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アニメ化が大成功した“理由”とは? 視聴者の心を“何度も”揺さぶった名作『メダリスト』

  • 2025.4.11
(C)つるまいかだ・講談社/メダリスト製作委員会

3月29日に最終話を迎えたTVアニメ『メダリスト』。自信を持ってできると言えるものがなく、同級生からも邪魔者のような扱いを受けていた結束いのりが、大好きなフィギュアスケートを通して見違えるほど成長していく姿に心を打たれる作品だった。ただ、私たちの心を揺さぶったのはいのりの成長だけではない。『メダリスト』は、“推し”の関係から生まれる“熱”を持った作品なのだ。

いのりと司はただの師弟関係ではない?

(C)つるまいかだ・講談社/メダリスト製作委員会

いのりとともにメインで登場するのが、彼女を一番近くでサポートする明浦路司(あけうらじつかさ)だ。司はいのりを子ども扱いせず、ひとりの人間として接する。コーチだから偉いといった考えはまったく持っていない。師弟でありながら対等な2人の関係は、とても健全なものに感じる。いのりと司とは違った関係の師弟もライバルとして登場しており、それぞれの個性が際立っていた。

司は、いのりの成長を見ると自分のことのように喜び、全力で褒める。いいところを率直に褒めて伸ばすのは、コーチとしてすばらしいコミュニケーションの取り方ではないだろうか。いのりが猛スピードでバッジテストや大会で結果を出していったのは、本来彼女の持っていた才能に加えて、褒め上手な司の存在も大きいように思う。

また、いのりのほうも司のことを誇らしく思っている。第12話では、司が鴗鳥理凰(そにどりりおう)の代わりに演技することになり、「見なよ……オレの司を……」と自慢げな表情をしていたのがコミカルだった。実際、つい見とれてしまうような司の美しい演技を見ると、いのりが彼氏面する気持ちもよくわかる。

「見なよ……オレの司を……」というセリフはX(旧Twitter)のトレンドに入るほど反響を呼び、自分の推しの名前にアレンジして投稿する人が続出。いのりと司が相手のことを自慢に思っている様子は、“推し”の関係にも通ずる。全力で応援したり、周りによさを伝えたりするいのりと司は、推しを持つ人なら共感できるのではないだろうか。2人の関係は高い熱量があり、視聴者を引きこんだ。

“推し”から生まれた熱量が導いたアニメ化成功

(C)つるまいかだ・講談社/メダリスト製作委員会

『メダリスト』のオープニング主題歌を務める米津玄師は「全人類読んでください」とコメントするほど原作漫画のファンであり、彼の逆オファーによって主題歌を担当することが決まったという経緯がある。そして、オープニング主題歌である「BOW AND ARROW」は、作品に対する米津の高い解像度が話題を呼んだ。以前から作品を解釈し楽曲に落とし込む才能に定評があった米津。もともと原作のファンだった彼ならではの熱量が上乗せされたことで、高く評価される主題歌の完成につながったように思う。

また、『メダリスト』の作者であるつるまいかだも米津のファンだ。つるまはボカロP名義であるハチとして活動しているころから米津を追っており、主題歌が米津に決まったときは「音楽界の金メダリストだよ!」と大はしゃぎしたとスペシャル対談で語っている。米津とつるまの間にも、お互いをリスペクトして推している関係が見て取れる。

アイドルやアーティスト、アニメのキャラクターなど、今は多くの人が推しを持つ時代だ。好きという気持ちから生まれるパワーは計り知れず、時には爆発的な化学反応を引き起こす。『メダリスト』のアニメ化が成功したのは、制作に携わる人たちが持つ溢れんばかりの“熱”のおかげではないだろうか。

最終話についてSNSでは「良い終わり方だったな」「今期どころかここ数年の中でも満足度高かった」「泣きながら拍手してたよ」「もうガチでやばかった」「今まで我慢してたけど原作買います」との声があがった。『メダリスト』は第2期の制作決定が発表され、4月17日より開催される「世界フィギュアスケート国別対抗戦2025」とのコラボも決定している。美しさと熱さで私たちを夢中にさせた『メダリスト』から、今後も目が離せない。

メダリスト
ABEMAにて毎週木曜26時より無料放送
放送後1週間、最新話を無料で視聴できる。
[番組URL]https://abema.tv/video/title/25-279
【(C)つるまいかだ・講談社/メダリスト製作委員会】


ライター:まわる まがり
主にアニメについての記事を書くライター。コラムやレビュー、映画の作品評を手がける。X(旧Twitter):@kaku_magari