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“今、日本のテレビドラマで最も個性的な脚本家” まったく予想できない展開に寄せられる期待

  • 2025.2.28

今、日本のテレビドラマで一番個性的な脚本家は誰かと問われたら、バカリズムと答える。そんな彼の最新作『ホットスポット』は、唯一無二の独特のユーモアと脱力感のある台詞のやり取りで毎週、シュールな笑いを届けてくれ、その才能が存分に堪能できる作品になっている。

第1話から、一見普通のおじさんである高橋(角田晃広)が宇宙人であるという衝撃の事実が明かされたにもかかわらず、物語は日常の延長線上の小さな出来事を解決してはレストランでだべっているばかり。さらに、第7話では未来人まで登場。しかし、作品全体がスケールアップしそうな雰囲気は、あるようでない。しかし、これからどんな展開を迎えるのか予想がつかなくなってきたのも事実だ。

宇宙人を街の便利人のように使う図々しい登場人物たち

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『ホットスポット』第7話より (C)日本テレビ

本作は日常のちょっと気になる出来事を、宇宙人である高橋の能力を使って解決してゆく展開が売りになっている。主人公の清美(市川実日子)は幼馴染のはっち(鈴木杏)とみなぷー(平岩紙)に高橋の能力をつい洩らしてしまうが、3人はくだらないことばかりに彼の能力を使おうとする。

例えば、体育館の天井に挟まっているバレーボールを取ってもらったりなどだ。確かに、体育館の天井に挟まったボールは気になる。普通の人間には取れないことも確かだ。しかし、宇宙人の力を使ってまでやることなのか、という可笑しさが本作の持ち味だ。

そんなことが続いて、高橋の噂は次第に拡がってしまう。結局、清美と高橋の務めるホテルの支配人(田中直樹)や噂好きの同僚・由美(夏帆)に高橋が宇宙人であることが知られてしまう。

そして、その噂はどんどん広まり、ついにテレビディレクターにも捕捉されてしまう。池松壮亮演じる『月曜から夜ふかし』のディレクター岸本が、メガネをかけた男性がものすごい高速で走っていたという目撃談を耳にする。取材を受けた由美たちは誤魔化したつもりでも、全然誤魔化せておらず、岸本はついに高橋にたどり着く。しかしその時、車に惹かれそうになってしまったところを、高橋に助けられる。

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『ホットスポット』第7話より (C)日本テレビ

一話の清美が命を助けられたシーンと重なる展開だが、高橋は岸本の口を塞ぐためにこれ以上嗅ぎまわると不幸なことが起きるかもしれないと言い残し去っていく。実際に岸本が撮影したデータが消えてしまい、岸本は取材を諦めることになる。一応、テレビで高橋のことがばれてしまう危機は去ったのだが、ここで衝撃の展開を迎えた。

清美の勤めるホテルに長期滞在者として泊まっている村上(小日向文世)が、「自分は未来からやって来た」と言い出すのだ。いきなりの急展開を迎えることになり、山梨の牧歌的な街に宇宙人と未来人がいることとなり、今後どういう展開が待ち受けるのか、全く予想がつかない。

池松壮亮、MEGUMI、志田未来…豪華キャストがくだらない役で次々に登場

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『ホットスポット』第7話より (C)日本テレビ

そんな急展開を迎えた本作は、第1話から登場する主要キャストの他にも、続々と豪華な俳優陣が登場し始めている。前述したテレビディレクター役の池松壮亮の他、6話ではスナックのママ役でMEGUMI、由美の友人役で志田未来が登場。

さらに、実は第1話でもちらりと写っていたのだが、6話で本格登場となった、新市長の梅本役の菊地凛子もいる。MEGUMIのスナックのママ役ははまり役だ。彼女は清美たちの同級生で、顔なじみだ。地方の町の人間関係の狭さを象徴するようなトークが続くのが面白いし、何よりMEGUMIのスナックママとしての佇まいがリアルだ。

7話では、清美の元夫役で大倉孝二も登場。シュールな小品のこのドラマに、だんだん豪華キャストが集い始めている。こうして集った豪華なメンバーの中で中心になるのが、地味な存在感である角田晃広なのがやはり面白いところで、このキャスティングの采配も本作のユニークさだ。

未来人登場でこの後どうなる?

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『ホットスポット』第7話より (C)日本テレビ

7話で未来人の存在を知ってしまった清美。その村上からホテルが近い将来なくなると聞かされ動揺する。そして、清美がそのことを秘密にしておけるはずもなく、8話の予告を見る限り、さっそくはっちとみなぷーにばらしてしまうらしい。この展開もまったく高橋の時と同じでデジャブ感があるのだが、とにかくホテルがなくなると困るのは、そこの温泉をエネルギー源にしていた高橋だ。

村上はなぜ50年後の未来からやって来たのか、そして、そもそも高橋の父親はなぜ地球に来たのか、物語は核心に迫っていくことになりそうだ。

と、予告では壮大な前振りをしているが、それでもこの作品はちょっとばかばかしい日常会話が続いていくのだろうな、という気もする。日常のささいな気になることを物語に落とし込むのが上手いバカリズムが脚本を担当しているのだ、なんだかんだでシュールだけど地に足の着いた笑える展開が待ち受けているのではという、奇妙な安心感を感じる。

とはいえ、高橋の秘密や未来人・村上の目的は、それはそれで気になる。ここから先のエピソードで何が待ち受けているのだろうか、目撃するのが楽しみだ。



ライター:杉本穂高
映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。X(旧Twitter):@Hotakasugi