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【第3回】アフリカ少数民族のREALを伝える「写真家ヨシダナギ」がカメラを始めたわけ

  • 2018.8.24

アフリカの少数民族を愛し、撮影し続ける写真家ヨシダナギさん。彼女にとってカメラはツール。全ては彼らに会うためだけにある。なぜそこまでアフリカと先住民族にこだわるのか、なぜ、身体を張って、全精力を投入して撮影し続けるのか、ヨシダナギさんのREALに迫りました!

アフリカ人のカッコ良さを伝えたい。それが写真を始めたきっかけ

ーー写真を始めたきっかけを教えてください。

「アフリカ人のカッコ良さを周りの人に伝えたいと思ったからです。私は言葉ではうまく説明できない。だったら旅行に行って撮った写真を見せれば、アフリカ人の良さを知らない親にも伝わるかなと思って記録程度に撮っていた写真が今に繋がっています」

ーー初めてアフリカに行った時は何歳の時だったんですか?

「23歳です」

ーーその時意を決して行かれた?

「意を決してという感じでもなくて(笑)。行きたいなという想いはずっとありましたが、当時は英語も喋れないし、1人で旅行したこともないのにアフリカに行けるかなって人並みな不安はずっとあって。その不安を抱いていることがめんどくさくなったんです」

ーー「こんな不安いらない」ってなった?

「はい。ずっと片思いしているような状態でしたから。言い方は悪いけど、5歳でたまたまテレビを見た時から抱いている想いが煩わしくなってしまった。だったらアフリカに行ってみて、ダメだったらその想いを捨てようと思いました。それと斜め上の出来事が起きたらいいなって気持ちもありましたね」

ーー実際に行って斜め上の出来事は起きました?

「最初に行った時は起きなかったです。ただ初めてエチオピアに降り立って、空港や首都の空気を吸った時になつかしい感じになりました。昔行っていたおばあちゃんの家に帰って来たような、そんな思いがあって、聞いたこともないアムハラ語という言葉がなじみのある言葉に聞こえました。アフリカに来たというよりは戻って来た、そんな感じがしておもしろいなと思ったんです」

ーー23歳から何度も訪れているアフリカ。どんなところに心惹かれると思いますか?

「大好きなアフリカ人のいる大地そのものが好き。もちろんアフリカ人の見た目も好きですけど、あの人たちの生き様や楽観的な考え方、後は底抜けの明るさやパワフルさがすごく好きなんです。私自身にはそういう底抜けの明るさやパワフルさがないから。どちらかというと私は気の抜けた性格なので、多分に彼らに憧れているところがありますね。そして服をまとっていなくてもいやらしく見えない佇まい、黒い肌に白い歯をむき出した笑顔もどの人種よりまぶしく見えます。その存在自体がすごく好きです」

人を好きになるのは生き様や振る舞い。一緒にいるだけで仲良くなれる

ーーアフリカの人たちの写真を撮る時に心がけていることを教えてください。

「私は写真自体のスキルがすごく高いわけではないのは自分でわかっているんです。だから写真が上手な人と差を出すには、彼らの表情しかないと思っています。そのためには彼らと仲良くなり距離感をなくして、信頼してもらい、その人がいちばんよく見える姿を写真には必ず収めることを心がけています」

ーー例えば良い表情を引き出したい時は、日本語で指示を出すんですか?

「まっすぐ立って、顎を上げてとお願いすることはあります。でもそれも最初の1、2回だけで、後は私が言葉を話さなくても、目が合った時に私が顎を上げれば彼らも顎を上げてくれるんです。そんなふうに意思疎通は言葉がなくてもできるから、私の撮影は無言が多いです。結局人と人が仲良くなるのに、言葉はあまり関係ないんです。やっぱり人を好きになるのって、その人の振る舞いや生き様だったりするから。ただ一緒にいるだけで仲良くなれるケースが多い気がします」

ーー少数民族の人たちの中に意識して溶け込もうとしているわけではないんですね。

「彼らが嫌がること、悲しむことはしないということだけは頭にあるけど、気に入られようとは特に思っていません。あまり構えて彼らに接することはないですね。彼らと同じ時間を過ごして、同じ生活をしていれば彼らにもそれは伝わるので。日焼けしようが彼らと同じように無頓着になって過ごして、お腹を壊そうが彼らと同じものを一緒に食べていれば、仲良くなれると私は思っています」

ーー同じ姿になって、同じ物を食べれば自然と心を開いてくれて距離は縮まる、と。

「はい。小さい時から日本人と友達になる方法はよくわからなかったけど、初めてマサイ族をテレビで見た時に、この人と仲良くなるには同じ格好をすればいいんだって、子供ながらに思ったんです。それをアフリカでやってみたら本当に仲良くなれた。だから私の中では確信に変わっただけ。小さい頃から思っていたことを試した。それだけでした」

同じ格好をすることによって男性も女性も受け入れてくれた

ーーアフリカの方と仲良くなるといえば、少数民族の方にプロポーズされたことがあるというお話も聞きました。

「はい。カメルーンのコマ族という裸族の方でした。裸族の人って、洋服を着ている人と裸族である自分たちとの違いを理解しているんです。彼らはそれを「区別」と判断して、服を着る文化、裸族の文化があることを理解した上で、裸族の生活を選んでいるんですね。そして洋服で肌を隠すことで羞恥心が生まれるということも理解していて、洋服を着ている人、しかも肌の白いまったく違う国籍の人が肌や胸を晒すのがいかにハードルが高いことか、彼ら自身がいちばん理解しているんです。だから私が彼らと同じ格好をした時『本当に自分たちのことが好きなんだ』ってわかってくれて。長老に『今まで何人か白い人を見たことあるけど、こんなに潔い人はいなかった。すごく気持ちの良い子だ。5番目の妻にならないか』と言われました(笑)」

ーー族長の方に! 何て答えたんですか?

「そう言われてすごくうれしくて! 同じ姿になった時から男性も女性も態度がコロッと変わったので、『ああ、仲間になれた』と思いました。せっかく私を受け入れてくれたのに、『結婚は無理です』と言ったら、その場をしらけさせてしまうじゃないですか。だから『来世でね』と答えました(笑)」

自転車にまたがるアフリカの少数民族
出典:写真集「HEROES」

アフリカに行きたいから行く。少数民族に会いたいから

ーーアフリカに写真を撮りに行く、現地の人と同じ格好もいとわない勇気みたいなものはどこから湧いて来るのでしょうか。

「私には飛び込もうみたいな意気込みは特にないです。行きたいから行ってるだけだし、会いたいから会っているだけ。構える場所が好きじゃないんです。がんばらなきゃ立てない場所には、私はそもそも行かないです。そういう意味ではアメリカやヨーロッパには1人じゃいけない(笑)。それこそ構えてしまうから。自然体でやれることじゃないと私は続かないので、仕事にしても自分が構えず、そのままで行ける場所にしか出向きません」

ーー写真を撮ることそのものは好きですか?

「好きかと聞かれたらカメラは嫌いです。重いし、写真がうまい人なんてたくさんいるから、私が一番になれる分野じゃない。だから仕事としてやっても楽しくはないです。ただ私の写真が評価されているのはスキルではないことを自分でも理解しているので、そういう意味では気は楽です。私はプレッシャーに弱いから仕事でアフリカに行くと帯状疱疹が出ます。それがカメラのせいだと思うと、やっぱりカメラは好きになれないです(笑)」

ーーこいつのせいで帯状疱疹まで出て、みたいな(笑)。

「そう(笑)。だけどカメラがなかったら、少数民族に会いに行く回数も減ってしまうので、彼らのためになら重たいカメラをアフリカに持って行ってもいいかなって。彼らがいるから、自分ができるところまでやろうと思えるのかなって思っています」

アフリカに興味を持って欲しいからSNSの拡散力を活用する

ーーヨシダさんの写真を見たりお話を聞いたりして、自分が今までアフリカのこと、少数民族のことをほとんど意識していなかったことに気がつきました。

「今の日本はアフリカや少数民族に興味がない人、縁がない人が大半だと思います。そんな人たちに興味を持ってもらうためにも、写真展をするにしても撮影OKにするなど、間口を広くしています」

ーーヨシダさんの写真展がアフリカに興味を持つきっかけになるわけですね。

「そうして入った場所で『あれ、意外と少数民族ってカッコイイんじゃない?』、『アフリカって怖いところだと思っていたけど、すごくきれいなとこなんじゃない?』と思ってもらうことが大事だと思っています。知ってもらうことで今まで作り上げられてしまったアフリカのネガティブなイメージが覆されていくと思うので、1人でも多くの人に写真を見てもらってSNSでシェアしてもらって、その魅力を伝えてもらうことが大事なのかなって」

ーー今SNSの拡散力を利用するメリットは大きいでしょうね。

「私1人でやろうと思っても限界があると思うんです。でも今はSNSがあるので、1人がシェアしてくれれば、その友達が拡散して何十人、何百人へと広がっていく。そのほうがアフリカ人の魅力を伝えるのは早いかなって思っています」

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profileフォトグラファー ヨシダナギ

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〉〉【第1回】写真家ヨシダナギの「アフリカ少数民族」との出会い
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Movie Director:Yohei Takahashi (f-me)
Writing:Yuko Sakuma
Edit:Natsuko Hashimoto(TRILL編集部)

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