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日本の人気作家も騙された!?アン・ハサウェイ主演『ヴェリティ/真実』に4人の文筆家が取り憑かれたワケ「どうやらこの映画、一筋縄ではいきません」

  • 2026.11.5

全世界で大ヒットした映画『ふたりで終わらせる/IT ENDS WITH US』(24)の原作者であり、いまアメリカでもっとも人気のある作家の1人として知られるコリーン・フーヴァーの同名ベストセラー小説を、アン・ハサウェイ主演で映画化した『ヴェリティ/真実』(11月6日公開)。本作は交通事故で体の自由を失った人気作家が隠してきた衝撃的な秘密を、彼女のゴーストライターを務めることになった新人作家が暴き出す、愛憎うずまくミステリー・サスペンスだ。

【写真を見る】こんなアン・ハサウェイ見たことない…極上ミステリー『ヴェリティ/真実』で妖艶さ全開

ひと足先に公開を迎えた全米では、週末興収ランキングで初登場No.1を獲得するなどスマッシュヒットを記録。原作同様、大胆な仕掛けが施されたスリリングな展開に、観客のあいだでは様々な考察や議論が巻き起こっている。そんな本作を、小説家の山内マリコ、作家の浅倉秋成、イラストエッセイストの犬山紙子、コラムニストの山崎まどかと、それぞれ異なる立場の文筆家4名がいち早く鑑賞。稀代の人気小説家が生みだした“問題作”を、彼らはどのように見たのか?各々から寄せられた絶賛コメントをピックアップしながら、本作の魅力を深掘りしていこう。

仕事にも人生にも行き詰まった売れない作家、ローウェン(ダコタ・ジョンソン)。彼女の元に、交通事故で生死を彷徨っている人気作家ヴェリティ(ハサウェイ)のゴーストライター業という驚くようなオファーが舞い込む。なぜ自分が選ばれたのか疑問を抱きながら、人里離れたヴェリティの邸宅へ移り住むローウェン。ヴェリティの夫ジェレミー(ジョシュ・ハートネット)と親密な関係になっていく彼女は、ある時、ヴェリティが書いたと思われる不気味な原稿を発見。そこには衝撃的な告白が綴られており…というストーリーで映画は始まる。

妖艶さと恐怖を備えたサスペンス…主人公たちと同じ“小説家”はどう観た?

売れない作家ローウェンは、人気作家ヴェリティのゴーストライターとして雇われる
売れない作家ローウェンは、人気作家ヴェリティのゴーストライターとして雇われる

劇中の大部分が広大な邸宅の中で繰り広げられ、ヴェリティが書いたと思しき原稿に記された文章をローウェンが読み進めていくことで、サスペンスが増幅していく。そうしたミステリー文学の旨みを活かしつつ、作品全体に流れるのは“サスペンスの神様”アルフレッド・ヒッチコック作品を思わせる緊迫感や、エイドリアン・ラインやブライアン・デ・パルマを彷彿とさせる妖艶で時折ゾッとするような空気感。

「六人の嘘つきな大学生」で第43回吉川英治文学新人賞の候補にあがり、「俺ではない炎上」で第36回山本周五郎賞候補にもあがるなど、作家として目覚ましい活躍を見せる浅倉秋成は「小説原作でありながら、映像作品ならではの妙に満ち溢れていた」と称賛。「作品はときに平然と作者を呑み込み、作者の人生そのものを書き換えていく。私も小説家の端くれとして、体の髄が冷える恐怖作品であった」と身震いを禁じえなかったことを告白。

【写真を見る】こんなアン・ハサウェイ見たことない…極上ミステリー『ヴェリティ/真実』で妖艶さ全開
【写真を見る】こんなアン・ハサウェイ見たことない…極上ミステリー『ヴェリティ/真実』で妖艶さ全開

また、映画化もされた「ここは退屈迎えに来て」や「あのこは貴族」など、女性同士の関係性を描くことに長けた小説家の山内マリコは「俗悪美とでも言いたくなる粘度のある世界観。女が女を見る悦び。作家の創作の秘密。憧憬と侮蔑がシーソーゲームを繰り返す熟達したケレン味演出。これはとんでもなく…ギルティ・プレジャー(背徳感)を刺激される映画!」と興奮気味に本作の魅力を語る。いまや指一本動かせなくなったヴェリティだが、事故に遭う前はファム・ファタール的な妖艶さを持つ女性。いっぽうでローウェンは朴訥とした雰囲気の女性だが、ヴェリティの原稿を通じ、やがて危険な魅力を開花させていく。正反対な2人の人生が交わっていく様は、見てはいけないものを見てしまっている空気感へ観客を誘う。

さらに「アン・ハサウェイ演じるヴェリティが小説を書くようになったきっかけに、この作品の世界観の根幹がある気がしました。その動機づけを思いつけるところに、コリーン・フーヴァーのベストセラー作家たるゆえんがあるのは確かだな、と思いました」と、同業者としての視点から、フーヴァーの才能に舌を巻いていた。山内も注目した“きっかけ”とはなんなのか、ぜひ映画館で確かめてみてほしい。

エッセイスト&コラムニストは“人間の業”をあらわにしたリアリティに着目!

今年出演作が相次いで公開されているアン・ハサウェイは、生死を彷徨う人気作家ヴェリティ役で怪演を披露
今年出演作が相次いで公開されているアン・ハサウェイは、生死を彷徨う人気作家ヴェリティ役で怪演を披露

「とにかく目の離せないストーリー展開で最後の1秒まで食い入るように鑑賞しました」と本作の魅力に取り憑かれた様子で語るのは、エッセイストの犬山紙子。鳴かず飛ばずの小説家であり、すっかり自信を失っていたローウェンは、ヴェリティの夫ジェレミーに自身の作品や人間性を肯定されることで、許されざる彼への想いを募らせていく。「自分のことをわかってくれて、無邪気に承認を与えてくれる素敵な人に出会ったら、依存してしまうということにも非常にリアリティがある」と、物語の中核を担うローウェンに共感しながら、そのキャラクター描写に熱烈な賛辞を送る。

そのうえで、「物を書いているものとして一番ゾッとしたのは、最初ゴーストライターを断っていたローウェンが、ヴェリティを乗っ取りどんどん真似していく」と、ローウェンのなかに潜む狂気についても言及。果たして彼女は、ゴーストライター業を通してどんな変身を遂げるのだろうか。

ヴェリティの邸宅で作業を進めるなか、不気味な原稿を発見
ヴェリティの邸宅で作業を進めるなか、不気味な原稿を発見

また、コラムニストの山崎まどかも「ベストセラー作家vs駆け出しの新人作家のせめぎ合いは、その構造からしてサスペンス」と本作の設定の妙味に触れながら、「作家がストーリーを紡ぐことによってどれだけ他人を操れるか。そこに触れている点が魅力的でした。SNSでデマに踊らされる人も、『情報』というよりも『物語』に弱いのではないでしょうか」と、緻密な人物描写の奥に現実社会にも通じるテーマがあることを指摘した。

3人の名俳優が繰り広げる演技バトルにくぎづけ!

本作を語るうえで欠かせないのは、ハリウッドを担う超実力派俳優3名の熾烈な演技バトル。日本でも絶大な人気を誇り、コメディエンヌから狂気的な役柄まで演じきるたしかな実力で、2026年に立て続けに公開された出演作が軒並み大ヒットを記録しているアン・ハサウェイ。「フィフティ・シェイズ」シリーズで魅せたコケティッシュな演技でブレイクを果たし『マテリアリスト 結婚の条件』(26)でも話題を集めたダコタ・ジョンソン。そして青春スターとして脚光を浴びてから四半世紀余り、近年では『トラップ』(24)での殺人鬼役など演技の幅を格段に広げたジョシュ・ハートネット。

ジョシュ・ハートネット演じるヴェリティの夫ジェレミーからも、不穏な空気が立ち込める…
ジョシュ・ハートネット演じるヴェリティの夫ジェレミーからも、不穏な空気が立ち込める…

彼らが抜群の演技力をもって体現する、真実と嘘、善悪の境界線が揺れ動く豊潤なミステリー世界に、4名の文筆家たちもすっかり虜に。浅倉は「脚本以上に役者の『顔』が物語に説得力をまとわせていた」と語り、犬山も「狂気と苦しみの透明な瞳をした、見たことのない凄みのあるアン・ハサウェイの演技にも引き込まれる」と、従来の華やかでポジティブなイメージを覆すハサウェイの新境地に脱帽。

かねてからジョンソンの大ファンだったという山内は「ダコタが大量の創作メモと格闘しながらカードを並べてストーリーを構想していく場面だけでも切り抜き動画にしたくなるほどぐっときました。大成功した作家を演じるアン・ハサウェイの毒っけに笑いつつ、ジョシュ・ハートネットの変わらないガタイの良さに目を奪われつつ…」と陶酔。山崎も「女性側の視点で『良き夫』にも『危険人物』にも見えるジョシュ・ハートネットの揺らぎに注目です」と、各々が本作を彩る三者三様の魅力を語っている。

「一筋縄ではいかない…」ラスト10分がすべてを覆す

“ラスト10分ですべてが覆る”と銘打たれているように、幾重ものどんでん返しが待ち受けている本作。ヴェリティの原稿から端を発した衝撃の結末が、観る者を震撼させる。山崎は「原作がベストセラーだけあって、ケレン味たっぷり。結末の解釈をめぐって、読者たちが二手に分かれていまだに戦っているというのも納得です。この映画化作品によって、その論争にさらに火がつくのでは」と、原作の反響の大きさに触れながら期待を寄せる。

なにが“真実”でなにが“嘘”なのか…幾重もの仕掛けが張り巡らされた極上ミステリーに中毒必至
なにが“真実”でなにが“嘘”なのか…幾重もの仕掛けが張り巡らされた極上ミステリーに中毒必至

浅倉も「『この手のどんでん返しで来ましたか!』ニヤリと微笑みながらエンドロールを眺めれば、いや待てよと小さな違和感が脳裏で弾ける。どうやらこの映画、一筋縄ではいきません」と、その衝撃の大きさと、ねっとりまとわりつくような鑑賞体験となることをアピール。いったいなにが“真実”でなにが“嘘”なのか…。ぜひとも劇場でそのラストを目撃し、闇深い迷宮へと彷徨い込んでみてはいかがだろうか。

<コメント>

●浅倉秋成(作家)

「有名作家の代筆? 執筆場所は湖畔に佇む邸宅? 絶対に『何か』が起こる身震い必至の設定から、めくるめく明かされる衝撃の真実。『この手のどんでん返しで来ましたか!』ニヤリと微笑みながらエンドロールを眺めれば、いや待てよと小さな違和感が脳裏で弾ける。ならば、ならば、ならば。帰路までねっとり纏わりつく粘度の高い鑑賞体験。小説家の仕事は『嘘をつくこと』なのです。どうやらこの映画、一筋縄ではいきません。

原作者が小説家であったからこそのトリックであり、同時に小説家でなければ決して陥ることのなかったトリックでもある。作品はときに平然と作者を呑み込み、作者の人生そのものを書き換えていくのだ。私も小説家の端くれとして体の髄が冷える恐怖作品であったが、実は『大切にすべきものの比重を間違えると――』という意味において、普遍的な教訓を孕んだ作品なのかもしれない。誰だって気軽にSNSの時代、ですものね。

ときに『文体』が小説作品におけるリアリティを底上げするように、本作は脚本以上に役者の『顔』が物語に説得力を纏わせていたように思う。このシチュエーションになったら、きっとこの人はこう動いてしまう――を『台詞』や『境遇』以上に、『役者の顔』が悠然と牽引していく。小説原作でありながら、映像作品ならではの妙に満ち溢れていた。ベッドフレームの歯形、ドレスの借用、ピーナッツバターとナイフ。小道具も雄弁だ」

●犬山紙子(エッセイスト)

「愛と官能と格差と承認欲求が入り混じった極上のサスペンス!真実が受け取り手によっていかようにも変わり、人を狂わせる様子は現実の私たちを映し出すかのよう。狂気と苦しみの透明な瞳をした、見たことのない凄みのあるアン・ハサウェイの演技にも引き込まれる。

とにかく目の離せないストーリー展開で最後の1秒まで食い入るように鑑賞しました。ファッショナブルで華やかという印象をアン・ハサウェイに持っていたのでその演技の幅にお脱帽しました。本が売れない経験は私もしていますが、それはそのまま自分自身を世間に否定されているような気持ちに陥りがちです。そんな中、自分のことをわかってくれて、無邪気に承認を与えてくれる素敵な人に出会ったら、依存してしまうということにも非常にリアリティがあり、そういったリアリティに基づいた恐ろしさをずーっと浴び続けられるのがたまりませんでした。

様々な恐ろしさが本作にはありますが、物を書いているものとして一番ゾッとしたのは、最初ゴーストライターを断っていたどこにでもいる善良な主人公ローウェンが、ヴェリティを乗っ取りどんどん真似していく中、偽りの承認欲求が満たされ、最終的には自己と密接に繋がる大切な著作の見た目までがほぼコピーのようになってしまったところです。それは、官能の最中でのベッドボードを噛むことまで真似をしたことよりも衝撃でした」

●山内マリコ(小説家)

「俗悪美とでも言いたくなる粘度のある世界観。女が女を見る悦び。作家の創作の秘密。憧憬と侮蔑がシーソーゲームを繰り返す熟達したケレン味演出。これはとんでもなく…ギルティ・プレジャーを刺激される映画!

ダコタ・ジョンソンのファンなので、彼女が売れない作家を演じるだけで『観たい!』と思いました。あと、人がものを読んだり書いたりしている様子を見るのもフェチ的に好きなので、本作は観る価値がありすぎます。ダコタが大量の創作メモと格闘しながらカードを並べてストーリーを構想していく場面だけでも切り抜き動画にしたくなるほどぐっときました。大成功した作家を演じるアン・ハサウェイの毒っけに笑いつつ、ジョシュ・ハートネットの変わらないガタイの良さに目を奪われつつ…。

アン・ハサウェイ演じるヴェリティが小説を書くようになったきっかけに、この作品の世界観の根幹がある気がしました。恋人の不在に耐えるために、気を散らすために彼女は小説を書きはじめる。そんな動機あるかよ!と思わずつっこんだものの、もしかしたらそういう動機で書かれた小説もあるのかもしれないなぁと。あの自伝がどこまで真実かはわからないけど、その動機づけを思いつけるところに、コリーン・フーヴァーのベストセラー作家たるゆえんがあるのは確かだな、と思いました」

●山崎まどか(コラムニスト)

「自分はこのストーリーの書き手なのか、それとも主人公なのか?書き手だとしたら、ヴェリティの用意した“結末”を書き換えることはできるのか?ベストセラー作家vs駆け出しの新人作家のせめぎ合いは、その構造からしてサスペンス。

原作がベストセラーだけあって、ケレン味たっぷり。結末の解釈をめぐって、読者たちが二手に分かれていまだに戦っているというのも納得です。この映画化作品によって、その論争にさらに火がつくのでは。

作家がストーリーを紡ぐことによってどれだけ他人を操れるか。そこに触れている点が魅力的でした。SNSでデマに踊らされる人も、『情報』というよりも『物語』に弱いのではないでしょうか。女性側の視点で『良き夫』にも『危険人物』にも見えるジョシュ・ハートネットの揺らぎにも注目です」

文/久保田 和馬

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