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真っ暗な画面に映し出された“衝撃”の文字→「えっ」と思わず声をあげてしまう理由とは?『チ。』の“意外性”を考察

  • 2025.2.7
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(C)魚豊/小学館/チ。 -地球の運動について-製作委員会

「10年後」最初に真っ黒な画面にこの文字が現れたとき、「えっ」と声が出てしまったのは筆者だけではないはずだ。10年、さらには25年と長い時間が流れ、主人公が交代する展開が見どころのひとつである現在放送中のTVアニメ『チ。 ―地球の運動について―』。本作の面白さをつくっているのは、展開の“意外性”だ。

25年後、大人になったヨレンタの“変貌”

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(C)魚豊/小学館/チ。 -地球の運動について-製作委員会

第16話から突入した第3章では、オクジーやバデーニたちが生きた時間から25年後が描かれる。教会と異端解放戦線の戦いが激しさを増し、混沌とした世界。そんななか、第3章の主人公・ドゥラカは、異端解放戦線の組織長・ヨレンタと出会う。

大人になったヨレンタの姿を見て「生きていたのか……!」とうれしくなる一方で、組織長という身分に驚いた人も多いだろう。第2章で彼女は天文研究助手として働く14歳の少女だったため、驚くのも無理はない。ヨレンタは、剣を握るような物騒なことはしなくてもいい生活を送っていたのだから。

しかし、ヨレンタは「20歳で初めて人を殺した」とドゥラカに語る。現在、ヨレンタは39歳。これまで組織長として数えきれないほどの血なまぐさいことに手を染めてきたのだろうと想像できる。彼女の人生は、地動説との出会いによって大きく変わってしまったのだ。

ヨレンタの変貌は、意外性がある。第2章で拷問から逃がされ行方がわからなくなっていたが、無事に生きのびて再登場するという驚き。加えて、教会と対立する組織の長になっていたという衝撃。

異端解放戦線の組織長となったヨレンタは、「女性だから」という理由で差別され涙を浮かべていたころからは想像がつかない。主人公が死に新章へ移り変わってきた本作において、章をまたいで登場するヨレンタは“いい裏切り”になっているのだ。

地動説の敵として登場し続けるノヴァク

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(C)魚豊/小学館/チ。 -地球の運動について-製作委員会

もうひとり、皆勤賞をとるかのごとくすべての章に登場しているキャラクターがいる。異端審問官・ノヴァクだ。彼は第1章から登場し続けており、第3章にいたるまで一貫して地動説を研究する者たちの敵として描かれてきた。

再登場をくりかえすノヴァクも、意外性があるといえるだろう。本作はキャラクターの入れ替わりが激しい作品だ。章を大きな区切りとして、死んでしまうキャラクターもいれば、新しく物語に加わるキャラクターもいる。そのなかで、地動説の前に立ちふさがり続けるノヴァク。なかなか手ごわい相手だ。

ノヴァクの地動説に対する心情は、第3章に入って憎悪と化している。彼は、地動説のせいで最愛の娘であるヨレンタを奪われたからだ。第19話にて登場した「地動説を、ぶち殺す」というセリフには、ノヴァクの激しい怒りと憎しみがこもっている。

ちなみに、ノヴァク役を務めるのは、第1章から第3章まで変わらず津田健次郎。何十歳も年をとったノヴァクに、津田の深く渋い声が馴染んでいる。また、第3章でヨレンタ役は仁見紗綾から行成とあへバトンタッチ。少女のヨレンタと凛々しい大人の女性になったヨレンタを、交代によって2人で表現している。

本作は、“変化するところ”と“変化しないところ”のバランスが絶妙だ。そして、変化から生まれるギャップが意外性を生み出し、作品の面白さにつながっている。今後も、ヨレンタのように再び登場するキャラクターがいるかもしれない。そのとき、私たちはきっとまた「えっ」と声が出てしまうに違いない。

チ。 ―地球の運動について―
ABEMAでは『チ。 ―地球の運動について―』毎週土曜日夜24時10分より無料独占・見放題最速配信
放送後1週間、最新話を無料で視聴できる。
[番組URL]https://abema.tv/video/title/568-32
【(C)魚豊/小学館/チ。 -地球の運動について-製作委員会】


ライター:まわる まがり
主にアニメについての記事を書くライター。コラムやレビュー、映画の作品評を手がける。X(旧Twitter):@kaku_magari