外の気温が高くなると車内の温度はどう変化する?
5月も中盤を迎え、最高気温が30度に迫る暑い日も増えてきました。
これからさらに暑くなる夏には、子どもが駐車中に高温になった車内に置き去りにされてしまい、その結果熱中症で亡くなってしまうという痛ましいニュースを毎年のように目にします。
ところで、外気温が高温になると車内の温度はどのように変化するのでしょうか?
JAF(一般社団法人 日本自動車連盟)が過去に実施した「ユーザーテスト」の驚きの結果をもとに、自動車生活ジャーナリストの筆者が解説していきます。
外気温23℃でもダッシュボードは70℃以上にもなる!
【測定箇所別・ピーク時の温度と時間】
(1)ダッシュボード付近 …… 70.8℃(時間:11時50分頃)
(2)車内温度(運転席の顔付近) …… 48.7℃(時間:14時10分頃)
(3)フロントガラス付近 …… 57.7℃(時間:11時50分頃)
※測定日の外気温……最高23.3℃(時間:13時40分頃)
なんと!ダッシュボード付近は最高70.8℃、運転席付近では48.7℃にまで上昇したのです。
実験のために用意した炭酸飲料は熱で変形し、破裂したものもありました。
絶対やめて!暑い日に絶対に車内に放置NG
①子ども・ペット
短時間でも絶対に車内放置してはいけない存在…それは、言わずもがな子どもです。自分でドアを開けたり窓を開けたり、暑さを訴えられない赤ちゃんならなおさらです。GWの時期でも車内放置による重症、死亡事故が発生しています。同様にペットの車内放置も死の危険があります。
②炭酸飲料
炭酸飲料は車内が50℃前後になると変形したり破裂する可能性があります。とくに、窓に近いエアコン吹き出し口に置いているカップホルダーは要注意。走行中はエアコンで冷やされていますが、エンジンを切ってエアコンがとまれば直射日光を浴びて温度はぐんぐん上昇。
破裂して中の液体が電装系にがっつり掛かると深刻なダメージを受ける可能性があります。
③ETCカード
車によってはETC車載器がダッシュボードのど真ん中にセットされている場合があります。「JAFユーザーテスト」でも結果が出ていますが、外気温23度でもダッシュボードは70度以上に!車載器に入れっぱなしのカードは長時間70度前後の高温に晒されることになり、熱に弱いICチップ部分がダメージを受ける場合があります。ETCゲートに近づいても反応しなくなり、ゲートが開かないトラブルに見舞われる恐れがあります。その際、後続車から追突される危険も。
④モバイルバッテリー/スマホ
バッテリーが熱を持つと、劣化の原因になるばかりか、高温状態にさらされていると発火や爆発の危険も出てきます。とくに、劣化した状態や品質の低いモバイルバッテリーでトラブルが多発する傾向にあるので最高で70度以上にもなるダッシュボードにモバイルバッテリーやスマホを置き忘れてしまうことは絶対にやめましょう。バッテリーを使ってない時、高温の場所に置いておくだけでもトラブルの原因となります。スマホでは高温注意の警告が出ますし、冷やさない限り一部機能を除いて使用不可になります。
⑤ライター/スプレー缶
消費者庁が2017年に警告していますが、可燃性の高圧ガスが充てんされているライターやスプレー缶は、車内に放置すると破裂の危険があります。40度以上の場所に置くことは厳禁です。同様に冷却スプレーや制汗スプレー、ヘアスプレー、カセットボンベなども危険です。60度以上で膨張がはじまり缶の内圧が高まって70度以上で爆発。炎が広まり命の危険があるほどの重大な事故となります。
⑥消毒用アルコール(60%以上)
2020年4月に東京消防庁が消毒用アルコールの車内放置に対して注意喚起をしています。車内温度が高温になると可燃性蒸気が発生し、車内で火気を使用すると即座に引火し爆発の危険も出てきます。なお、消毒用アルコールは濃度60%以上で消防法上の「危険物」に該当しますので、取り扱いには注意が必要となります。
消毒用アルコールから発生する可燃性蒸気は空気より重く気づかないうちに低所に滞留していることもありますので取り扱う場合には十分な注意が必要です。
太陽の向きにも気をつけて
野外の駐車場に車を長時間停める場合は太陽の向きにも要注意です。
朝、車を停めたときには外気温も低く車内が50度以上になるなんて想像もできない状態だったかもしれませんが、太陽が昇るにつれて気温はあがりますし、日光の差し込む方向も変わってきます。
停めたときは樹木や建物のカゲになって日は当たっていないから油断していたら、夕方、車に戻ってきたら大惨事…なんてことも。
熱で危険が発生するようなものがあればひとまずトランクに避難させましょう。なお炎天下ではグローブボックスの中も50度以上になることがあります。
大学卒業後、日刊自動車新聞社編集局および出版局で編集記者を7年3か月務めた後、1995年からフリーランスへ。2000年に第一子出産後は、妊婦のシートベルト着用やチャイルドシート着用の普及啓発活動を全国の小児科医、産科医とともに行い、2008年に道路交通法シートベルト教則の改訂を達成した。現在は、Yahoo!ニュースなどに配信されるメディアの記事を年間300本以上寄稿。専門分野は海外(中国と北米、ロシアが中心)のクルマ事情。海外で人気の日本車や中古車、クルマ好きから歩行者まで車に関わるすべての人々に対して役立つテーマを取材、執筆。自動車盗難、交通事故、子どもの安全、クルマにまつわるトラブルなど、独自企画、独自取材の記事が95%。BIGMOTOR問題に関しては大手メディアが報道合戦を始める前から取り組んでおりテレビ、ラジオの出演も多数。