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どうして『チ。』は成功したのか?“アニメ化が難しい”作品を成功に導いた理由を考察

  • 2024.12.19
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(C)魚豊/小学館/チ。 -地球の運動について-製作委員会

魚豊による漫画を原作とした現在放送中のTVアニメ『チ。 ―地球の運動について―』。本作は会話劇がメインであり、バトルシーンのような動きのある場面はほとんどない。一見するとアニメ化に向いていないように思える作品なのだ。しかし、毎話放送されるたびにSNSで話題を集めている。なぜ『チ。』は会話劇が中心にもかかわらず、アニメ化によってさらに面白くなったのだろうか。

『チ。』の登場人物が紡ぐ言葉の力強さ

『チ。』の面白さのひとつは、登場人物たちの会話のなかで現れる名言の数々だ。第1章の主人公・ラファウをはじめ、第2章で登場するバデーニやオクジー、ヨレンタといったキャラクターは、思わずハッとしてしまうような深い言葉を口にする。

地動説の研究資料を残すために自死を選んだラファウは、異端審問官・ノヴァクに正しさを問われたとき「そりゃ不正解でしょ」と答えながらも「不正解は無意味を意味しません」と語る。この牢獄でのラファウとノヴァクのやり取りは哲学的で、己の信念に命を懸ける者たちの物語である『チ。』を象徴する場面だと言える。

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(C)魚豊/小学館/チ。 -地球の運動について-製作委員会

第2章では、「文字は、まるで奇跡ですよ」とヨレンタがオクジーに文字のすばらしさを語る。当たり前のように文字を使っている私たちに、気づきを与えてくれる言葉だ。また、自分たちが異端者であることがバレて異端審問官が襲ってくる直前、この世に絶望していたはずのオクジーは「今はこの地球(かんどう)を守る為に地獄へ行ける」と心境の大きな変化を感じるセリフを口にしている。

こういった名言の場面は原作で大ゴマや見開きを使って描かれることが多く、インパクトがある。視覚的に心に残るような見せ方がされており、言葉の重みをずしんと感じるのだ。

ちなみに、原作漫画の裏表紙には地球や金星といった惑星を説明する文章がびっしりと書かれている。本作が宇宙とともに言葉や文字にもスポットを当てているのがうかがえるデザインだ。こう考えると、ますます『チ。』は漫画で“読む”ほうが深く楽しめるように感じる。

会話劇の魅力を引き上げた“実力派声優陣”

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(C)魚豊/小学館/チ。 -地球の運動について-製作委員会

では、アニメ化によって本作に起こった一番の変化はなにか。それは、名言を話す“声”がついたことだ。『チ。』は豪華な声優陣がキャラクターの声を担当している。たとえば、ラファウ役の坂本真綾やバデーニ役の中村悠一、ノヴァク役の津田健次郎といった具合だ。

会話劇がメインの本作において、声優陣は最重要と言っても過言ではない。会話シーンが話の大半を占めるため、声の演技がアニメの面白さに直結するからだ。

そんななか、本作の声優陣は見事にキャラクターの性格や心情を表現している。特に第1章、第2章と続けて登場しているノヴァク役の津田の演技がノヴァクそのものだと感じている人は多いだろう。津田の深く渋みのある低い声が、冷徹でおそろしいノヴァクのイメージにぴったり合っている。

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(C)魚豊/小学館/チ。 -地球の運動について-製作委員会

声優陣の演技によって、キャラクターが発する名言がより深みを増しているように思う。また、アニメで繰り広げられる会話劇のテンポがいい点も、中だるみせずに観られる理由に繋がっている。

アニメ映えする派手なアクションがなくても『チ。』のアニメが面白い理由。それは、実力派ぞろいの声優陣による会話劇が、視聴者をぐっと引きつけるからではないだろうか。そして、声がついたことによって、名言は私たちの心により一層響くのだ。

チ。 ―地球の運動について―
ABEMAにて毎週土曜日夜24時10分より無料独占・見放題最速配信
放送後1週間、最新話を無料で視聴できる。
[番組URL]https://abema.tv/video/title/568-32
【(C)魚豊/小学館/チ。 -地球の運動について-製作委員会】


ライター:まわる まがり
主にアニメについての記事を書くライター。コラムやレビュー、映画の作品評を手がける。X(旧Twitter):@kaku_magari