【プロ野球ドラフト】中日が1位指名した"草加勝"はどんな選手？人気野球ライターが解説

「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンＤ」で、中日に1位指名された草加勝（くさか しょう）とはどのような選手なのか、人気野球ライターが特徴をご紹介いたします。

草加勝（亜細亜大学）投手 - 右投右打

抽象的な表現になってしまうが、「生命力のある投手」だ。亜細亜大という特殊なチームで絶対的エースに君臨し、来る日も来る日もマウンドに立つ。身長182センチ、体重75キロと細身ながら、大きな破綻なく投げ切れる実力派だけにプロでも早い段階で戦力として見込めそうだ。

最大の特徴は最速153キロをマークする快速球。スピードがあるだけでなく、打者の手元で伸びる球質で空振りが奪える。力感のない腕の振りにもかかわらずボールが伸びてくるため、初見の打者は面食らうことうけあいだ。さらにカーブ、スライダー、ツーシームと変化球を駆使して緩急を使えるのも特徴だ。

先述したように、亜細亜大は普通の大学野球チームではない。日々厳しい修練を積み、技術的にも精神的にも高いレベルが要求される。東浜巨（ソフトバンク）や九里亜蓮（広島）など、亜細亜大出身の投手には名状しがたいしぶとさがある。草加はまさに亜細亜大の生命力の系譜を受け継ぐエースなのだ。

今春終了後に生田勉前監督が突然退任し、一時は監督不在の時期が続くなどチームは混乱を極めた。急場しのぎのような新体制で船出するなか、エースである草加にかかるプレッシャーは相当なものがあったはず。亜細亜大は今秋リーグ開幕から3カード連続で勝ち点を落とし、2部降格の危機にさらされた。

草加自身も疲労から本来のボールのキレが見られず、悪戦苦闘の投球に終始した。それでも、時にはサイドハンドからボールを投げ込むなど、あの手この手を使ってピンチを凌いでみせた。

「ずっと上から投げているとバッターも打ちやすいので、たまにはリリースポイントを変えてバッターの目線を外しました」。そう語る草加のなりふり構わぬ姿勢に、亜細亜大のエースとしての自覚が滲んでいた。結局、草加は今秋に5勝（3敗）を挙げて入れ替え戦回避へと導いている。

創志学園高時代は西純矢（阪神）の控え投手だった男が、精神的にたくましい大エースへと成長した。1年間投げ抜く体力や変化球の質など課題はあるものの、プロでも持ち前の生命力を発揮できれば確実に戦力になれるだろう。

大学時代の個人成績

2023年春 東都／最優秀投手、ベストナイン

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菊地高弘（きくち・たかひろ）
1982年生まれ、東京都出身。雑誌『野球太郎』編集部員を経てライターとして独立。「菊地選手」名義で執筆した『野球部あるある』（全3巻・集英社）は13万部のヒット作になった。2019年に上梓した『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』（カンゼン）はTBS系日曜劇場の原案としてドラマ化された。近著に『野球ヲタ、投手コーチになる。 元プロ監督と元生物部学生コーチの京大野球部革命』（KADOKAWA）がある。