1. トップ
  2. 高校生が不倫!3,000万円を手にした家族… 2024年秋、ドラマ評論家がおすすめしたい作品5選

高校生が不倫!3,000万円を手にした家族… 2024年秋、ドラマ評論家がおすすめしたい作品5選

  • 2024.10.29

秋クール(10〜12月)のテレビドラマが出揃ったが、作品数が多すぎて何を観たらいいのかわからないという方も多いのではないかと思う。
そんな悩める方々のために、今回は秋クールのオススメドラマを5本紹介したい。

undefined

鋭い作家性が光る『海に眠るダイヤモンド』と『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』

まず1作目は、日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(TBS系日曜夜9時枠)

本作は、70年にわたる壮大な愛の物語と銘打たれている。
物語は2018年の東京から始まり、1955年の長崎の端島(軍艦島)へと時代が遡っていく。
主演は神木隆之介の一人二役で、現代パートは、冴えないホスト・怜央を演じ、過去パートでは、端島で鷹羽鉱業の職員として働く荒木鉄平を演じ分けていることも話題になっている。
脚本は野木亜紀子。チーフ演出は塚原あゆ子、プロデューサーは新井順子が担当。 この3人は連続ドラマ『アンナチュラル』(TBS系)、『MIU404』(同)、そして現在、大ヒットしている映画『ラストマイル』を手掛けるヒットメーカー。
これまでの作品が犯罪を題材にした一話完結のクライムサスペンスだったのに対し、『海に眠るダイヤモンド』は、現在と過去を往復することで日本の戦後史を描く壮大なストーリーとなっている。
そして、何より素晴らしかったのが当時の端島の街並みを再現した映像。
昨年話題になった日曜劇場の『VIVANT』(TBS系)がモンゴルロケの壮大な映像が話題になったが、『海に眠るダイヤモンド』はCGを駆使して過去の今では廃墟となってしまった炭鉱の島の街並みを再現している。
カメラワークも豊かで高低差のある端島の街並みをとても魅力的に切り取っていて、映像を観ているだけでうっとりとしてしまう。
第1話は世界観を見せることを優先しており、本格的に物語が動き出すのはこれからという印象だったが、現代パートで玲央に絡む謎の老女・いづみ(宮本信子)の正体が過去パートで土屋太鳳、杉咲花、池田エライザが演じる3人のヒロインの誰かの成長した姿なのでは? と匂わせる考察要素もあり、目が離せない作品となることは間違えないだろう。

2作目は水ドラ25『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』(テレビ東京系水曜深夜1時〜)

本作は、阪元裕吾監督の映画『ベイビーわるきゅーれ』シリーズをテレビドラマ化したもので、殺し屋として働く杉本ちさと(髙石あかり)と深川まひろ(伊澤彩織)の日常を描いた物語となっている。
このシリーズは、ガン&格闘のアクションが高く評価されており、初のテレビドラマとなった本作でもアクションの魅力は健在だ。同時にルームシェアをしているちさとまひろの緩い日常描写を描いた物語にも定評がある。

二人がダラダラと緩い会話をしていると、突然戦闘シーンになるという緩急の極端さが、本作独自のリズムとなっているのだが、物語の背後に現代の若者が仕事先で直面している労働の困難が描かれており、そこに強い現代性を感じる。

複数脚本家チームによる執筆にも注目。『3年C組は不倫してます。』、『3000万』

3作目はドラマDEEP『3年C組は不倫してます。』(日本テレビ系火曜深夜0時24分〜)

本作は、近年盛り上がりを見せている不倫モノのドラマ。
民法の一部が改正されたことで、2022年から親の同意を得ることなく結婚できる婚姻開始年齢が18歳に変わったことことを受けて、学生同士の不倫を描こうとしているのが本作の独自性で、学生同士の不倫を描いた学園ドラマというこれまでになかったドラマに仕上がっている。
物語の中心は、上村蒼(莉子)と橘伊織(杢代和人)のラブストーリーだが、二人の仲を邪魔するのが、伊織の元カノの高梨琴音(秋田汐梨)。別れた後で妊娠が発覚した琴音は、伊織に結婚することを要求し、夫を奪う不倫相手として蒼を敵視する。 見た目は清楚だがやってることはえげつない琴音は不倫ドラマの華と言えるエキセントリックな悪役ヒロイン。
松本まりかや篠田麻里子など不倫ドラマの悪役ヒロインで注目される女優が近年増えているが、秋田汐梨も本作でブレイクしそうな気配がある。他にも生徒の両親の不倫や、教師と生徒の不倫など、不倫要素が盛りだくさんなので、好きな人にはたまらない一品だ。

4作目は、土曜ドラマ『3000万』(NHK土曜夜10時〜)

本作は、ある家族が車を運転中にバイクで逃走中の犯罪者と接触事故を起こしたことによって、偶然手に入れた3000万円をめぐって起こる騒動を描いたクライムサスペンスだ。3000万円を手に入れた家族。犯罪組織、警察が三つ巴となって展開される駆け引きは予想外の展開の連続で見応えがある。

また、本作はNHKの脚本開発チーム「WDRプロジェクト」の第1弾となる作品だ。

「WDRプロジェクト」とは、複数の脚本家がチームを組んでオリジナル企画を立ち上げて、共同執筆をおこなうプロジェクトで、『3000万』では4人の脚本家(弥重早希子、名嘉友美、山口智之、松井周)が参加している。

脚本家の作家性を大事にしている日本のテレビドラマだが、近年は複数脚本家で執筆する機会も増えており、前述した『3年C組は不倫してます。』も、 storyboardライターズチームという3人の脚本家による執筆となっている。

物語の行方も気になるが、複数脚本家体制の今後を占う上でも注目すべき作品である。

気軽に楽しめる『無能の鷹』

最後(5本目)に紹介したいのが金曜ナイトドラマ『無能の鷹』(テレビ朝日系金曜夜11時15分〜)

本作は、会社を舞台にしたコメディテイストのドラマ。一見、有能そうな外見をしているが実はポンコツで何もできない鷹野ツメ子(菜々緒)のことを、周囲が勘違いしてデキる女だと勘違いし、結果的に仕事が成功する様子をコミカルに描いているのが本作の魅力だ。

自信満々だが何もできない鷹野の扱いに困っている姿は、Z世代の新入社員にどう接っしていいのかわからず困惑する上司の姿を風刺しているように見えて、緩い作りながらも奥深い作品となっている。

原作は、はんざき朝未の同名漫画(講談社)、脚本は根本ノンジが担当。
現在放送されている連続テレビ小説『おむすび』(NHK)の脚本も手がけている根本だが、元々彼は『監察医朝顔』(フジテレビ系)や『正直不動産』(NHK)といった原作モノの脚色に定評がある脚本家だ。今回の『無能の鷹』も原作漫画のドラマ化として見事な塩梅となっている。

肩の力を抜いて気軽に観るのに適している作品なので、ドラマの本数が多すぎて何を観ていいのかわからないという方には、まず本作をオススメしたい。



ライター:成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)、『テレビドラマクロニクル 1990→2020』(PLANETS)がある。