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人や動物の心の声が聞こえるために捨てられた女性と、戦うことに疲れた元傭兵。森の小さなスープ店で始まる再生の物語【書評】

  • 2026.11.3

【漫画】本編を読む

『スープの森 ~動物と会話するオリビアと元傭兵アーサーの物語~』(河野スイ:著、原作:守雨、むに:キャラクター原案/主婦と生活社)は、森の奥にある小さなスープ店を舞台に、心に傷を抱えた人々や動物たちとの出会いと別れを描く物語だ。

街から離れた場所で「スープの森」という店をひとりで営む25歳のオリビア。彼女には誰にも言えない秘密を持っていた。人や動物の心の声を聞くことができるのだ。しかしその力はオリビアに不幸をもたらす。貴族の家に生まれながら、家族から気味悪がられ、5歳で修道院へ送られることになってしまう。その後、養祖父母となるジェンキンズ夫妻に拾われて愛情を注がれながら育ち、今は彼らから受け継いだ店をひとりで切り盛りしていた。

そんなある雨の日、「スープの森」にびしょ濡れの男がやってくる。28歳の元傭兵・アーサーだ。貧しい家庭で育ち、両親と妹を流行病で亡くしたアーサーは、14歳で傭兵になった。戦い続けるうちに名の知れた存在になったものの、ある朝突然、もうこれ以上は無理であると悟り、傭兵を辞める。そして、あてもなく歩き続けた末にたどり着いたのが、オリビアの店だった。

人間に傷つけられ、人間と深く関わることを避けてきたオリビア。一方、人を傷つけ続けることに疲れ果てたアーサー。まったく異なる人生を歩んできたふたりだが、どちらも心に傷を抱え、ひっそりと生きられる場所を探していたのかもしれない。温かなスープを食べ、動物たちと触れ合い、店を訪れてくる人々と言葉を交わす。季節が巡る森の中で、そんな何気ない時間を重ねながら、閉ざされていた心が少しずつほどけていく。

そして「スープの森」を訪れるのはアーサーだけではない。ある時は人間、ある時は動物。そこにはそれぞれの事情を抱えた誰かがやってくる。誰かと同じ食卓を囲み、温かなものを食べ、少しずつ言葉を交わしていく。そんなささやかな時間が、人の心を再び開いていくのである。

森の恵みをたっぷりと使った温かなスープのように、疲れた心へじんわり染み込んでくる本作。オリビアとアーサー、そして「スープの森」を訪れる人や動物たちが紡ぐ、静かで、優しい再生の物語である。

文=宇田 勉

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