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「脚本を直してほしい」マンガ原作者の思いはワガママなのか?【推しの子】に深みとリアリティを与えた人物

  • 2024.8.23
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(C)赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会

現在放送中のTVアニメ『【推しの子】』にて、第2期から登場して大きなインパクトを与えた「東京ブレイド」の原作者・鮫島アビ子。彼女は舞台の稽古を見に来たときに、脚本を全部直せないかと言い放ったのだ。開幕早々に波乱を巻き起こしたアビ子は、第2期の序盤において最重要人物といってもいい。そして、彼女が抱える葛藤を知ったとき、魅力がぐんと増すキャラクターでもある。

アビ子が『【推しの子】』に与えた深みとリアリティ

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(C)赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会

脚本を全部直してほしいというアビ子の衝撃発言は、脚本家・GOAの頭をギリギリと悩ませる。GOAは作品と真剣に向き合い、ベストを尽くして脚本を書き上げたからだ。しかし、自分の解釈と食い違う原作改変を許せないアビ子は怒り心頭。

原作者と脚本家がもめる原因は、2人を仲介する多くの大人が関係している。まるで伝言ゲームのようにお互いの意図が歪んでしまった結果、アビ子の理想とはかけ離れた脚本になってしまったのだ。

メディアミックスで起こるすれ違いは現実世界でも珍しくない。悲しい事件に繋がることもある。“原作改変”というメディアミックス作品を楽しむ私たちにも身近な問題を突きつけたアビ子は、『【推しの子】』という作品に深みとリアリティを与えた。

人間味あふれるアビ子に愛着が湧く

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(C)赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会

アビ子はどのような人物なのだろうか。彼女は「今日は甘口で」の原作者・吉祥寺頼子(きちじょうじよりこ)と食事に行ったとき、「歯ブラシ2つ使えば2倍の速度で磨けるじゃないですか」と真面目な顔で“ダブル歯磨き”をしていた。クセが強い変人だが、それが累計5000万部を突破する「東京ブレイド」を生み出した天才漫画家たる理由でもあるように感じる。

また、自分が描いたほうが早いからとアシスタントをクビにし、2カ月前からアビ子たった1人で原稿を描いていたと話すシーンがある。けっして褒められたことではないが、そんな状況で週刊連載の漫画を描き続けられたアビ子はやはり天才なのだろう。

「東京ブレイド」がきっかけで増長してしまったアビ子。しかし、頼子とのやり取りのなかで彼女の胸中が語られる。アビ子は不器用なだけで、本当はピュアでまっすぐな人物なのだ。他人とのコミュニケーションが上手く取れず、葛藤していた。その不器用さが人間らしく、いつの間にか感情移入してしまう。

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(C)赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会

頼子から「歩み寄りなさい」とアドバイスをもらったアビ子は、GOAと通話しながら脚本の修正作業に入る。すると、お互いのすれ違いが解消され、2人の雰囲気はとても和やかに変化した。

GOAが脚本を書いた舞台を「だいぶ好きでした……」と正直に伝えたのも大きいのだろう。楽しくなってしまった2人によって尖った脚本が仕上がったが、アビ子の成長が感じられるシーンとなった。

序盤のアビ子を見て、感情的でわがままな人物に映った視聴者も少なくないだろう。だが、彼女は不器用な性格がゆえに思い悩むとても人間味あふれるキャラクターなのだ。回を追うごとに移り変わる彼女の印象が面白く、愛着も沸いてくる。アビ子が赤裸々に向き合った「東京ブレイド」の舞台がアクアたちによって成功することを願ってやまない。

【推しの子】
ABEMAでは『【推しの子】』第2期を毎週水曜夜11時より地上波同時・無料最速で配信。
放送後1週間、最新話を無料で視聴できる。
[番組URL]https://abema.tv/video/title/25-240?s=25-240_s2&eg=25-240_eg0
【(C)赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会】


ライター:まわる まがり
主にアニメについての記事を書くライター。コラムや映画の作品評、マンガのレビューを手がける。
X:@kaku_magari