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お笑い、走る、俳優! 49歳いとうあさこのパワーの源とは?

  • 2019.10.17

今、テレビで見ない日はないというほどの、国民的人気のいとうあさこさん。
お笑い芸人として活躍する一方、実は、劇団山田ジャパンでは女優としての顔も持っているんです。お笑い、走る、俳優と、まさにマルチに活躍されていますが、「どんな仕事であっても、どれもいとうあさこの一部、カテゴライズはしていない」と語るあさこさんの本音に迫ります。TRILL独占インタビュー、3回にわけてお届けします。

――テレビなどではお笑い芸人としてのお仕事が多いと思うんですけども、劇団山田ジャパンでは俳優として活躍されていらっしゃいますよね。

「そうですね、芸人と俳優とか、自分の中では、特にわけてなくて。人に見せるものとしてお笑いも演技も何かが違うとは思っていないんです。どちらも私の中の大事な一部なんですよね」

――演技とお笑いはあさこさんの中では違いはないと。

「ないですね。お客様が喜んでくださるといいなと思って一生懸命やるっていうことに差はないんですよね。演技とネタってことになるから言い方としては違うのかもしれないですけど、意識として私の中では違いは何もないです」

――『HEY!ポール!』ではポールダンサーの役でしたけど、ポールダンスとか今年の『24時間テレビ』ではマラソンもされましたね。見てて本当に感動しました!

「ちょうどその時『世界の果てまでイッテQ!』の中国ゴマもあって、大変すぎてちょっとおかしくなっちゃいましたね。“元気が出る粉”っていうと響きがちょっと危なそうですけど、アミノなんちゃらみたいなものを舐めながら暮らしてました(笑)」

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唯一、気力っていう宝物を神様が一個だけくれた気がします

――でもあさこさんは、今49歳ということですが、年齢を重ねられても活動的でイキイキとお仕事をされているように感じます。

「普通の人より気力が強いのかもしれないです。年齢のわりに体力があるとは思っていなくて、すぐ疲れるし、逆に疲れてないタイミングがないくらいですけど、気力っていう宝物を神様が一個だけくれました(笑) ただ気力だけで、動いてるから、突然切れたときにハタと倒れるかもしれない(笑)」

――気力があるってすごく大事な気がします。歳をとると気力がむしろなくなるような。

「何かが麻痺してるんでしょうね。お酒も年々弱くなるって聞きますけど、私は年々、いくら飲んでも残らなくなって、どこかの神経が死んだ可能性がありますね。酒は残らない、気力は増進するってちょっと普通じゃないので、革命的な何かが身体の中に起こってるのかもしれないです(笑)」

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“がんばった”向こう側に待ってるものは格別だと思う

――あさこさんの、そのパワーというか、モチベーションはどこからくるんでしょうか?

「やっぱり仕事が好きなんでしょうね。昨今、“がんばる”って言葉、賛否両論じゃないですか。でも私は実はすごく好きなんです。がんばるを“顔が晴れる”と書く方もいて、それもわかるんですけど、私の中の“がんばる”って、奥歯が折れるぐらい歯を食いしばるぐらいのことだから、本当に“頑なに張る”の字のごとくと思っているんです。それくらいがんばった向こう側に待ってるものは格別だなと思います」

――「がんばる」って本当にその通りですね。

「マラソンが終わった翌日に、何ヶ月も飲んでなかったから久しぶりに山田ジャパンの(座長の山田)能龍さんと古きメンバー二人とうちで飲もうってなって。きゅうりの浅漬けを一口食べたら奥歯の詰め物が急に取れてしまって、翌朝、歯医者さんに行ったんですよ。一年以内に詰めたセラミックが取れてたんですけど、歯医者さんに『セラミックが一年以内に取れる事例は、ほぼ聞いたことがありません。よほど歯を食いしばられたんですね』って言われて。それが本当に奥歯だったので、自分で言うのも恥ずかしいけど、奥歯を食いしばるほどがんばったんだなって思いました」

――奥歯を食いしばるって比喩じゃないんですね。

「本当に(笑) そういえば私、歯の付け根が歯ぐきの裏に出てきていて。それも歯医者さん曰く『歯を食いしばって生きてる人は歯が出てきちゃうんです』って。だから私、ずっと歯を食いしばってるんだなって思いました(笑) でもその分、得た感情はたくさんある。もちろんがんばったのにうまくいかないこともありましたけど、いいこともいっぱいあるから、そういう労力はできうる限りしたいし、やらなきゃいけないと思っています」

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――ずっと歯を食いしばるような選択をしてきたんでしょうか?

「できることならゆっくり暮らしたいんですけど、何かを課されると、性格上、手を抜きたくないから結果、歯を食いしばることになるんでしょうね。裏の事情がどうであれ、外から見えてるのは自分だから、ちゃんと自分で考えてやらないといけないですし、『人にやらされて』は一番かっこ悪くてイヤなので、できるだけ自分で責任が負えるものにしたいっていう意識はありますね」

――そこはお笑い芸人としてのプライドみたいな?

「お笑いというよりは人として、ですね。お笑いをやってるときも舞台をやってるときも、そういう意味で変わらないです。芯の部分は一緒」

――バラエティ番組などを見ていると、あさこさんのおもしろさ、本当に話しているのを見ていると、とても楽しいんですよね。

「そうですか?(笑) 家でもテレビを見ててずっと喋っちゃうんですよね。1回、有吉(弘行)さんとマツコ(・デラックス)さんがテレビで議論していて、そこに自分で『いやいやいや』って会話に入っていこうとしてしまって。その自分の声のせいでお二人が何を喋ってるか聞こえなくて、(録画を)巻き戻して見るっていう事件が起こったくらいで。だからテレビに出てワイプに抜かれてようが抜かれてまいが、ずっと喋ってますね」

――番組に出ているときも普段の生活でも変わらないと。

「そうですね。『24時間テレビ』のマラソンのスタートの時も、普通は皆さんセンシティブになって集中してたりするらしいんです。水卜ちゃん(水卜麻美)はまだ発表されてなかったから国技館にいたんですけど、私たち3人(ハリセンボン 近藤春菜、ガンバレルーヤ よしこ)はタスキの渡し方でずっとボケて遊んでいて。森(圭介)アナウンサーと坂本(雄次)先生に、こんな人たちは今までいなかったって言われました。私たち、喋るのとか、楽しいことが純粋に好きなんでしょうね」

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しんどい時タスキをギュってやるとすごい力が出たんです。仲間からもらうパワーって不思議な力があるんですね

――タスキリレーでは4人のチームワークを深く感じました。その中でリーダーとして、自分が仲間を引っ張って行こうというお気持ちなどはあったんですか?

「たまたま最年長でアンカーっていうだけで、おこがましいのでそんなつもりは1ミリもありませんでした。よしこにもいっぱい安心をもらったし、春菜にもリラックスや楽しさをもらったし、水卜ちゃんにも強さをもらって、それぞれすごく支えてもらって。こんな経験は初めてでちょっと気恥ずかしいんですけど、しんどい時タスキをギュッってやるとすごい力が出たんですよ。仲間からもらうパワーって不思議な力があるんだなっていうことを49歳で初めて思ったというか。2カ月間、4人で本当に踏ん張ってきたことがそういうことなんだろうなと思いました。不思議な経験でしたね」

たとえ、悲しいことでも、考え方ひとつで変わると思う。私は、誰かが笑ってくれればそれでいい

――お話をうかがっていると、“物事を楽しむ力”があるんだなと思いました。

「年齢を重ねてきて、より考え方ひとつで変わるなというのは思うようになりました。何でも楽しもうと思えば楽しめるし。あとお笑いという仕事は、悪いことも楽しめるっていうこともあるんです。例えば、以前、あるトークライブのゲストに呼ばれてた前日の夜中に、こっぴどいフラれ方をして。失恋したんですよ。で、ライブで『聞いてくれます?』って泣きながらこんなひどい目にあったっていう話をしたら、めっちゃウケたんです。その時にスッと楽になったんですよね。そういう意味ではいい仕事についたかもしれない。失敗も力になりますから」

――笑ってもらえることが嬉しいみたいな?

「やっぱり好きなんでしょうね。最近、みんな言葉でこねくり回すから『笑わせてる』のと『笑われてる』のは違うんだよとか言う人もいるけど、もうどっちでもいい。嘲笑の人もいるかもしれないけど、人は笑ってたら楽しいじゃないですか。誰かが笑ってくれればそれでいいと思います」

――今後、こういうふうに生きていきたいという理想はありますか?

「先に答えを言うとないんです。浅倉南という自虐ネタでテレビに出させていただくようになったんですけど、32~33歳でピンになってから作っていたネタとほぼ変わってないんですよ。それが40歳越えた頃に人が笑ってくださるようになったから、こちらからは何も決められないんだなと思ったんです。だから理想の形が本当にわからない。50歳過ぎてもイライラしてるのが面白いのか、もしかしたらラジオで何か聞いていただくようになるかもしれないし、何かを書いて読んでいただくようになるかもしれないし、舞台のコメディに触れ続けているかもしれないし。自分はアンテナが鈍らないようにするためにどうしたらいいか。好奇心と気力だけ失わなければいいのかなって思っています」

 

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Movie, Photography & Design:dely
Writing:Rika Iwasaki
Edit:TRILL編集部

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