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「ゾクゾクする」「癖になる」藤原竜也の“叫ばない演技”が話題に 『新水曜ドラマ』で光る絶妙な魅力

  • 2024.10.16

俳優・藤原竜也といえば、映画『バトル・ロワイアル』シリーズ(2000,2001,2003)を始め、『デス・ノート』シリーズ(2006,2008,2016)、『カイジ』シリーズ(2009,2011,2020)など、叫ぶ演技が強い印象を残している。藤原竜也といえば叫ぶ、叫ぶといえば藤原竜也、と暗黙の了解が浸透しつつあったなか、動から静へと反転させた“叫ばない演技”も話題を呼びつつある。ドラマ『全領域異常解決室』で藤原が演じる興玉雅に「今回は叫んでない!」「冷静なお芝居も最高」「ゾクゾクする」「癖になる」と高評価が集まる理由は…?

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『全領域異常解決室』(C)フジテレビ

際立つ“声の妙味”を堪能

10月9日からスタートしたフジテレビ系列ドラマ『全領域異常解決室』。本作で藤原竜也が演じるのは、通称・全決(ゼンケツ)の室長代理である主人公・興玉雅だ。およそ人力とは思えない不可思議な難事件を解決へ導くため設置された、内閣も公認している歴史深い捜査組織である。

この興玉雅、実に淡々としていて、最初から最後まで冷静、一切叫ばない。藤原竜也ファンの視聴者にとっては、彼がいつ声の限り、喉が擦り切れるほど叫び出すか、待ちに待っていることだろう。しかし、叫ばない。興玉雅は徹頭徹尾、起こる物事に対してフラットに対峙する人物なのである。

叫ぶ藤原竜也も魅力的だが、もちろん、叫ばない藤原竜也の演技も絶妙だ。なんと言っても、彼の声が有している持ち前の妙味が存分に味わえる。深みと厚み、高いようであって低い独特の声音は、心地よく滋味をともなって響く。抑揚や緩急が極力抑えられているからこそ、その繊細な味わいを感じ取れる。わかりやすく刺激的ではない代わりに、わかる人間にこそわかる情感が鼓膜に浸透していく。

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『全領域異常解決室』(C)フジテレビ

藤原演じる雅が冷静沈着であればあるほど、どこかコミカルな可笑しみを漂わせるあたりも、彼にしか出せない趣だ。警視庁捜査一課・ヒルコ専従班の一人である荒波健吾(ユースケ・サンタマリア)が懸命に捜査概要を説明するも、自身の用が済んだとあらば、さっさと場を辞してしまう雅。今後も、この二人はまさに水と油のように、相容れない存在として反発しながら物語を動かしていくのだろう。

叫ばない藤原竜也の魅力は、他作品でも

叫ばない藤原竜也の演技を楽しむなら、映画『22年目の告白 -私が殺人犯です-』(2017)やドラマ『リバース』(2017)、『おいハンサム!!2』(2024)も勧めたい。

『22年目の告白 -私が殺人犯です-』は、2017年に公開された入江悠監督の韓国原案映画。藤原は、22年前に発生し、解決せず時効となってしまった連続殺人事件の犯人として、センセーショナルに名乗りを挙げた男・曾根崎雅人を演じている。刑事・牧村航を演じる伊藤英明とのW主演であること、意外性のある結末とも相まって話題となった。『全領域異常解決室』の雅と同じく、どこか感情をとらえられない、腹の底が見えない演技が作風ともマッチしている。

『リバース』は、湊かなえ原作の推理小説を連続ドラマ化した作品で、藤原が演じたのは主人公・深瀬和久。前述した『全領域異常解決室』や『22年目の告白』と比較すると、深瀬は冷静というよりはどこかオドオドとした、草食系と呼称したくなる一般男性である。過去に起こったとある事件を仲間同士で共有している負い目があり、どんどん外野からプレッシャーをかけられ、逃げ場を失い焦りを募らせる過程を生々しく表現した。

劇場版にもなった『おいハンサム!!2』では、佐久間由衣演じる伊藤里香と交流する男性・原さんとして友情出演している。良い意味で何の癖もなく、凪のようにただそこに存在している原さん。藤原竜也のニュートラルな演技を楽しめる稀有な作品だ。

叫ぶ藤原竜也と、叫ばない藤原竜也。俳優として容易にアイコン化させないのも、彼の演技力によるものか。オカルトとリアリティを絶妙なバランスで成立させた黒岩勉脚本を楽しみつつ、2話以降の『全領域異常解決室』がどんな難事件を描いていくのか凝望したい。



フジテレビ系『全領域異常解決室』10月9日(水)スタート!毎週水曜よる10時〜

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_