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20代から40代を見事に演じ分けた“松村北斗”の新たな“代表作”、ベテラン女優と肩を並べる卓越した名演技

  • 2025.2.10

塚原あゆ子監督、坂元裕二脚本、松たか子主演の映画『ファーストキス  1ST KISS』。突然、事故で夫が亡くなった後、タイムトラベルという不思議な体験をする主人公の、夫への2度目の恋を描く、時を超えたラブストーリー。本作で、松が演じる主人公の夫を演じる松村北斗は、40代の現在と、20代の過去を見事に演じ分けている。 ※この記事にはネタバレが含まれています。

人気脚本家が完成を楽しみにしていた映画

すでに、当サイトにて坂元と塚原についてのコラムを執筆し、詳しく紹介したが、『ファーストキス  1ST KISS』は、『花束みたいな恋をした』でオリジナルの映画脚本を書き下ろして大ヒットさせた坂元が、ドラマ『カルテット』や『大豆田とわ子と三人の元夫』でもタッグを組んだ松主演で、一生の思い出になる映画を作るつもりで執筆したという作品だ。

今回、『ラストマイル』『映画 グランメゾン★パリ』が大ヒットしている塚原と組むにあたって、坂元は「塚原監督の無尽蔵のエネルギーとアイデアに出会って、自分自身完成した映画を観る日が楽しみで仕方ありません」とコメントしている。

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(C)2025「1ST KISS」製作委員会

そんなヒットメーカー2人による、『ファーストキス 1ST KISS』は、松と松村が夫婦役で共演することも大きな話題となり、公開前から注目を集めていた。

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(C)2025「1ST KISS」製作委員会

恋する2人をキュートに好演する松たか子と松村北斗

硯駈(すずり・かける/松村北斗)と出会ったカンナ(松たか子)は、恋に落ちて結婚するも、15年の時が流れる間に夫婦間にすれ違いが生じ、食事も一緒にとらなくなっていた。細かいことにケチをつける駈に苛立つカンナは、駈が勝手に新しいベッドを買って、寝室も別にしたことで、夫への気持ちが冷めていった。それは駈も同じで、2人は離婚を決意する。

そんな矢先、駈が事故で亡くなってしまう。カンナは悲しいという実感もわかないまま、呆然と毎日を過ごす中、車を運転している時に15年前にタイムトラベルする。そこで、まだカンナを知らない若き日の駈と出会い、彼に2度目の恋をすることに。

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(C)2025「1ST KISS」製作委員会

カンナは40代の姿だが、彼女にどんどん惹かれていく20代の駈を演じる松村が、ものすごくキュート。会ったばかりなのに好きにならずにいられないという、気持ちが高まっていく様子が伝わってきて、思わずカンナと一緒に駈に恋をしてしまう。カンナの愛らしさも、松が魅力的に演じることで説得力が増し、ほほ笑ましい2人を見ていると頬がほころぶ。

一度は夫への気持ちが冷めてしまったカンナだったが、駈を好きだったことを再確認し、何とかして彼が死なない未来にするために、過去を書き換えようとする。

駈が以前とは違う行動を取るように誘導して過去を変え、現在に戻るカンナだったが、駈は亡くなったまま……。カンナは何度も同じように車を運転して、タイムトラベルを繰り返し、過去の書き換えにトライするが、なかなかうまくいかない。

大きな期待を抱かせる松村北斗の名演技

体を張ってタイムトラベルのシーンを熱演する松と、40代のカンナとのデートを繰り返すも、毎回パターンが変わる20代の駈に扮する松村。主演の松は、コメディ演技も秀逸で、観客をグイグイ引き込む名女優だが、松村も自然な演技で駈を体現し、松との素晴らしいコンビネーションを披露している。

強く惹かれ合って結婚し、お互いを大好きな新婚時代を過ごしたカンナと駈。年を重ねるうちに、だんだんと気持ちがすれ違っていき、40代になっていく経過を、現在29歳の松村は、非常に巧く演じていると感じた。もちろん、20代のシーンを演じる松に違和感がないのはさすがで、そんな彼女と本作で肩を並べる名演技を見せた松村は、今後に大きな期待を抱かせる俳優として、さらに飛躍を遂げたと思う。

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(C)2025「1ST KISS」製作委員会

特に、駈側の真意が綴られるラストには、松村の演技に心を奪われた。松村の出演ドラマ『アンサンブル』のコラムにも書いたが、彼の声はとても聞き心地が良く、その美声で駈の気持ちが語られるシーンは、観客を釘付けにするに違いない。

さらに魅力が広まることに期待できる映画

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(C)2025「1ST KISS」製作委員会

2024年に公開された、上白石萌音とのW主演作『夜明けのすべて』で、松村は「第98回キネマ旬報ベスト・テン」の主演男優賞に輝いた。本作での松村の繊細な演技は高く評価され、多くの人の心を掴んだのだと思う。彼の代表作になったことは間違いないが、主演作ではない『ファーストキス  1ST KISS』も、また1本代表作が増えたと言っていいのではないだろうか。それくらい、卓越した好演を披露していると感じた。

筆者は、ジュニア時代から松村を見てきて、彼がSixTONESの一員としてデビューするまで、さまざまな苦労や悔しい思いをしてきたことを知っている。今では、アイドルとして大人気となり、SixTONESの5大ドームツアーも開催中の松村。声優としても成功を収め、俳優としても着々と実績を残している彼は、まだまだ天井知らず。『ファーストキス  1ST KISS』が多くの人に届いて、さらに「俳優・松村北斗」の魅力が広まることを期待したい。



『ファーストキス  1ST KISS』2025年2月7日(金)全国東宝系にてロードショー
出演:松たか子、松村北斗、吉岡里帆、森七菜、リリー・フランキー ほか
脚本:坂元裕二
監督:塚原あゆ子
配給:東宝
公式サイト:https://1stkiss-movie.toho.co.jp/
(C)2025『1ST KISS』製作委員会

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(C)2025「1ST KISS」製作委員会

ライター:清水久美子(Kumiko Shimizu)
海外ドラマ・映画・音楽について取材・執筆。日本のドラマ・韓国ドラマも守備範囲。朝ドラは長年見続けています。声優をリスペクトしており、吹替やアニメ作品もできる限りチェック。特撮出身俳優のその後を見守り、松坂桃李さんはデビュー時に取材して以来、応援し続けています。
X(旧Twitter):@KumikoShimizuWP