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「上手すぎて嫌いになりかけた」リアルすぎる"モンスター妻"に大絶賛の嵐 人気女優の幅を広げた3年前の『名作』

  • 2024.11.7

青春、ラブコメ、医療、推理……。映画やドラマなど映像作品におけるジャンルは多岐にわたり、それらに出演する俳優も数多く存在する。自然と「この役者は刑事ものに出る」といったイメージがつきやすいものだが、どんな作品にもボーダーレスに溶け込む俳優がいることも事実だ。そのひとりが広瀬アリス。水曜ドラマ『全領域異常解決室』(フジ系列)に出演中の彼女の“リアルすぎる”演技が光っていた『知ってるワイフ』(2021/フジ系列)に再注目したい。

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(C)SANKEI

妻を変えたのは誰?リアルすぎる“モンスター妻”

2021年に放送されていたドラマ『知ってるワイフ』は、韓国ドラマのリメイク版。広瀬アリス演じる妻・澪と、大倉忠義演じる夫・元春が主人公の、タイムスリップラブストーリーだ。

高校生の澪と大学生の元春は、澪がバスの車内に財布を忘れたことをきっかけに出会い、交流を重ねていく。絵に描いたような天真爛漫さ、持ち前の明るくポジティブな性格の澪に惹かれた元春は、最初こそ彼女からのアプローチを拒んでいたが、次第に絆され、プロポーズする。誰もが憧れるような過程を経て夫婦となった二人だが、次第にその仲はギスギスと気まずくなっていき、もはや油さえもさせない状態に。

「家事と育児が大変そう? 誰のせいでそうなってんだよ、あんただろ!」などと鬼気迫る様子で叫び、元春の実家から送られてきたカニの足をダーツさながらに投げつけてみせる。『知ってるワイフ』第1話の、広瀬アリス演じる澪の様子からは、仲睦まじかった夫婦の面影は一ミリも感じられない。

おそらく意図的に、育児や家事のストレスで疲弊していく澪を、悪し様に描いているのだろう。そして、言葉の暴力を受ける元春に憐憫の目が向くように誘導されている。

本編では哲学者・ソクラテスの名言が引用され、良妻と結婚すれば幸せになり、悪妻と結婚すれば哲学者になる、といった言及までされている。澪という悪妻を持った元春は不憫な存在であり、哲学者のように現状を冷静に観察し、学びを得る思慮深い人間である、と印象付けたい意図が見える。

しかし、物語が進んでいくにつれ、妻をモンスターにしてしまったのは夫のせいなのでは、と価値観がひっくり返る瞬間が訪れる。

澪のあまりにもの変貌ぶりに憔悴した元春は、仲間内で「離婚したい」とぼやくほど心身ともに疲れきっていた。そんなとき、小池良治(生瀬勝久)から過去に戻れる不思議な500円玉を貰い受け、過去に戻る。澪と出会い、結婚する人生ではなく、同じ大学の後輩・江川沙也佳(瀧本美織)と夫婦になる未来となるよう、過去を変えるのだ。

結局、過去を変えた人生でも、元春と澪は知り合うことになる。しかし、モンスター化してしまう以前の澪が振り撒いていた愛嬌と笑顔を、あらためて間近に見ることになった元春は、自身を疑い始める。もしかして、澪を変えてしまったのは自分のせいなのでは? と。

同じ人物でありながら、過ごした時間や状況によってこうも性格が変化するという、曖昧な機微を表現してみせた広瀬アリスの生々しい演技。放送当時、その理不尽な物言いが話題となった『知ってるワイフ』だが、広瀬アリスの細やかな表現、七変化とも言える演技によって、さらに口コミが加速したと言えるだろう。SNSでも、「神がかっている」「演技が上手すぎて1話では嫌いになりかけた」「迫真の演技だった」と言った声も届いていた。

「静」「動」「陰」「陽」売りはオールマイティさ

『知ってるワイフ』のような、ファンタジー要素のあるラブストーリーはもちろん、『恋なんて、本気でやってどうするの?』(2022/フジ系列)、『マイ・セカンド・アオハル』(2023/TBS系列)、『366日』(2024/フジ系列)などの、青春ものや純粋ラブストーリーでも存在感を見せる広瀬アリス。

言わずもがな、2017年の連続テレビ小説『わろてんか』や『探偵が早すぎる』(2018/日テレ系列)ではコメディエンヌとしての才能も発露させ、「静」「動」「陰」「陽」どんなテイストの演技もこなすオールマイティな俳優として、地位を不動のものとしている。

水曜ドラマ『全領域異常解決室』で広瀬アリスが演じているのは、主人公・興玉雅(藤原竜也)率いる通称・ゼンケツに所属する、警察官の雨野小夢だ。

あえて控えめに、ニュートラルに近い女性像を保つことで、興玉のキャラクター性ならびに本作の「妖怪」「未確認生命体」「不可解な異常事件」といったキーワードの持つ夥しさを際立たせる役割も担っている。

このタイミングで、あえて『知ってるワイフ』を見返し、広瀬アリスの引き出しの数・幅広さをチェックしておくのも一興かもしれない。



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_