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アニメ【推しの子】で描かれた「原作改変」が話題「リアルすぎて鳥肌」「現実でもあった」

  • 2024.7.18

「脚本って今からでも直してもらえますか?」「どのあたりっていうか、その、全部」星野アクアたちが挑む舞台「東京ブレイド」の原作者・鮫島アビ子が言い放った衝撃的な一言で幕を閉じた、前回の『【推しの子】』第12話。波乱の予感を感じさせる展開に、SNSでは「ゾクゾクした」「佐倉綾音さんの演技がハンパない」と大きな反響が。

第13話では、アビ子と脚本家であるGOAの衝突と苦悩が描かれた。アビ子が想像していた脚本とGOAが書いた脚本が食い違っており、アビ子が大激怒したのだ。「センスない!修正も的外れ!エンタメを理解してると思えない!」怒り心頭のアビ子の言葉に胸が苦しくなる。なぜなら、GOAは手抜きしていたわけではなく、全力で脚本を書き上げていたからだ。

脚本に齟齬が生まれてしまった「伝言ゲーム」

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(C)赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会

GOAは「東京ブレイド」の原作を本誌で1話から読んでおり、無茶な注文にも熱が出るほど頭をひねって対応していた。いい舞台になるように、魂を込めて取り組んでいたのだ。しかし、結果的にアビ子を激しく怒らせてしまったのは、第13話のサブタイトルでもある「伝言ゲーム」が原因だ。

アビ子は以前から何度も脚本を修正してほしいと要望していた。だが、怒りに任せて送ったアビ子の修正指示を、GOAに伝わるまでに仲介者がマイルドに改変。原作者と脚本家の間には、担当編集やライツ、プロデューサーなど何人も加わっている。

まさに「伝言ゲーム」の要領で、アビ子の意図が上手くGOAまで伝わらなかったのだ。ゆえに、GOAは真剣に修正対応していたが、アビ子の思っていたような脚本が仕上がらなかった。

それぞれがベストを尽くしたのに齟齬が生まれてしまったのは、悲しくやるせない結果としか言いようがない。アビ子に脚本を直してほしいと言われたGOAの絶望した表情は、真摯に仕事をしていただけに心にズンとくるものがある。脚本を全部書かせてくれないなら舞台の許諾を取り下げるとまで言い始めたアビ子の怒りは、収まる気配がない。

いきなり本領発揮?リアルな現場を描く『【推しの子】』

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(C)赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会

アビ子とGOAのどちらの立場に立っても共感できるのが面白い。アビ子は自分のつくった「東京ブレイド」を愛しており、登場人物にも思い入れがある。セリフがそのキャラクターの性格とまったく違うものだったら、怒るのも当然だろう。作品を汚されてしまったと感じてもおかしくない。

また、GOAは脚本家の地位は低いとアクアたちにこぼし、作品がつまらなくても面白くても評価されにくい現実を語る。もちろん、今回の舞台にも必死に取り組んだ。

「原作者と脚本家は今日もどこかで揉めているのだ」という言葉がとても印象的だ。「リアルすぎて鳥肌」「現実でも似たことがあったしタイミングすごい」とSNSでも声があがった。原作者と脚本家の衝突は現実でも珍しくない。そして、メディアミックスの難しさを描いた第13話は、芸能界の裏側を描く『【推しの子】』の本領をさっそく観られたようでうれしくなる。

次回は、アクアと黒川あかねが演劇についてよく知るために舞台を観に行くようだ。「演劇は映像より上位の体験型コンテンツだって教えてあげる」と自信ありげに語るあかね。『【推しの子】』第2期は、これからますます演劇のディープな世界へと突入する。

【推しの子】
ABEMAでは『【推しの子】』第2期を毎週水曜夜11時より地上波同時・無料最速で配信。
放送後1週間、最新話を無料で視聴できる。
[番組URL]https://abema.tv/video/title/25-240?s=25-240_s2&eg=25-240_eg0
【(C)赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会】


ライター:まわる まがり
主にアニメについての記事を書くライター。コラムや映画の作品評、マンガのレビューを手がける。X:@kaku_magari