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「中学受験」入試前夜に併願校を変えたママの判断基準とは【中学受験SAPIXママ対談】

  • 2026.11.1

「成績をつまみに晩酌していた」「仕事用のパソコン横に常に偏差値表を貼っていた」

こう語るのはお子さんをSAPIXに通わせていた人気漫画家・りえ太郎さんと教育ジャーナリストの佐野倫子さん。

中学受験のサポート、いわゆる「伴走」は子どものためのはずだったのに、気づけば親が「独走」してしまうケースが多くある中学受験。

失敗や焦りを乗り越えた元SAPIXママに、入試直前の併願校変更や不合格のときの声かけ、伴走を終えて気づいた親の心の持ちようなどを語り合っていただきました。

佐野倫子(さの・みちこ)

東京生まれ、早稲田大学卒。現在、東京大学大学院情報学環教育部在学中。航空業界・出版社勤務を経て作家・教育ジャーナリストに。おもな著書に『天現寺ウォーズ』、『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』(イカロス出版)。2人の男の子の母。現在中受伴走2周目中。

りえ太郎(りえたろう)

1996年アフタヌーン四季賞秋のコンテストで「ファミレス隊」が受賞。同時に掲載デビュー。鉄道少年に育った息子・さいが、鉄道研究部の盛んな学校に進学したいということから中学受験のサポートをはじめ、伴走のXの投稿が大反響に。主な著書に『元SAPIXママ 中受伴走1095日』(講談社)。

中学受験で親が独走! 偏差値表との正しい向き合い方

──数年にわたる中学受験の伴走で「もう少しこうすればよかった」と思うことはありますか。

りえ太郎さん:思い返せば伴走というより、親が「独走」していたと思う日もありますね。子どもと一緒に走っているつもりが、もはや自分のことのように胸が痛んだり。だから成績にも一喜一憂するし、焦りすぎてしまうことも。当時は一生懸命だっただけなんですけど。

佐野倫子さん(以下、佐野さん):わかります! 私は長男が6年生のとき、仕事が忙しすぎて、PCデスクから動かずにさっと取れるところに偏差値表を置いていました。仕事の合間にも、すぐ併願作戦を考えられるように、と。

りえ太郎さん:私も、リビングのあちこちに偏差値表を置いていましたね。いつでもすぐ見られるように。偏差値表を見て、ああでもないこうでもない、と受験の組み合わせを考え始めると止まらないんですよね~。

佐野さん:今思えば、親が夢中になるほど、子ども本人の本当の様子は見えにくくなる気がします。ちょっと意識して肩の力を抜くくらいがいいですね。

──周りの保護者の様子を見て、焦ることもありますよね。

佐野さん:ありますね。漢字教材を保護者同士で分担して、オリジナルの問題を作っているグループがいましたね。今ならAIで同じようなことが簡単にできると思うんですけれども、それをお母さまたちの愛情と情熱と根気でカバーしているわけで。本当にすごいですよね。

りえ太郎さん:SNSには、学年ごとにSAPIXのテストの点数を集計して、クラスの基準点を予想するサイトを自主的に運営している方もいらして。私もお世話になりました。それで私も少しでもお役にたとうと思って、後半は集計をしていましたね。今思えば、私、相当頑張っていましたね(笑)。

直前の併願校変更…入試前夜の決断に備える準備

──受験本番で、特に大変だったことを教えてください。

りえ太郎さん:入試前夜、急遽、併願校を変更したときですね。出願締め切りギリギリまで、頭の中がフル回転でした。子どもをいちばん近くで見てきたのは私だ、という思いもあって、これは安全策をとったほうがいいと頭のなかで警報が鳴ったんです。

2月1日の夜、誰にも言わずに翌日受験する学校に出願しました。当初の予定よりも安全なほうへ進もうと決めたんです。あの判断は、胃がキリキリしました。

佐野さん:『元SAPIXママ 中受伴走1095日』(講談社)にも、そのシーンを描いていらっしゃいましたよね。読んでぐっときました……。

私も1月校のことですが、締め切り5分前で出願しました。ガバッと布団から起き上がって、「やっぱり出す!」と。本番期間中は、ギリギリの選択もあり得ますよね。

りえ太郎さん:そうなんです。だから、やっぱり幅広く学校を見ておいたほうがいいと思います。今の子どもの偏差値のところだけでなく、もっとお手ごろの学校も。「予定を変えよう」となってから、一から調べるのは大変ですから。

佐野さん:志望校を考えていると、つい上ばかり見てしまうんですけどね、無理しない偏差値で「ここに通うのもいいね」と親子で思える学校を、いくつか探しておくことは本当に大事です。変更するならどこを受けるか、出願や入学手続きはいつまでか。落ち着いている期間に、家族で確認しておきたいですね。

志望校の決め手は偏差値だけではない!

──お子さんは、志望校を決めるにあたって学校のどんなところを見ていましたか。

りえ太郎さん:息子は鉄道が好きなので、鉄道研究部ですね。文化祭に行くと、すごく力の入った展示をしている学校があるんですよ。そういうところをきっかけに興味を抱いていました。

佐野さん:好きな部活があるのは、大きいですよね。「この学校でこれをやりたい」という気持ちは、偏差値表を眺めているだけでは湧かないですから。

うちは将棋が好きだったので、そこは低学年のころのフックになりました。お兄さんと対局して『入学したら将棋部においで』と言われて嬉しそうでしたね。その学校は受験に至りませんでしたが。

──望んでいた結果が出なかったときは、どんな言葉をかけましたか。

佐野さん:長男の第一志望校は不合格だとわかったとき、本人はじっと黙っていて。それを見て、「私は今、なんて声をかければいいんだろう」と。結局、「頑張ったね、頑張ったよ、頑張った」としか言えませんでした。伴走していて、いちばんつらかった場面のひとつです。

りえ太郎さん:つらいですよね。私も、結果が出たころのことは、あまり記憶がありません。

佐野さん:親もショックを受けているので、すぐに気の利いたことが言えないですよね。その子が頑張ってきた事実はあっても、結果は変わらないから。うまい言葉が出なくても、親はそばにいて寄り添うことでいいのかなと思います。

偏差値を肴に晩酌した日々の愛おしさ

──これから受験を迎えるお母さん、お父さんに、伝えたいことは何でしょうか?

りえ太郎さん:一喜一憂していた時間も、今振り返ると味わい深いんですよ。成績がよかったときには、息子の偏差値を眺めながら晩酌していたこともあって。はい、つまみが偏差値です(笑)。そんな日々も、今となっては懐かしい子育ての1ページですね。

佐野さん:それ最高ですね! それだけ嬉しくて、見ているだけで「頑張ったなあ」って元気が出るんですよね。

りえ太郎さん:「いい時間だったな」と、今は思いますね。子どもが大きくなってから、同じ時間を過ごせるわけではないですし。今伴走中の方には、この時間を味わってほしいなと思います。

佐野さん:あと、苦しくなったときは、ひとりで悩み続けないこと。私も先生に相談して、「そういうことだったのか」とわかったことがたくさんありました。親子だけでどうにかしようとせずに、ほかの人にも助けてもらいながら、進んでいってほしいと思います。

──お二人の本も、伴走中に手に取りたくなりますね。

りえ太郎さん:『元SAPIXママ 中受伴走1095日』(講談社)には、わが家の中学受験の3年間を描いています。親が右往左往する日々も、失敗も、そのまま漫画になっていますので。「こんなこと、うちにもある!」と笑いながら読んでいただけたら、嬉しいです。

佐野さん:『中学受験伴走力 親がすべきこと、知るべきこと』では、塾の先生や伴走を終えたご家庭への取材をもとに、塾選びから家庭学習、声のかけ方、受験本番の準備までをまとめています。

私自身、母親として迷ったり失敗したりしてきたので、「あのとき、これを知っていたら!」と思うことを詰め込みました。りえ太郎さんの漫画と一緒に、伴走の合間に手に取っていただけたら嬉しいです。

───◆────◆─── 佐野さん、りえ太郎さん、ありがとうございました。

文/佐野倫子

cocreco『元SAPIXママ 中受伴走1095日』著:りえ太郎(講談社)

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cocreco『中学受験伴走力 親がすべきこと、知るべきこと』(講談社+α新書)著:佐野倫子
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