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『海のはじまり』最終回にSNSで大きな反響「ハッピーエンドなの?」「深すぎる」明らかになった"一つの答え"

  • 2024.9.24

月9『海のはじまり』が9月23日に最終回を迎えた。南雲水季(古川琴音)が残した娘・南雲海(泉谷星奈)を引き取って“親”になろうとする主人公・月岡夏(目黒蓮)を追った物語。夏の元恋人・百瀬弥生(有村架純)が示した、苦しい心を少しでも楽にする方法に注目が集まるとともに、このドラマが投げかけてきた「人はいかにして親になるのか?」といったテーマに、一つの答えが提示された。
また、最終回を見届けた視聴者からは、「ハッピーエンドなの?」「正解はわからない」「人によって違う感想かも」「深すぎる」などといった声も届き、放送後も盛り上がりを見せている。

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(C)SANKEI

楽になるには「忘れない」こと

海と夏の二人暮らしは、開始した途端に上手くいかなくなった。夏と暮らす家を飛び出し、元いた南雲家へと帰る海。彼女が抱えていた根本的な寂しさは、ひたすら水季を「もういない人」と定義しようとする夏と相容れず、水季の話を共有できないもどかしさによるものだった。

海は、母を知る人と、母のことを話したかったのだ。こういう人だったね、ああいうことをしたね、一緒にこんなところに行って、こういうことが起こって……と、思い出を共有したかっただけ。一緒に寂しくなって、一緒に悲しくなりたかっただけ。

きっと夏は、そんな海の心情をなんとなく察しつつ、それでも、前を向いて進むためには水季のことを忘れるしかない、と思い込んでいた。過去に固執することなく、いまの「夏と海の二人暮らし」に集中することでしか、健やかに生きていく道は拓けない、と考えていたのかもしれない。

それはきっと、夏の過去にも関係がある。彼は3歳のころに両親が離婚していて、それから長らく実父には会わない生活が続いた。夏の母・月岡ゆき子(西田尚美)は、なるべく元夫の話をせず、その存在を夏に忘れさせようとした。だからこそ夏は本能的に、もういない人・会えない人のことは「忘れる」のが、楽に生きていける方法だと思ったのだろう。

海から夏への伝言を受け取った弥生は、夏に伝える。「頑張って忘れようとしたら、もっと寂しくなった」と。弥生も、大切な存在を喪失した側の人間だ。失った命のことを考えながら生きてきた。そんな彼女の言うことだからこそ、重みを伴って届く。「だから、いたっていう事実は大事にしようと思ったの」「忘れないことにしたの」「忘れなくていいって思うと、安心して忘れる時間をつくれたの」と。

無理に忘れようとするからこそ、心が反発する。大切な人のことを思って苦しくなり、寂しさから抜け出せないなら、いっそ「忘れない」と決めること。弥生が発したメッセージは、大切な人を失い、そのどうしようもない寂しさを抱えながら生きるすべての人にとって、示唆を与えるものになり得る。

人はどうやって親になる?

このドラマが一貫して投げかけてきたのは「人はいかにして親になるのか?」というテーマだった。昔の恋人が子どもを産んでいて、その子どもはすでに7歳で、血縁関係としては父親にあたることがわかった夏を主人公に、親でない状態から親となる道筋を丁寧に掘り出した物語だった。

終盤、水季が夏に宛てた手紙の内容が明かされる。そのなかに、こんな一文があった。「始まりは曖昧で、終わりはきっとない」。これが「人はいかにして親になるのか?」に対する答えだ。

子どもが産まれた瞬間から、あるいは「いる」と知った瞬間から、人は自動的に親になるのか? きっと、そうではない。自覚が芽生えたからといって親にはならない。子どもが健やかに育っているからといって、親であることにはならない。

明確な線はなく、それはいつの間にか始まっているのだ。気づいたら、時を重ね、交わした言葉と共有した体験の分だけ、「親である」と感じる瞬間が降り積もっている。その繰り返しなのだ。親になった瞬間が曖昧なのと同時に、親でなくなる境目もないのである。ある日突然自覚して、過ぎ去った時間を振り返ってはさまざまな思いを寄せる。それが親子関係なのかもしれない。

これからも、夏と海は順風満帆とは言えない二人暮らしを続けていくのだろう。ときにぶつかりながら、周囲の手を借りながら、終わることのない親子の関係を続けていく。水季との思い出を共有し、ともに寂しがることを覚えた二人なら、きっと大丈夫だ、と思える。



フジテレビ系 月9ドラマ『海のはじまり』毎週月曜よる9時

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_