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予想外の展開に言葉を失う衝撃作、アニメ化でさらに話題に… 『チ。 』が大きな反響を呼ぶワケ

  • 2024.11.6

10月から放送がスタートし大きな反響を呼んでいるTVアニメ『チ。 ―地球の運動について―』。作家・魚豊による漫画を原作としており、「マンガ大賞2021」の第2位、「次にくるマンガ大賞2021」のコミックス部門第10位、「このマンガがすごい! 2022 オトコ編」の第2位、「第26回手塚治虫文化賞」など数々の漫画賞を受賞している話題作だ。本作はフィクションであり、登場する舞台や設定は現代の日本とは明らかに違う。しかし、胸を打たれ共感できる魅力がある。なぜ私たちは『チ。』という作品に共感できるのだろうか。

『チ。』の絶妙な世界観

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(C)魚豊/小学館/チ。 -地球の運動について-製作委員会

『チ。』の舞台となるのは、15世紀前半のヨーロッパの「P王国」だ。そこでは「C教」という宗教が中心となっており、天動説が当たり前のように信じられている。少年・ラファウたちが魅了された地動説は「C教」に反する考え方であり、研究する者は異端者として扱われ拷問を受けたり処刑されたりする。

モンスターや魔法が出てくるわけではないが、15世紀前半かつヨーロッパという舞台からすでに日本とはだいぶ違う。ひとつの宗教が浸透しており、考え方が違うと拷問や火あぶりを受ける“力づく”ともいえるようなやり方も現代の日本にはないものだ。

漫画やアニメは基本フィクションだ。本作も架空の舞台や設定をしたフィクションであるものの、突拍子もない展開やキャラクターは出てこない。現実と通ずる点も見つけられる。そんなフィクションとリアルの狭間のような絶妙な世界観によってつくられているのが『チ。』なのだ。

登場人物が抱く“星は美しい”という感情に共感

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(C)魚豊/小学館/チ。 -地球の運動について-製作委員会

では、なぜフィクションである『チ。』に共感できるのか。それは、登場人物が“星に魅せられている”という点で私たちの星に抱く感情と重なるからではないだろうか。

第1章の主人公である少年・ラファウは、もともと天文が好きであり、学者・フベルトと地動説を研究することでさらに星に魅了される。フベルトに脅迫されて「誰が行くか」と言っていたにもかかわらず結局星の観測地に向かったのも、ラファウの星に対する好奇心が勝ったからだろう。

ラファウが地動説を研究しているとばれて牢獄に入れられたとき、1人で考え事を始める。地動説に出会ってからの合理的でない自分の言動を振り返り、後悔のような気持ちを抱きそうになるラファウ。

しかし、そのときラファウは天井の窓から差し込む月明かりに気づく。「こんなに美しかったのか」星空の美しさに再び心を奪われたラファウは、裁判で「僕は地動説を信じてます」と宣言。彼のなかで固まった決意が、牢獄の小さい窓から見える星を見て握りしめる拳に表れている。

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(C)魚豊/小学館/チ。 -地球の運動について-製作委員会

また、第2章にて登場した代闘士であるオクジーの同僚・グラスも、星に魅せられたひとりだ。グラスは前向きな人物で“超”がつくほどネガティブなオクジーを励ますが、実は彼には暗い過去があった。疫病で家族みんなを亡くし、自分の人生も終わらせようとしていたのだ。

そこでグラスが出会ったのが星の観測だ。絶望していた彼を救ってくれたのが、完璧な動きをしていた星の美しさだった。ラファウもグラスも、星の美しさに魅了され希望を見出していたのだ。

きっと誰しも星を見て“美しい”と思う瞬間があるだろう。世界が違ったとしても星には変わらない美しさがあり、希望を重ねることができる。だからこそ、私たちと同じように星に魅了されたキャラクターが登場する『チ。』に共感できるのだ。

チ。 ―地球の運動について―
ABEMAにて毎週土曜日夜24時10分より無料独占・見放題最速配信
放送後1週間、最新話を無料で視聴できる。
[番組URL]https://abema.tv/video/title/568-32
【(C)魚豊/小学館/チ。 -地球の運動について-製作委員会】


ライター:まわる まがり
主にアニメについての記事を書くライター。コラムやレビュー、映画の作品評を手がける。X(旧Twitter):@kaku_magari