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「戦力外通告の平均年齢は27.1歳」合格率7.6%の超難関を突破し、第二の人生を歩む「元巨人左腕」の"努力家"すぎる人生

  • 2024.4.23
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出典:PIXTA

競技者の中でも一握りの選手しか就くことができないプロ野球選手という職業。

華やかな世界というイメージが先行しがちですが、現役生活の平均は約7年。4月22日に日本プロ野球機構が発表した「2023年戦力外/現役引退選手の進路調査結果」では、戦力外通告を受けた平均年齢は27.1歳と想像以上に厳しい世界でもあります。そのため、引退後のセカンドキャリアで苦労する選手が多いのも事実。人気スターや実績を残した選手は引退後も解説者や指導者としてプロ野球の世界に携わることができますが、そうでない場合は一般企業への就職を余儀なくされるため、30歳前後になって初めて社会を知るという選手も少なくありません。

このように現役の選手にとっては不安に感じるセカンドキャリアですが、引退後に異例の転身を遂げたプロ野球選手がいます。その人物は2020年まで東北楽天ゴールデンイーグルスに在籍していた池田駿氏。昨年公認会計士という狭き門に合格したことで注目を浴びました。プロ野球選手から公認会計士になるまで一体どのような道のりがあったのでしょうか。池田氏の人生を振り返ります。

【プロ野球選手としての実績は?】

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写真:SANKEI

池田駿氏はやや遅咲きの選手。社会人のヤマハ硬式野球部で2年間プレーした後、2016年にドラフト4位で読売ジャイアンツから指名を受けます。この時既に24歳。即戦力として1年目から見事に開幕一軍入りを果たすと33試合に登板。防御率3.35と中継ぎとして安定感のある投球を披露しました。防御率3.35と中継ぎとして安定感のある投球を披露しました。

174cmと投手としては上背のある方ではなく、常時140キロ台後半の投球で、スライダーとチェンジアップの精度に優れた左腕でした。また、投球時に独特のステップで相手打者のタイミングをかわす術も持っており、翌2018年には念願のプロ初勝利をマークします。

左の中継ぎとして活躍が期待されましたが、3年目にシーズン初登板となった阪神タイガース戦で満塁本塁打を浴びてからは精彩を欠くようになり以降低迷。2020年にはトレードで東北楽天ゴールデンイーグルスに移籍しますが、ルーキーイヤーの勢いは取り戻せず、わずか在籍2年で現役引退となりました。

【公認会計士を目指すことになったきっかけ】

元々数字が好きで将来的には数学の教員になる道も視野に入れていたという池田氏。個人事業主であるプロ野球選手には税理士が付くことが一般的ですが、プロ一年目のシーズンオフに税理士から税金の講義を受けたことがきっかけで税理士と近い関係にある公認会計士という職業に興味を持つようになりました。

プロ野球選手としての限界を感じ始めていた2021年の開幕前のキャンプ時から本格的に勉強を開始。練習の前後や就寝前の時間を利用し、時には球場のロッカーでテキストを読み込むなど空き時間を使って勉強を続けます。一部の選手からは「野球に打ち込むべき」という声もあったようですが、ブレることなく同年オフには自ら球団へ退団を申し入れた。引退後は妻の実家に約2年間身を置いて貯金を切り崩す生活でしたが、一日10時間の猛勉強の末2023年11月に見事試験に合格「うれしさはドラフト以上」という喜びのもと第二の人生がスタートしました。

【超難関!公認会計士は狭き門】

公認会計士試験は難関資格として有名で合格率は約10%ほど。2023年の試験においては7.6%であることが公表されており、限られた人しか就けない職業であることが分かります。公認会計士とは監査と会計の専門家であり、企業が作成した財務諸表などを監査(チェック)することが仕事。健全な経済活動を保護する役割を担い「資本市場の番人」とも言われる存在です。一般的には高収入が期待できる職業として認知されており、試験においては学生や20代の若い層が受験者の大半。最初は監査法人に勤務することが多いですが、経験を積んだ後に個人で独立するパターンもあります。

【プロ野球選手出身の公認会計士としては2人目】

晴れて公認会計士試験に合格した池田氏。現在は受験生時代に利用していた予備校の「CPA会計学院」で講師をしています。元々教師の道も考えていた池田選手にとって生徒達に教えることはやりがいを感じるでしょう。また、自身の経験を振り返って、ゆくゆくは現役選手のセカンドキャリアの相談窓口や税務申告のサポートなどプロ野球との接点もつくりたいと考えているようです。

ちなみに、プロ野球選手から公認会計士に転身した例は池田選手で実は2人目。1人目は奥村武博さんです。奥村さんは元阪神タイガースの選手。1997年にドラフト6位で入団するも4年間在籍で一軍登板はゼロと苦難のプロ野球人生を送りました。引退後の2013年に公認会計士試験に合格し、現在はアスリートのキャリア形成を支援する一般社団法人アスリートデュアルキャリア推進機構で代表理事を務めるなど社会で活躍。自身と同じキャリアを辿る池田選手とも交流を深めています。


※2023年4月16日時点での情報です
※現在現役・引退をした選手に関わらず敬称は「選手」で統一しています。

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