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夢を諦めない"おっさん主人公"放送前から注目されたアニメ『怪獣8号』とは何だったのか─?

  • 2024.7.14

6月29日(土)に最終話を迎えたTVアニメ『怪獣8号』。ある日突然怪獣の力を手に入れた日比野カフカが、日本防衛隊に入隊して怪獣と戦いを繰り広げるバトル作品だ。放送前から“覇権級”と注目を集め、第1話にて30代となり夢を諦めてしまったカフカのやるせなさや、幼馴染の防衛隊隊長・亜白ミナとの約束を描いた。防衛隊に再び挑戦する決意をした直後に怪獣になってしまうまさかの展開によって、最高のスタートを切った本作。最終話まで走り抜けた『怪獣8号』とは何だったのか。“怪獣”のキーワードから作品を紐解いていきたい。

恐怖を煽るグロテスクな怪獣デザイン

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(C)防衛隊第3部隊 (C)松本直也/集英社

『怪獣8号』において一番の見どころといっていいのが、怪獣との大迫力のバトルシーンだ。普通の人間なら敵うはずがないと思わせる圧倒的なスケール感を持った怪獣は、その巨大さからくる恐ろしさをシンプルながらリアリティたっぷりに描いて見せた。また、怪獣デザイン&ワークスを担当するのは『エヴァンゲリオン』でおなじみのスタジオカラー。怪獣のグロテスクなビジュアルは、戦闘によって血や肉片が飛び散る描写も相まって恐怖を煽る。

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(C)防衛隊第3部隊 (C)松本直也/集英社

戦闘シーンの作画も迫力満点で、怪獣8号が繰り出す攻撃の重みや力強さを見事に表現した。バリバリとまばゆく青白い光を放ちながら拳で殴る怪獣8号の姿は、怪獣の見た目ながら主人公そのもの。怪獣を倒した後に血の雨が降ってくるシーンなど、動的な激しさだけではない場面も印象的だった。

怪獣と胸が熱くなる人間ドラマ

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(C)防衛隊第3部隊 (C)松本直也/集英社

市川レノをはじめとしたカフカと防衛隊員の友情も、観ていて清々しい。親しみを込めてカフカをおっさんと呼ぶ古橋伊春からは、防衛隊員の仲の良さを感じる。また、人柄に惹かれてカフカを慕うようになった市川は、怪獣8号の正体を隠すように必死に釘を刺すなど、カフカのことを心の底から案じている。加えて第11話にて怪獣8号として囚われてしまったカフカに「戻ってくるって信じてますから」とまっすぐな目で伝え、カフカへの絶対的な信頼がうかがえる市川。先輩と後輩という関係以上に、ひとりの人間として市川はカフカを認めているのだ。

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(C)防衛隊第3部隊 (C)松本直也/集英社

また、カフカとミナの幼馴染であり隊員と隊長である関係性も面白い。共に戦うと誓った2人の間には、いつの間にか大きな差が生まれていた。かつて交わした約束も忘れているのかと思いきや、カフカと同じくずっと覚えていたミナ。囚われの身になったカフカと2人になったとき、初めて敬語をはずしてカフカに語りかける。「カフカくんらしいなって」「第3部隊に君を敵だと思ってるヤツなんてひとりもいないよ」

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(C)防衛隊第3部隊 (C)松本直也/集英社

“カフカくん”呼びにさえもぐっときてしまうのは、これまでの威厳のある隊長らしい姿とのギャップもあるのだろう。「俺はまだ……お前の隣目指していいのかな?」「うん。ずっと待ってる」という会話からは、思わず胸が熱くなる“人間ドラマ”をビシビシと感じてならない。

日比野カフカと怪獣8号

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(C)防衛隊第3部隊 (C)松本直也/集英社

アニメ前半でカフカは怪獣であることを隠しつつ防衛隊員として活躍。終盤では正体が発覚して人間と怪獣の間で揺れ動くカフカを描いている。怪獣であることをなんとかごまかす様子もコミカルだったが、防衛隊長官・四ノ宮功とぶつかり合う第12話では雰囲気が変わりシリアスさが増した。年齢にも負けず再び夢を追い始めたり、怪獣8号であるがゆえに人間だと認めてもらえず葛藤したり……。カフカの逆境に立ち向かう姿は、おっさんと呼ばれる年齢なんて関係ないと思わせるカッコいい主人公そのものだ。

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(C)防衛隊第3部隊 (C)松本直也/集英社

最終話にて、怪獣8号は戦力にするために生かすと四ノ宮が宣言した。しかし、上層部の人間は反対派がほとんどで、カフカの身は危険にさらされたまま。未知なうえに不気味な存在である怪獣9号が何を目的に動いているのかもまったく明かされていない。『怪獣8号』は続編が決定している。カフカはいったいどうなってしまうのだろうか。第2期の続報を楽しみに待ちたい。

怪獣8号
ABEMAにて第1話を無料配信中
[番組URL]https://abema.tv/video/title/19-190
【(C)防衛隊第3部隊 (C)松本直也/集英社】


ライター:まわる まがり
主にアニメについての記事を書くライター。コラムや映画の作品評、マンガのレビューを手がける。X:@kaku_magari