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登場人物、全員あやしい…!視聴者がハマる“今期きっての傑作ミステリー” 考察合戦&黒幕予想でSNS大盛り上がり

  • 2025.3.18

TBSの金曜ドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』が盛り上がりを見せている。過去に発生した一家殺害事件と現代の事件が交錯するミステリー作品で、犯人候補が多い。登場人物の誰もが怪しく見えてくるため、SNSでも考察合戦が繰り広げられている。

そうしたミステリーとしての面白さもありつつ、その上で家族の愛を描く物語としても秀逸。主演の広瀬すずをはじめとする役者陣も存在感あって、見ごたえあるドラマに仕上がっている。

愛する父親は一家殺害事件の秘密を隠していた?

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金曜ドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』第1話より (C)TBS

本作の主人公は女子大生の山下心麦(広瀬すず)。父1人、娘1人の仲の良い父娘関係を築いていたが、クリスマスイブの日に自宅が放火され、父親の春生(リリー・フランキー)が殺害される。犯人はすぐに逮捕されたが、春生は馴染みの屋台のラーメン店主・染田に心麦宛ての手紙を託していた。その手紙には、自分が殺され、遠藤智哉(成田凌)が逮捕された場合、それは冤罪だと記されていた。そして、弁護士・松風(松山ケンイチ)を頼って、智哉の弁護を引き受けるように依頼してほしいと書かれていた。

春生は刑事で、かつて一家6人が殺された東賀山事件を担当していた。その犯人として死刑判決を受けたのが、智哉の父・遠藤力郎だった。そして、その事件で唯一生存した赤ん坊・林川歌がじつは心麦ではないかという疑いが生じることになる。

春生はなぜ智哉が冤罪で捕まると知っていたのか、この手紙はどこまでが真実なのか、そして自分の出生の秘密。心麦は真相を知るために松風とともに入り組んだ迷宮のような事件の渦中に飛び込んでいく。

第一話で提示された主な謎は以下の通りだ。

1.春生を殺したのは誰なのか、その動機は?・・・智哉が逮捕されたのは、父の力郎の逮捕による逆恨みが表向きな理由だが、彼が冤罪となると、誰が何の目的で春生を殺害したのだろうか。

2.心麦と春生の関係は?・・・東賀山事件を追う週刊誌記者の神井(磯村勇斗)から、心麦は春生と血がつながっていないことを示唆される。だとすると、心麦と春生の本当の関係は何なのか、それが事件の真相にもつながるカギとなる。

3.東賀山事件の真相・・・春生が担当した東賀山事件。力郎が逮捕されて事件自体は決着したかに見えるが、この事件もまた冤罪だったとしたら?

4.春生の残した手紙の真相・・・娘の心麦に直接渡さずに、わざわざラーメン屋の染田に預けていた理由は、なんなのか。その手紙の内容の信憑性は?

これらの謎をめぐって、多くの登場人物がうごめいていく。春生の後輩刑事である赤沢正(藤本隆宏)とその妻・京子(西田尚美)や親戚の木村夏美(原日出子)の行動も怪しいし、ラーメン屋の染田も重大な秘密を隠している。赤沢の上司・阿南(瀧内公美)は強硬に智也を犯人に仕立て上げるように指示を出す。物語中盤で心麦たちの協力者として現れた弁護士の鳴川が黒幕ではないかという声もある。

とにかく、心麦を巡る登場人物の誰もが怪しい。誰がどのように黒幕とつながっているのか、毎話、新たな事実が発覚し、物語が二転三転していくスリリングな展開で視聴者をうならせている。

家族愛の物語としても秀逸

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金曜ドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』第1話より (C)TBS

だが、本作の魅力はそうした考察要素ばかりではない。心麦を巡る家族の愛の物語でもあるのだ。心麦は父の春生を深く愛していた。そんな父が自分に隠し事をしていたことがショックで、心麦は事件の真相を求め始める。そして、7話で遂に自分の出生の秘密を知った心麦は、春生の愛が本物だったことを知り、涙する。確かに心麦は春生と血のつながりはなかったが、愛まではウソではなかったのだ。そして、自分を深く愛して守ってくれた父の無念を晴らすためにも改めて心麦は事件の真相を追いかけていくことになる。

そんな心麦と一緒に事件の真相を探る弁護士の松風もまた、父との確執を抱えた存在だ。優秀な刑事だった父は、松風が幼い頃に失踪した。その父は刑事時代に赤沢の先輩にあたる存在であったことも、事件の因縁を深めることになっている。

そして、何より冤罪で逮捕された可能性のある親子の2人、遠藤力郎と智哉にも絆がある。智哉は力郎の逮捕によって人生がむちゃくちゃになったが、それでも父の無実を晴らそうと行動している。

こうした私的な家族への想いが迷宮のように入り組んだ事件をさらに奥深いものにしている。また、そうしたしがらみを持っていないであろう、週刊誌記者の神井がトリックスター的に事件と人々の心をかき乱して、物語を盛り上げる役を買って出ている。

曲者ぞろいの役者陣

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金曜ドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』第2話より (C)TBS

主演の心麦を演じる広瀬すずは、事件によって自分のアイデンティティが揺らぎながらも芯の強さを見せる女子大生を好演している。彼女のはまり役と言えるだろう。松山ケンイチは弁護士の松風を飄々としたひょうきんさを持ちながら、正義感の強い男として演じており、緊張感の高い展開が続く中で一服の清涼剤のようなギャグを見せたかと思えば、力強く頼もしい弁護士としての顔も見せてくれる。法曹関係の役は、昨年の朝の連続テレビ小説『虎に翼』でも演じていたが、堅物の裁判官から、おちゃめさを見せる弁護士役と実に対照的な顔を見せてくれる。

トリックスター神井を演じるのは磯村勇斗だ。癖のある役柄を演じさせると彼はうまい。ノリは軽いが事実に対しては真摯に追求するその姿勢が、事件の真相に迫る突破口になっている。だが、正義ではなく純粋に好奇心が動いているような節があるのが不気味な存在感を与えている。

その他、一見好印象の人物の裏の顔を描くために原日出子や西田尚美など、好感度の高いベテラン女優を起用しているのも興味深い。彼女たちは心麦のことを心から心配しているのか、それとも裏があるのか、キャスティングによって読みにくくなっている。こうした意表を突いたキャスティングによっても、本作のスリルが増幅している。

目まぐるしく変わっていく状況で飽きさせない、今期きってのミステリードラマだ。最終回の最後まで目が離せない展開が続きそうだ。

TBS系 金曜ドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』 毎週金曜よる10時



ライター:杉本穂高
映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。X(旧Twitter):@Hotakasugi