【第1回】写真家ヨシダナギの「アフリカ少数民族」との出会い

アフリカ人の魅力を伝えるために写真を撮り続けているヨシダナギさん。今回はアフリカで実際に見た少数民族の「今」、そしてヨシダさんを感激させた少数民族との出会いについて語っていただきました。遠く離れたアフリカに興味が湧くエピソードばかりです。

5歳の時初めてテレビで見たマサイ族をカッコイイと思ったのが出会いの始まり

ーーアフリカの写真を撮り続けていらっしゃいますが、ヨシダさんにとって写真とはどんなものですか?

「ツールのひとつ、ですかね。アフリカ人や少数民族のカッコ良さを伝えたい、証明したいーーそのためのツールで、もし私が歌を歌えるなら歌でも良かったし、絵が描けるなら絵でも良かった。その方法がたまたま写真だったというだけです」

ーー小さい頃からアフリカがお好きだったそうですが、何がきっかけだったんですか?

「5歳の時初めてアフリカ人を知ったのがたまたまテレビで見たバラエティー番組で。それでマサイ族を見て、当時はアフリカ人だとわかっていなかったんですけど、黒い肌の人が青い衣装を着て、槍を持って跳びはねている姿を見て、なんてカッコイイ職業がこの世にあるんだろうと思ったのが始まりでした。大きくなったらこの姿になりたいなと思ったのがきっかけです。それまで私は母に頑張れば何ひとつなれないものはないと教えられて育ったんですね。なのに母に言われたんです。あなたは日本人だからその姿にはなれないって。どんなに頑張っても、賄賂を払ってもなれないものがあるんだ!! 当時、そう知ってがっかりしたのは覚えています(笑)」


今を楽しく過ごすことが先の幸せに繋がる

ーー大人になって実際に会いに行けるようになってもなお少数民族に魅了されているんですね。

「私が少数民族を魅力的だなと思うのは、私にはない視点を持っているからです。なおかつ彼らは学校では教えてくれない、とてもシンプルなことを教えてくれる。日本の生活では気づけなかったことを教えてくれるので、とても勉強になります」

ーー例えばどんなことですか?

「彼らに言われていちばんハッとしたのが『Don't think too much』という言葉でした。『何でずっと先のわからないことで悩んで、そんなに自分を不幸にしているの?』って」

ーーすごくシンプルだけど現代社会においては、真理を突いている言葉な気がします。

「日本人ってどうしても明日明後日のことだけでなく、来年どころか10年、20年後のことを常に考えてしまいますよね。どうなるかなんて実際はわからないのに。それに対して彼らは『今が幸せでなければ、来年どころかその先何が幸せなの?』という考え方なんです。『今日の夜、みんなでお腹いっぱいご飯が食べられてちゃんと眠れたら、それで幸せじゃないの?』ってどの民族にも言われました。『今君が幸せでいることが、将来の幸せに繋がるんじゃないの?』って。そう言われた時に本当にそうだなって」

ーーその言葉はヨシダさんの中にどんな変化をもたらしてくれましたか?

「それから私は先のことを一切考えなくなりました(笑)。先のことを考える前に今自分が楽しく過ごそうって。人に迷惑かけない程度に、ですけどね。彼らを見ていると、『ああ、こんな生き方ができたらみんな幸せなのにな』って思うんです。もちろん日本でそれを100%マネしようとしても、適応しない部分はあります。だったら日本人なりに少しでも彼らの視点を取り入れて生活できたら、すごく幸せだろうなって思うんです」


初めて一緒に作品撮りをした気持ちになれた、アファール族との出会い

ーー今まで出会った少数民族の中でも、特にグッときた人たちとのエピソードを教えてください。

「アファール族かな。アファール族そのものはたくさんいるんです。でも伝統を守って暮らしている人たちはごくわずかなんですね。そうして暮らしている彼らが出会った外国人は、私が初めてだったんです」

ーーどんな出会いだったんでしょうか?

「彼らはその文化を迫害されてきた民族でもあるんですね。だから私は彼らに『あなたたちはすごくカッコイイ。私はそのカッコ良さを伝えたい』と伝えました。もちろん写真もフォトグラファーも知らないような状況でしたが、最終的には私を受け入れてくれてモデルとしてカメラの前に立ってくれたんです」

ヨシダナギさん写真集「HEROES」より、ラファール族の人々
出典:写真集「HEROES」

ーー迫害されてきたアファール族の文化を初めて世界に伝えてくれる人がヨシダさんだった。彼らとの撮影はどんな経験になりましたか?

「民族の誇りを持ってカメラの前に立ってくれたことにも、もちろん感謝しています。でも何よりうれしかったのが、写真のことを何も知らなかった人たちが、撮影を終えるまでには私がどうしてここに来たかを汲んでくれるようになったんです。『君はわざわざ遠いところからやって来て、僕たちのことを見つけ出してくれた。だから今は僕たちが頑張る時なんだ』って。『だから何かあったらすべて僕たちに言ってくれ』って……その気持ちが何よりうれしいと思いました」

ーー何よりも「ヨシダさんのために」を優先して考えてくれるようになった。

「アファール族の撮影の時は、強風で三脚も立てられなかったんですね。テレビの撮影も入っているのに、シャッターも切れないような状態で。彼らが『写真を見せて』って、話しかけてきたのに私はいっぱいいっぱいでした。結局、撮影を中断したんですが、後で番組のディレクターの方が自分が回していたカメラを見せてくれたら、彼らが『すごく良く撮れてるよ。次はもっといい写真が撮れるから頑張ろう!』って声を掛けてくれているところが映っていたんです。カメラを知らない彼らが私を気遣ってくれて……それってありそうで意外とないことなんです。その時、初めて少数民族の人たちと一緒に作品撮りができた気持ちになれました」


人と人として向き合えたら国境やボーダーはない

ヨシダナギさん写真集「HEROES」よりスリ族の子ども
出典:写真集「HEROES」

ーー今までのお話からアフリカの人たちが身近に感じられるようになった気がします。日本に住んでいるとアフリカを未開で危険な地と思ってしまいがちですが、それはよく知らない遠い土地だからなのかも知れないなと。

「知らないから怖いーーそれはあると思います。ただアフリカに行かなくても危険なことが起こる可能性はあるし、アフリカのルールを守っていればそんなに危ない目には遭わないんですよね」

ーー知らず知らずのうちに「未開の地の人々」という、偏見みたいなものを抱えているんじゃという気がしました。

「遠く離れた場所に住んでいる文化も違う人たちだけど、結局は同じ人間です。言葉が通じなくても、自分の生き様や振る舞いがちゃんとしていれば嫌われることはない。人と人として向き合ってもらえます。だからどんなに遠い国に住んでいる人であっても、人と人との間には国境やボーダーは、意外とないんじゃないかなって思います」

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ヨシダナギさんの他のインタビュー記事を読む

〉〉【第2回】アフリカ民族と対話する「写真家ヨシダナギ」ができるまで
〉〉【第3回】アフリカ少数民族のREALを伝える「写真家ヨシダナギ」がカメラを始めたわけ

Movie Director:Yohei Takahashi (f-me)
Writing:Yuko Sakuma
Edit:TRILL編集部

提供元: TRILLの記事一覧はこちら
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