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「どこが純愛?」「最悪なタイミング…」五角関係のドロドロ不倫に総ツッコミ…? 木曜ドラマ『わたしの宝物』

  • 2024.11.14

かつて心を通わせあった中学生時代の幼馴染と再会し、甘酸っぱい初恋の感情を思い出す純愛ドラマ……かと思いきや、4話終盤にかけていきなり“ドロドロ不倫ドラマ化”の様相を呈する『わたしの宝物』。海外で亡くなったはずの冬月稜(深澤辰哉)と神崎美羽(松本若菜)は再会するが、思いのあまり抱き合っている現場を小森真琴(恒松祐里)に目撃されてしまう。

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(C)SANKEI

亡くなったはずの幼馴染、生存に喜ぶも……

夫・宏樹(田中圭)のモラハラに悩み、子どもさえいれば良好な夫婦関係に戻せるのか……と悩んでいた美羽。そんな折に中学生のころの幼馴染・冬月と再会し、思いを通わせた二人は一晩を過ごしてしまう。

直前に宏樹とも関係を持っていた美羽は妊娠。お腹にいる子の父親は冬月であることがわかるが、フェアトレードの会社を経営している彼は、新しい学校をつくるためにアフリカに渡り、現地で事件に巻き込まれて命を落としてしまった。宏樹に「あなたの子よ」と嘘をつき、美羽はいわゆる“托卵”を決意する。

しかし、3話から4話にかけて猛スピードで事態が転換する。美羽の存在を軽んじ、蔑ろにしていた宏樹は、いざ自分の子を手に抱いた瞬間に態度を一変させた。美羽の体調を気遣い、育児や家事にも積極的になり始めたのだ。宏樹が元来の優しさを取り戻すにつれ、美羽の罪悪感は拡大していく。

生存していることが判明した冬月が日本に帰国してから、さらに状況は悪くなる一方だ。子どもが生まれたことで、美羽と宏樹の夫婦関係は皮肉にも改善している。「子どもさえいれば」と切実に願った美羽の希望通りになっている。

そんななか、冬月の帰国は悪い影響しかない。彼自身、美羽が自分の帰国を待ってくれている、と信じて疑わない様子も痛々しく映った。SNSでは「冬月、帰ってこないで!」「最悪なタイミング……」と憂う声も多い。

鍵を握る二人の女性

再会した美羽と冬月が、給水塔の前で抱き合っているのを目撃してしまった真琴。彼女は美羽の元会社の後輩であり、年齢は離れているが「親友」と認め合っている仲だ。シングルマザーで雑貨店を経営しており、美羽は何かと真琴のことを気にかけている。それに応える形で真琴も、妊娠・出産したばかりの美羽をサポートしていた。

冬月と美羽を目撃する前の段階から、真琴は美羽の夫である宏樹に対し「私の推し」と呼称したり、会社に行けず休んでいる宏樹を見かけて心配したりしていた。

こうして見ると、真琴は美羽・宏樹・冬月の関係性を外から俯瞰する役割を担ったキャラクターであることがわかる。冬月と美羽の不倫関係を疑った真琴が、宏樹のことを思いやって行動する心理描写もわかりやすく、構成が上手く組み立てられている。

真琴からすれば、美羽は宏樹の子を産み、金銭的にも何不自由なく育児に専念でき、幸福な家庭を築ける立ち位置にいる。そんな美羽が不倫をしているとしたら、許せない、裏切られたと憤るのも自然な感情の発露だと言える。

真琴の言動も気になるところだが、それに合わせて、冬月の同僚である水木莉紗(さとうほなみ)の動向も注視したい。

莉紗が冬月に好意を持っているのは、これまでの話を見ても明らかだ。莉紗は冬月のことを「人と人とのつながりを大切にする、それが冬月の考え方なんです」と絶賛するほど、信頼を置いている。

冬月に大切な人がいて、なかなか会えない状況でも諦めきれずにいる様子を直近で見守ってきた。彼に「時計の針を進めなきゃだね」と声をかけたのは、新しい恋に進むために自分を見てほしい、という彼女の希望が滲み出たからだろう。

ともに会社を経営し、思いを共有してきた二人だからこそ、莉紗は冬月が“許されない恋”をしていると知っても、簡単に非難はしないのではないか。むしろ矛先は美羽に向く可能性すらある。視聴者の視点から見ても、美羽のやっていることは善行とは言いがたく、八方塞がりの孤独に陥るのは時間の問題だ。

美羽、宏樹、冬月。三人の関係性に影響を与える、真琴と莉紗。歪な三角形、いや、五角形がどのように動くか。当初は純愛に思われた美羽と冬月の関係も、いまや「どこが純愛?」と総ツッコミを受けてしまいそうだ。



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_