。

低予算で作られたが大ヒットとなった『カメラを止めるな!』と同じく、映画館「池袋シネマ・ロサ」から火がついた本作。安田監督が「自主映画で時代劇を撮る」と決めたものの、資金集めもままならず諦めかけた際に、東映京都撮影所が手を差し伸べ、10名たらずのスタッフで撮影を敢行。低予算の自主映画とは思えないクオリティの高い作品に仕上がっている上、ストーリーが非常に面白く、笑いと涙に溢れた感動の時代劇コメディになっている。特に、冨家が演じる風見恭一郎の登場辺りから、予想外の展開でどんどん盛り上がっていき、ラストまで失速することなく楽しめる。

『侍タイムスリッパー』公開中
出演:山口馬木也、冨家ノリマサ、沙倉ゆうの、峰蘭太郎 ほか
監督:安田淳一 脚本:安田淳一
配給:ギャガ 未来映画社
公式サイト:https://www.samutai.net/
(C)2024 未来映画社

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(C)2024 未来映画社


ライター:清水久美子(Kumiko Shimizu)
海外ドラマ・映画・音楽について取材・執筆。日本のドラマ・韓国ドラマも守備範囲。朝ドラは長年見続けています。声優をリスペクトしており、吹替やアニメ作品もできる限りチェック。特撮出身俳優のその後を見守り、松坂桃李さんはデビュー時に取材して以来、応援し続けています。
X(旧Twitter):@KumikoShimizuWP