カンテレ・フジテレビドラマ『未恋～かくれぼっちたち～』が3月13日（木）に最終回を迎えた。
小説家になる夢を諦めた編集者の高坂健斗を伊藤健太郎が演じ、健斗がかつて心を開きかけた、変わり者の年上派遣社員・鈴木（柿沼）みなみを愛希れいか、健斗が担当する売れっ子アイドル漫画家・深田ゆずを弓木奈於（乃木坂46）が演じている。
居場所はあるけど、むなしい、寂しい…。言葉では言い表せない孤独を抱え、もがき苦しむ、通称“隠れぼっち”たちの群像劇が話題となっている。
夢と現実の狭間で揺れる社会人のためのドラマ
深夜ドラマと言えば、不倫モノやバイオレンスな要素がふんだんに盛り込まれた傾向の放送枠でありながら、今ドラマは日々の仕事に追われる大人たちが心の中にひそかに抱く葛藤や不安を丁寧に描いている。“好き”や“憧れ”という気持ちだけで仕事はできない一方で、夢を実現する人もいる事実を痛いほどわかっている社会人たちに刺さったと言える。
視聴者からは「皆が自分なりに精一杯生きている、未恋の世界が温かくて」「あの時、違う道を選んでいたら…って、考えさせられた」「内面から湧いてくる気持ち大切にしたい！」「人生の選択を描くドラマが面白すぎる！」という感想で溢れている。深い共感や、心の内に向き合うような素朴さが、ダイレクトに視聴者に届いた結果といえる。
さりげない台詞が光る
今作の脚本を務めたのは吉田ウーロン太、石黒麻衣、木村淳、中林佳苗の4名。なかでも、吉田ウーロン太はお笑いトリオ「フラミンゴ」のメンバーであり、映画『シン・ゴジラ』（2016）『ラストマイル』（2024）など数々のテレビ、舞台、CMなど多岐にわたるフィールドで俳優、声優、そして脚本家と、マルチな活躍を見せている。今期ドラマでは、『プライベートバンカー』『地獄の果てまで連れていく』にも出演しており、ドラマやテレビをよく見る人にはおなじみの人物。
吉田は、先日のXで今ドラマについて、作中の台詞について投稿をしている。
未恋〜かくれぼっちたち〜最後までご覧頂いた皆様、本当にありがとうございました！ 人の人生ってこうだったらいいな、を脚本に込めました。 最終回、私の気に入っていたセリフは… このみの「怖い怪獣はね優しいんだよ」です！対義語の概念に囚われないで自由に生きて、というみなみ流子育て！
みなみが娘のこのみを幼稚園へ迎えにいったときに発されるこの台詞。些細な台詞ながら、みなみの人格、子どもと向き合う姿勢が垣間見える台詞だ。この台詞のように、今ドラマには端々に心に残る言葉がちりばめられている。
特にそれは、編集部コミックブーンの編集長の堂島貞一（金井勇太）の発言で多く見られた。仕事の結果にこだわり、部下の意見を跳ね返す高圧的な上司のように見せて、実は仕事や人生に向き合うための本質を突く台詞を数々口にしているのだ。
仕事で行き詰まる健斗に対して堂島は「負けるのを極度に恐れてる。だから正面からぶつからない。人間なんだから、負けたって、諦めたって死にはしない。辛くなったらいつでもやめればいい。自分の夢に、縛られる必要はない。好きが見つかったらそれでいい。好きに流されたっていい」と優しく声を掛けた。
この堂島の対応に、SNSでは「この作品で一番好きなの編集長だわ」「いいこと言う」「この編集長すごいな達観してる」「編集長、めんどくさそうだけど実際いい人だよなぁ」「的確なアドバイスしたりとか感心する部分がある」と支持する声が続出。
最終話では、副編集長の長井篤子（伊勢佳世）と同期の関係であることが明らかになり、「昔から、“夢が見れるのは弱者の特権”って言ってたね」と長井から言われる一幕があった。堂島も彼なりの挫折を経験して今まで生きてきたことが伺える。だからこそ、迷いながら一歩を踏み出す健斗たちの背中を押してあげられるのだろう。
悩みながら生きる大人に送るエール
“好き”や“夢”を持って輝く人もいれば、そんな人を支えることで輝く人もいる。誰もが等しく自分の心に正直に、何にも囚われずに生きていい。今ドラマは現代を必死に生きる“かくれぼっちたち”に癒しと勇気をくれた。
カンテレ制作・フジテレビ系列 ドラマ『未恋～かくれぼっちたち～』 毎週木曜深夜0時25分〜
ライター：山田あゆみ
Web媒体を中心に映画コラム、インタビュー記事執筆やオフィシャルライターとして活動。X：＠AyumiSand