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「地方での文化芸術活動は、未来への問いかけ」 シャネルが支援する『間人プレイス』で聞いた德田佳世さんの思い

  • 2026.10.30
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PHOTO:CHANEL

2025年に開催された、シャネルのメティエダールを讃える企画展『la Galerie du 19M Tokyo(ラ ギャルリー デュ ディズヌフエム トーキョー)』。シャネルの手仕事の素晴らしき可能性に触れることのできる機会に多くの親子が来場、子どもたちの夢が広がるきっかけとなりました。その展覧会で日仏の様々なジャンルの職人がコラボレーションする『Beyond Our Horizons』のキュレーターのひとりをつとめ、VERYでも安藤桃子さんとともにインタビューにも応えてくれた德田佳世さん。「芸術を通して平和を希求する、私たちにできる活動として大切にしていきたい」と語ってくださった日から約1年。手仕事の未来をつなぐシャネルとの物語の続きとも言える場『間人プレイス』が京丹後の町に誕生しました。11月8日まで『あしたの畑 2026 REFLECTION|秋期公開』にて公開されています。

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プロフィール

德田佳世 とくだ・かよ
ベネッセアートサイト直島キュレーターとして活躍、豊島美術館の開館担当キュレーターなど歴任。2014年にWATER AND ART設立、2016年に非営利団体「TOMORROW」を設立。

京丹後・間人ではじまった、あしたを耕す物語。

「感動すること」を最上位に掲げる徳田さん主宰のNPO法人TOMORROWは、2020年より京丹後の町・間人(たいざ)にて集落プロジェクト『あしたの畑』を創設。地中美術館、豊島美術館の創設に携わるなかで芽生えた、自然や日本の文化に根付いたアートの在り方、地球と人と食とアートの未来についての想いが、間人の地で少しずつ形作られています。「地方で文化芸術活動を行うということは、柔らかな形での未来への問いかけです。過疎が進み地方が衰退すると食料自給率はさらに低下、何かあったときに自国で食べることができなくなれば、アートも生まれません。第一次産業をどう守り、次世代に残していくかが『あしたの畑』の活動の根底にあります」と、德田佳世さん。

2021年に完成した『間人スタジオ』は、この地方に多く見られる焼杉の板に囲われた築100年あまりの2階建て家屋を木工、陶磁器、唐紙、左官職人とともに4年かけて修繕。アートの語らいの場であり、食や工芸のワークショップも開催されます。ファストフード店のない間人の子どもたちの「美味しいハンバーガーが食べたい!」という声に応えて、「ハンバーガーの会」を開催したこともあるそう。京都市内のイタリアン『cenci』の料理人による手作りハンバーグを地元のパン屋のバンズで挟んだハンバーガーは、木桶職人の中川周士が手がけたプレートに盛り付けられ、子どもたちに振る舞われたといいます。

『間人スタジオ』から歩くこと数分の場所にある、丹後ちりめんの織物工場を改修して作られた『SEI TAIZA』。『la Galerie du 19M Tokyo』のエキシビジョン『Beyond Our Horizons』の出展作品である唐紙職人の嘉戸浩、版木彫刻の金沢健幸、屏風や軸装を手がける藤田幸生と、シャネルのメゾンダールである花細工を制作するアトリエ『ルマリエ』による『花衝立』、フルー(軽やかな素材)の仕立てを専門とする『パロマ』と漫画家・五十嵐大介の『佐世保姫、しし踊り、竜田姫』が展示、髙室畳工業所とツイードを専門とする『ルサージュ』によるツイードに縁取られた畳も置かれたアート空間に。間人の歴史を内包した建物に収められたアート作品が見せてくれるのは、六本木の展覧会会場のときに受け取った華やかな感動と違った、穏やかな側面。ギャラリーの小窓から覗く美しい日本海はまるで額縁に入れた絵画のようで、この土地に魅せられる理由がじんわりと伝わるよう。

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PHOTO:CHANEL

初公開となった『間人プレイス』は、TOMORROWの理念に共鳴したシャネルのサポートのもと新たに創設されたのが創造と学びの拠点として誕生。「古い小屋が好き」という木桶職人の中川周士が、長年放置され修繕がむずかしいとも言われた家屋に持ち前のこだわりと熱を注ぎ、新たな生命を宿しました。まず目に入るのが、6000枚ものへぎ板を貼り付けた循環棟。「木の繊維に沿って薄く割っていくため、繊維に傷がつかず水を弾いてくれるんです」と中川さん。建物内に入ると正面の板戸には、この地に伝わる乙姫と天女の伝説をテーマに漫画家・五十嵐大介が新たに描き下ろした絵画が。板戸は『la Galerie du 19M Tokyo』の資材を再利用したもので、陶器の引き手は京焼の十八代 永樂善五郎が手がけるというこだわりの極み。数寄屋建築の『藤森工務店』が手がける網代張りの天井、織物工房『デザイン橡』とプリーツの『アトリエ ロニオン』のコラボレーションによる壁など、この空間に合わせたアレンジで作品や資材が再利用されています。また作品制作において出た木屑はバイオトイレに利用。ゼロ・ウェイストを目指すとのこと。「廃材と思わずに、素材と捉える。そうすれば“これで何を作ろうか”とクリエーションのアイデアが湧いてきます。現場に合わせて姿を変え、つないでいく。そういった営みの実践をしていき、若い世代にバトンを渡していきたい。シャネルさんを通じて、より広く伝わることを期待します」と中川さんは語ります。日常のようにさり気なくありながら、一部たりとも見逃せないアートの贅を尽くしたクリエーションの場。作品作りのために国内外から訪れる職人やアーティストが長期滞在できる『間人レジデンス』も隣接され、ここから生まれる未来の作品たちに注目が集まります。

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『間人プレイス』を目指す道中、バスの窓に流れる景色の中に見つけたオーシャンビューの小学校。過疎化が進み、年々生徒数は減っていると德田さん。「あしたの畑に関わる職人やアーティストやその作品、アートに触れようと訪れてくれた人々と地元の子どもたちが言葉を交わす体験にも希望を持っています。たった一言でワクワクして、将来が変わってしまうことってあると思うんです」。

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あしたの畑 2026 REFLECTION|秋期公開

○会期/2026年10月12日(月・祝)~11月8日(日)
10:00-17:00 最終入場 15:30
○会場/間人:間人スタジオ・SEI TAIZA・間人プレイス、宮:宮のあしたの畑(Field of Stars・宮ティーハウス)
○鑑賞料(日時指定ツアー制)/大人:3,500円、学生:2,500円(学生証を提示)
※別途プライベートツアーもあり
※但し、宮の作品は常時自由鑑賞、無料

取材・文/櫻井裕美

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